グループができて1年も経たないうちだったと思う。
どしゃぶりの夕暮れ。
あいつはずぶ濡れのまま、公園の東屋の中に座っていた。
「jp…ここにおったんやな」
「…」
「帰ろ、jp。みんな待っとるで」
「…帰れないよ」
「俺のせいなんだ。krptが伸びないのも、叩かれるのも」
「…少しずつでも再生数伸びとるやん。登録者数ももうすぐ大台や。そりゃ有名になればなるほど叩くやつはおる。しゃーないことや」
「でも俺がいなければもっと成長できる。ttもみんなも、嫌な声を聞かずに済む。心から笑える…」
「…たらればの話してもわからんやん。でも俺は、お前がおらんなら楽しくないで?」
「…」
「俺はお前だから信じて着いてきたんやぞ。言うたやん。お前とおれば怖いもんないって。お前のその繊細で優しいところ、好きやで。でもやっぱり心配や。だから辛いことも俺とお前で半分こしよう。俺は前向きやから、一緒におればちょうどええやろ?」
「だから、な、俺と帰ろ。jp」
手を差し出すと、jpは少し笑って握り返した。
雨はいつの間にか優しく降り落ちていた。
小さな黄色の傘ひとつ、並んで歩く帰り道。
jpの傘も持ってきてたけど、敢えてそうした。
「…tt長靴持ってたんだ」
「ぉう、かっけーやろ?」
「お前雨男やからな。お前とおるなら必需品やと思ってこの前買った」
「なんか申し訳ないなあ笑」
「ほんまやで。せっかく買ったんだ。もっともっと有名になって日本中まわろうぜ」
「日本中かぁ、、夢だなあ、、」
「…なあjp。逃げ出したいことがあれば逃げてもええからな。大丈夫、俺がすぐ見つけてやるから」ニッ
「…うん、ありがとう、tt…」
ポツ、、、、、ポツ、、、、、、、、
「「…ぁ、虹」」
二人同時に声を出した。
俺とお前は、目を合わせて笑った。
俺の手を引いてくれたお前を、俺は絶対においていかない。
ひとりにしない。
俺が小指を出すと、jpがゆっくりと小指を絡めた。
そして半年前。
あの時は本当に怖かったし本気で死にたかった。
信頼し共に歩んできたjpに、あんな事をされるなんて。
裏切られたようで悲しかった。
でもぼやけた視界の中で見ていたjpも、とても悲しそうな顔をしていた。
俺を見るその目の奥には、何もかも失くしてしまったような、どしゃぶりの雨が降っていた。
jp、ごめんな。
約束したのにな。
ひとりにしないって。
だから今度こそ絶対約束や。
ずっとずっと、一緒にいよう。
ttが短い眠りから目を覚ますと頭痛は消えていた。
外は夕空が見え始めている。
テーブルには乾いた洋服が丁寧に畳まれていた。
ベッドメイクと着替えを済ませ、noのいる部屋のドアを叩く。
「noさん」
「ttさん!体調はどうですか?」
「だいぶ良くなったわ…世話になったな」
「いえいえ、良かったです。お茶でもどうですか?」
「ありがとう…」
noは温かいハーブティーを淹れ、ttの前に差し出した。
一口飲めば、こわばった体の力が抜けていく感覚がする。
「ぅま、、」
「僕が育てたハーブです」ニコ
ホッと息を吐くttを見つめるnoは、口を開いた。
「ttさん、この半年の間に何があったんですか?」
「ぇ、、」
「話せる範囲でいいんです。あなたの力になりたい」
「…別に、何もないんやって。体調不良で休養して、そのままや。回復した頃にはkrptはなくなっとった」
「じゃあその首の傷は?」
「!」
ttは思わず手を首に当てた。
やはりnoは気づいていた。
ttの首には、首輪の摩擦で出血と治癒を繰り返した跡が瘢痕となり、未だに残っていたのだ。
「…外して、とttさんは言っていました。…ttさん、jpさんに何をされたんですか?」
「…」
耳鳴りと動悸がする。
嫌な記憶が蘇る。
ごくりと唾を飲み込みながらニットのタートルネックを引き上げると笑ってみせた。
「なんもあらへんて!俺らがそんな闇深そうに見えるか?笑」
「心配してくれてありがとな、noさん。看病もお世話になりました。jpも心配しとるだろし帰るわ」
「…わかりました」
「ではまた二人で会えませんか?ttさんが元気なら安心しますので」ニコ
「…ん」
コメント
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今作も何回も読んでしまいました… 恐れながら本当に許可もなく勝手にではありますが、金星さんの名場面がわたしのイラストで動き出しております(もちろん脳内完結です) ご気分を悪くされたらすみません😭 とても良い刺激をもらってます(脳内完結です!!2回目) ありがとうございます🤍
自然とゆびきり☔️が流れてきました🥲 回想のjptt二人、お互い支え合って同じスピードで隣に歩いていたのに、はずなのに、、、😭 涙腺が弱くなっててすみません すべてを知ってるかのような演技派noさんの話し方もすごくすごく好きです!!