目の前に並べられた3人分の食器。
お皿には黄金色に焼けたトースト、マグカップには白い湯気が立つほど温かく優しそうな色をしているカフェオレがあった。
なつはそれらを美味しそうに頬張り、いるまはそんななつを見て眉を下げながら、なつの頬についた食べかすをティッシュで拭った。
俺はというとさっきからトーストを口元まで運んでは離すという事を繰り返していた。
パンが喉を通らない。
どんなに取り繕ったって体は正直だ。
いつもなら美味しく感じる香ばしい匂いも、マーガリンがパンに染みた味も全てが今の自分にとって邪魔でしかなくて、口に含む度に嘔吐感が襲ってくる。
でも…食べなきゃ………
心配掛けたくないっていう思いがあるのは勿論だけど、それよりもいるまが折角作ってくれた朝食を残す事が嫌だった。
彼の優しさに応えてあげられない自分がどうしようも無く嫌だった。
「らん、無理して食べなくていいから」
『っ、無理なんて…!』
途端直ぐに我に反る。俺は何声を荒げているのだろうか。何をそんなに必死なのだろうか、、
いつもの俺ならもっと上手く誤魔化せるはずなのに。いつもの俺なら二人にこんな顔させないのに。
下唇をギリッと噛み締める。
「ごめん」も「美味しい」も「ありがとう」も言えないまま、未だ二口程度しか食べれていないトーストを見つめた。
「ほら」
『…え』
自分への嫌悪感から溢れる涙が零れないようにじっと耐えていれば、突然視界に何かを持ついるまの手がうつる。
いるまが持っていたのはヨーグルトで「これなら食えるだろ」って優しく口を緩ませた。
『これ、俺が…好きなやつ……』
「昨日迎え行く前に買っといた。ご飯食べれなそうな時に使えると思って」
『ごめん、わざわざ、、』
「ごめんはいらん」
『あり…がとう…』
「どういたしまして」
手渡されたヨーグルトを口に運べば、甘い懐かしい味が口に広がる。ヨーグルトだからってすんなり喉を通るわけじゃなかった。でも口に運ぶ手は止まることを知らなくて、次々とヨーグルトを口に含んでいく。
『おいしい……』
かつて三人で横に並んで一緒に食べた事を思い出した。
コメント
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時差コメ失礼します🙇♀️ この物語大好き過ぎます…🤦♀️💓 続き待ってます…!!!