捜査員として捜査本部に入ってから、実家の方に聞き込みに行くことが多くなった。
実家に久しぶりに帰ると、仁の親もいた。
「おかえり。ご飯できてるけど食べる?」
「うん。仁は?」
「食べてっていいか?」
「いーよー。仁くんも大きくなったねえ。」
「ダメだよ。うちのこいつは。いつまで経ってもヤンチャでさあ」
なんか親が色々言ってて正直うるさい。
いつ話を切り出すか…
夕方。
やっと聞き取り聴取することができた。
「だーかーらー、十年前!あの日になんか不審な音は聞かなかったのかって聞いてんの?」
「もう歳だからね。記憶力なくて。」
仁が声を荒げて聞いている。
そりゃそうだよ。
十年も前だ。
「母さんもなんか覚えてない?ほんとに小さいことでもなんでもいいの。」
「うーん。思い出してるんだけどね。」
ダメだ、埒があかない。
「まあ、思い出したら言ってね。」
はぁ、やっぱ親って呑気だな。
「そういえば、今日は“九尾祭”ね。」
「そうなの?」
九尾祭。
この日には一年の安全を祈願し、舞手が神楽を舞う。
彩月と樹月も綺麗だったなぁ。
「今って誰が神楽を舞うの?」
「今は誰も舞ってない。彩月ちゃんと樹月くんをみんな待ってんのよ。一体どこ行っちゃったんかねぇ。」
「第五機動、戻りました。」
「お疲れ様。はじめまして。本条拓也です。第三機動所属。よろしくな。後輩。」
「同じく第三機動所属の成田夕日です。」
「よろしくお願いします。」
「…うっす。」
聞いた話だと、他は殺された。
今あるのは
本部長ら第一機動
本条先輩ら第三機動
そして俺ら第五機動の六人しかいない。
すっくな。
「聖、仁、おかえり。なんか収穫あったか?」
「なんかあった様に見えます?」
「見えないな。」
なあ、彩月と樹月。
お前ら今どこにいるの?
みんな待ってる。九尾様も待ってるんだ。神様待たせんなよ。
なあ答えてよ…
拝啓、聖様、仁様。
元気してっか?今何してる?
二人は普通に過ごしていたらいいな。
私達は今俗に言う地獄にいます。
何故かは言えない。
居場所も言えない。
ごめんね。
でも、生きています。
図太く、現世にしがみついています。
俺達は大丈夫。
だから、そっちも頑張れよ。
死ぬな。生きろ。生きてる奴が勝ちだ。
ずっと帰れんくてごめん。
会えなくてごめん。
そして、さようなら。
二人とも、大好きだよ。
忘れたことなんてない。
ありがとう。
彩月、樹月より。
次の日、出勤すると、先輩らが襲われたと聞いた。
そして上記の手紙を先輩から渡された。
「なんで…」
「二人の名前が…」
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