テラーノベル
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シャツの中にそっと手を差し込み、その熱を確かめるように肌を撫でる。滑らかで、それでいて男らしい程よい筋肉の感触。指先から伝わる体温が、俺の理性をじりじりと削っていく。身体のあちこちに唇を落とすたび、りゅうせいの喉から漏れる掠れた吐息が、狭い物置部屋に甘く響いた。
「……二人、起きちゃうといけないから。今日はここまでにしよっか」
「……ん」
名残惜しそうに唇を重ねられ、またキスが深くなる。これじゃいつまで経っても離れられそうにない。
「……りゅうせい、マジで俺、襲っちゃうよ?」
ふふ、と笑って、火照ったあいつの頬を親指でそっとなぞる。ほんとに愛おしくて、もうどうしていいかわからない。
「……したくなっちゃった。二人、起きてもいいから……しちゃダメ?」
「……流石にそれはヤバいだろ。可愛いけど、本当にダメ。……ね?」
「……はぁい」
「ふふ、いい子」
そう言って宥めたものの、俺の頭の片隅にはずっと引っかかっていることがあった。これは絶対に、うやむやにしちゃいけない話だ。
「……りゅうせい。あのさ。今度、一緒に彼女に謝りに行こっか」
「え? ……彼女に?」
「うん。……素面の時にちゃんと気持ちを伝えてからにするべきだったのに。酔った勢いで告白して、ダメだって分かってるのにキスまでして……。本当に、彼女に申し訳ないと思ってるんだ」
「……でも、俺のこと好きだから、抑えきれなかったんでしょ?」
「うん、全然ダメだった。……俺、本当になにやってんだろ」
「……じゃあ俺も、悪い子だよ。いつきくんのこと、拒否しなかったもん」
「……ごめんな。逃げ場、なかったよな」
「……本当に嫌なら、逃げられたよ?それに、わけわかんないのが『恋』だから」
「……んっ」
少しだけ悪戯っぽく笑ったりゅうせいの唇に、また軽く触れる。懲りないな、俺も。ここで引いておけば、泥沼の修羅場から少しは逃げられるかもしれないのに。
「……可愛い。いつきくん」
突然、ぎゅうっと力強くりゅうせいに抱きしめられた。……こんな情けない男の、一体どこが可愛いんだよ。
「……俺のこと、大好きになってんじゃん」
「……こんな可愛いやつに言い寄られて、落ちないやつがどこにいんだよ」
「わぁお。本当に、めっちゃ好きじゃん……」
興奮したりゅうせいに逆襲されそうになったが、そこはなんとか押し止めた。下手したら会社での信用どころか、隣の部屋で寝ている大事な友人二人まで失うことになる。俺、本当に友達少ないんだから。
「おやすみ」と挨拶を交わし、狭いソファで体を丸めながら、ふと冷静になった。
……待てよ。俺たちって、これから付き合うのか?
そんな話、一言も出ていない。りゅうせいは「したい」とは言ったけれど、俺と付き合いたいとは言っていない。
おまけに、俺のことは「可愛い」とは言ったが「好きだ」とは明言していないし、ましてや彼女と別れるとも言っていない。俺が勝手に「謝りに行く」と言っただけで、あいつは「わかった」とも答えていない。
え……俺、もしかしてこのまま「浮気相手」として進行していく感じなのか?
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