高三の夏、進路希望調査表に“警察官”と書いた。
親も先生も反対しなかった。
仁も警察官と書いたらしい。親からは『お前は無理だ』と言われたらしいがぜってえなるとか言ってる。
卒業後、警察学校に入学。その後、首席で卒業したのはここだけの話。
仁も警察官になった。
それから数年。
僕らは22歳になった。
彩月と樹月はいない。2人を探すため、僕らは警察官になった。でもなんの情報もない。
そんな時、警察庁に呼ばれた。
「今日は2人共よくきてくれた。有難う。」
聖も警察庁に呼ばれていたらしく、入り口でバッタリ遭遇。
雑談しながら指定された会議室まで来たのだが…
「な、なぜ警視総監がここに…?」
「10年前の中学生2人行方不明事件、覚えているね。君らは当事者だったはずだ。」
「何か、進展あったんですか?」
聖が目を輝かせている。俺も期待した。
「いや、そうじゃなくて、その捜査本部に君らも参加してほしいんだ。」
「…何故ですか。」
「仁?」
もう止まらなかった。何かが自分の中で溢れた。
「なんで、あん時の傷を抉んなきゃなんねぇんだ…?俺は当事者とも言えない、守れなかったただの腑抜けだ。入れるなら聖だけだ。俺は降りる。」
「仁は悪くない…」
そうじゃない、そうじゃないんだよ。聖。君は知らないだろうが、君は君が思う以上に大切にされているんだ。それに対するただの嫉妬なんだよ。ごめん、やっぱり俺は善人にはなれないんだ‥
「君は優しいんだね、仁刑事。」
「なんでそんなこと言うんですか。」
「優しいから突き放して守ろうとする、究極の善人じゃないか。君は君が思う以上に強く、優しい。誇りなさい。捜査本部にはそう言う人材が必要だ。」
「僕は知ってるよ。仁が血反吐を吐く様な努力をしていたこと。そして、とても苦しんだこと、今も苦しんでいること。だから、一緒に苦しみを無くそう。」
「入ってくれないか?」
なんでみんな優しいの?俺は…
「捜査本部、入ります。聖と一緒に。」
「…!仁!やった〜!」
「うぉ!」
飛びついてきた。ほんとこいつ変わってないな、なに一つ。
神隠し捜査本部。
これが正式名称らしい。
「君らが新しい捜査官か…って、え?あん時の少年か?」
「…?どっかでお会いしましたっけ?」
全く覚えがない。なんか怖いな、この人の目。
「おお〜!久しいな、聖、仁。」
「いや、誰?」
30代後半に見えるけど、こんな人たち、あった覚え…
「…あー!あの怖いニーさん達!中学の時呼び出されて聴取してた人だ!」
待って、そんなの覚えていないだろうが。なんで仁覚えてんの?
「正解!でも怖いは心外だなぁ。」
「うちの仁が失礼しました。」
「お前の子になった覚えは無えよ」
『漫才か」
疲れるな。
「まあいいや。まず自己紹介。僕は木戸紗里奈。捜査本部長やってるよ。まあ今から君らの上司だ。よろしくな。」
「私は水野有希。副本部長だ。」
「怖いのはこっち。後僕はお姉さんだからね。」
なんか、逐一圧が強いな、この人たちは。
「他にも捜査員はいるけど、今出払ってんだ。ごめんね。」
「全然、お気になさらず。」
「じゃあ設備の説明な。」
簡単にまとめると
ここは公安と同じくらい機密性が高いから、口外しないこと。
出来るだけ彩月と樹月の情報を集めること。
そして、“殺し屋に気をつけること”。
そう言われた。
「なんで殺し屋?」
「先月、捜査員の不審な死が5件あった。その殺し方には共通性があった。だからかな。」
「待って、5人も亡くなってるんですか?」
「ああ。悲しいことにな。」
まじかよ。
「その共通性ってなに?」
気になって俺は聞いた。
「実は、顔に九尾みたいな模様を入れられてるんだ。」
「だから私達は“九尾殺人”と呼んでいる。」
九尾…
そういえば、彩月と樹月って神社の神職だったよな。
お稲荷様の声を聞く“使いのもの”。まあいわゆる神楽の舞手だった。
…関係ないか。
「仁?どったの?」
「なあ、彩月と樹月って神楽の舞手だったよな。」
「…確か。それがどうした?」
「いや、なんでも…」
ほんとに関係ない…よな…
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