ーいるま sideー
らんは直ぐに一人で溜め込む。
それはずっと一緒に過ごしてきた俺はよく知っていた。
嘘をつくときに一瞬視線が外れること
無理に笑うときに眉がほんの少しだけ下がること
図星のときに左腕を軽く擦ること
どこまでかは知らないが、きっとなつも少しは気付いている。だかららんが『大丈夫』だと『何でもない』と言えばなつはそれ以上何かを言うことはなかった。
…昔かららんはよく助けてくれた。
兄弟喧嘩をしたとき、友達関係でうまく行かなかったとき、進路で悩んだとき、親に反抗してしまったとき
俺はいつも気付けばらんに連絡していた。
らんは一度もいやな顔せずに、俺のそばに駆け寄って解決するまで一緒に居て寄り添ってくれる。
情けない姿も、今思えば恥ずかしい反抗的な言葉も
らんは全てを受け止めてくれた。
だから俺もらんの力になれるのであればなりたいと思うのは当然で
苦しそうに笑う姿を心苦しくなるもの当然で
何も話してくれない彼に、怒りと悲しみを覚えるのも当然なんだと思う。
でもそれは彼なりの優しさなんだって気付いているから、、無理に首を突っ込む気は毛頭なかった。
それでも本当にしんどい時に助けられるように、間違った道を歩まないように、自分自身を犠牲にしないように…。俺は全てを隠そうとする彼の隣に居たいと思うんだ。
俺はらんを直接助けることはできないかもしれない。
無理に作った笑顔も、辛く歪む瞳も服に隠れた痣も、俺には触れられない。
それでも俺の言葉で笑ってくれるなら
場所を求めているなら
時間がほしいなら
俺はらんが欲しているものを提供してあげたい。そしていつかは、頼ってくれれば…なんて思ってみたりして。
「取り敢えず朝食出来てるからそれ食って、母親んとこ行くか?」
俺となつを見てくすくすと笑うらんにそう問えば、らんは自然な本当の笑顔のまま頷いた。
コメント
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💜くんsideでした ❤💜兄弟の喧嘩は『俺らのあの日』の方に書いてますので気になる方は是非!✨