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「あ…れ…なんだ…これ…」
自分でも訳が分からない。動こうと思っても、足に力が入らない。
小刻みに震え出す身体。私は、悟ってしまった。これが…恐怖心なんだと。
私…恐かったんだ。男に愛想を振り撒くのは得意だった。だけどそれは、危険な香りがしない相手だけ。
あんな、危ないやつには、笑いかけてうまくあしらうことすらできない。
世界中の男は、自分の手のひらで簡単に転がせると思っていたのに。
「情けな…」
自嘲気味に呟いたその時…
「あの…大丈夫ですか?」
「っ…」
背後で、聞き慣れた声がした。さっきまで聞いていた、思いっきり知っている声。
振り返ると、やっぱりそこにはあの人が心配そうに私を見下ろしていて。
「…店長。」
「て、あれ!?藤塚さん?だいぶ前に帰ったはずじゃ…」
何でだろう。あれほどうざかった店長の声が、今は安心するなんて。
耳に心地いいと感じるなんて、どうかしてる。
「ていうか、大丈夫!?気分悪くなっちゃったの?」
オロオロしながら、私に手をさしのべようか迷っている様子。どうやら、セクハラを気にしてるみたいだ。
私は、そんな様子を見ていて我に返り、立ち上がってほこりを払う。
「いえ。何でもありません。変なところをお見せしてすいませんでした。」