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#エリオット
あおあお
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#エリオット
あおあお
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夕食の後片付けが終わり、FORSAKENの暗黒厨房は、静寂を取り戻していた。
月が青白く窓から差し込み、黒曜石の調理台を淡く照らしている。
ジョンドゥは「明日の仕込みをもっと美味しくしたいんだ」と笑顔で倉庫へ向かい、珍しく厨房には1eggsだけが残されていた。
「…………」
1eggsは無言で、自慢の金色のフライパンを柔らかな布で丁寧に磨いていく。
何百回、何千回と繰り返した動作。
それでも一切手を抜かない。
黄金の表面へ月光が映り込む。
その輝きを見つめた瞬間――
金色の瞳が静かに細められた。
遥か昔。
まだ1eggsが料理人でも何でもなく、魔界の片隅で飢えに震えるだけの、小さな骨の魔物だった頃。
毎日、ゴミ捨て場を漁り、
残飯を舐めて眠るしかなかった。
「…………」
腹は減る。
だが、美味しいという感覚を知らない。
食事とは、生き延びるための燃料。
それだけだった。
そんなある日。
重い革靴の音が近づいてくる。
「よう。」
振り向いた先にいたのは、人間の男。
煤で汚れたコックコート。
腕には数え切れないほどの火傷跡。
無造作に腕を組みながらも、その眼差しだけは真っ直ぐだった。
伝説の料理人――シェドレツキー。
究極の食材を求め、単身で魔界へ降り立った変わり者だった。
「お前、美味い料理って食ったことあるか?」
1eggsは怯えながら首を横へ振る。
シェドレツキーは笑った。
「そうか。」
「なら、今日は運がいい。」
男は近くの瓦礫を積み上げ、即席のコンロを作る。
薪に火をつけ、
人間界から持ち込んだ香辛料、
魔界の果実、
怪鳥の肉を並べる。
そして。
腰から一本の黄金のフライパンを取り出した。
ジュワァァァァァァッ!!
肉が焼ける。
香りが弾ける。
炎が踊る。
シェドレツキーの手は一切迷わない。
返す。
焼く。
休ませる。
また焼く。
すべてが完璧だった。
1eggsは息をすることすら忘れていた。
火加減。
香り。
音。
湯気。
そのすべてが芸術だった。
「ほら。」
差し出された一切れの肉。
恐る恐る口へ運ぶ。
――その瞬間だった。
「…………!!」
世界が変わった。
肉汁。
香辛料。
果実の甘み。
熱。
香り。
すべてが骨の奥まで突き刺さる。
ただ腹を満たすだけじゃない。
料理人の想い。
火への執念。
素材への敬意。
その全部が、一皿へ込められている。
「これが……料理……」
声が震える。
胸が熱い。
初めて、生きていると感じた。
シェドレツキーは静かに笑う。
「いい顔になった。」
「シェフ……」
1eggsは立ち上がった。
震える黒い手を握り締める。
「俺も……」
「俺も、誰かの心を震わせる料理を作りたい。」
「誰かを笑顔にする料理を。」
「魂まで焼き上げる一皿を。」
しばらく黙っていたシェドレツキーは、
やがて静かに黄金のフライパンを差し出した。
「持っていけ。」
「え……?」
「こいつは俺の相棒だった。」
「熱を均一に伝える最高のフライパンだ。」
「もう俺には新しい相棒がいる。」
「だから次は、お前が使え。」
1eggsは震えながら受け取る。
ずしり、と重かった。
料理人としての覚悟そのもののようだった。
シェドレツキーは真剣な表情で言う。
「忘れるな。」
「料理は一ミリの妥協で死ぬ。」
「火。」
「時間。」
「素材。」
「全部が噛み合って初めて奇跡になる。」
「妥協した料理は料理じゃない。」
「ただの失敗作だ。」
「自分のこだわりだけは、死んでも曲げるな。」
1eggsは強く頷いた。
「はい……!」
「俺、死んでも一ミリも妥協しません!!」
その日。
黄金のフライパンと共に、
料理人・1eggsは生まれた。
「…………」
回想が終わる。
静かな厨房。
1eggsはフライパンを見つめ、小さく息を吐いた。
「シェフ……」
「俺、ちゃんとやってるぜ。」
「まだまだだけどよ。」
「少しは近づけてるか?」
黄金の表面には、
今の1eggsの姿が映っていた。
そこへ――
バァン!!
勢いよく厨房の扉が開く。
「1eggsーー!!」
聞き慣れた声。
満面の笑顔。
首の赤いスカーフ。
巨大な樽を両腕いっぱいに抱えたジョンドゥが飛び込んできた。
「待たせちゃった!」
「倉庫の奥でね!」
「最高級イースト菌を見つけたんだ!」
「これで明日のパンは百倍ふわふわ!」
「それと!」
「僕の気持ちも百倍!」
「……いや千倍かな!」
「毎日1eggsの隣にいられると思うと、発酵が止まらなくて!」
ブォォォォン♪
右腕の大型ミキサーまで嬉しそうに回り始める。
1eggsのこめかみに青筋が浮かんだ。
「……おい。」
「うん?」
「その樽。」
「え?」
「なんでハート柄なんだ。」
ジョンドゥは照れくさそうに笑った。
「えへへ。」
「見てるだけで幸せになれるかなって。」
「俺たち用。」
「俺たちじゃねぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
ブンッ!!
金色のフライパンが勢いよく振り下ろされる。
ジョンドゥは笑顔のままヒョイと避けた。
「危ない危ない。」
「でもね。」
「1eggsのフライパンで叩かれると、なんだか僕、もっと美味しく発酵できる気がするんだ。」
「気のせいだ!」
「えへへ。」
「僕、1eggs専用だから。」
「誰が専用だ!!」
「毎日一緒に料理しようね。」
「話を聞けぇぇぇ!!」
厨房中へ響き渡る怒号。
ブォン、ブォンと陽気に回るミキサー。
そして。
月明かりに照らされた黄金のフライパンは、まるで遠い昔の師弟の誓いを静かに見守るように、美しく輝き続けていた。
シェドレツキーから受け継いだ「一ミリの妥協も許さない」という熱。
そして今、毎日のように振り回される、笑顔のパン生地の怪物。
二つの熱量に挟まれながらも、1eggsの料理人としての炎は消えることなく燃え続ける。
FORSAKENの暗黒厨房では今夜もまた、黄金のフライパンが高らかな金属音を響かせ、新たな一皿への挑戦が始まるのだった。
コメント
2件
シェドから受け継いだのかぁ...こっちの1eggはシェドを師匠として崇拝してそう‼️