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そう言って、小さな紙切れを渡してくる。ものすごく気持ち悪くて、込み上げてくるものがあったが、必死に堪える。


これさえ受け取れば、危害は加えないかもしれない。さっさと受け取って、逃げよう。連絡をしなければいいんだ。



私は、頬をひきつらせながら手を伸ばす。


…が。


――ガシッ!!――


その瞬間、男が強く、手を握り締めてきた。


「ひっ…」


やけに汗ばんだ両手にすっぽり包まれ、思わず声が漏れる。


鼻をつくような体臭が、近づいてくる。


「ぜ、絶対…絶対、連絡してよね…。」


男は、息を荒げながらそう言うと、満足そうに立ち去っていった。


「っ…はぁ…よかった…何も…されなくて…」


ようやく自分の感覚を取り戻した私は、手元に残った紙切れを無惨に破く。


「っ…気持ち悪いんだよっ…男なんか…みんなこんなのばっか…」


チリも残さずに地面にばらまくと、今度はあの男が触れた場所を念入りにハンカチで拭き取る。


ごしごしと、赤くなるまで何度も何度も。やっと感触がなくなった時には、痕がつくくらいだった。


「こんな汚いのがついちゃったから…もういらないや。」


その場でハンカチを投げ捨て、大きく息を吐く。

その途端、身体の力が抜け、地面にへたりこんでしまった。


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