テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
プロローグ
皆さんこんにちは!僕の名前はアキトって言うんだよろしくね。みんなからは「アキちゃん」って呼ばれてるんだ。
僕は今**「翠緑のゆりかご」**っていう場所にいるんだ。ここは言わば児童養護施設ってところなんだよね。僕はここに来てから一年は経ったかな…。
ここの施設の誰もいない窓がいっぱいある室内、1番大きい窓辺の特等席が僕のお気に入りの場所なんだ。そこからだと、外で遊ぶみんなの姿がよく見えるから。僕はいつも、手に持っているスケッチブックを広げて、みんなの**「光」**を描いてるんだよね。
僕の目にはね、みんなには見えないものが見えるんだ。本でしか知らないんだけど、なんか感情の形?みたいなのが、僕には色と光として見えるんだ。嬉しい気持ちはキラキラした黄色の光で、優しい気持ちはクリーム色の光。
でもね、この力は僕にとって、「見たくなくても見えちゃう」ちょっと厄介なものなんだ。だって、言葉と色が違うことなんて、よくあるから。表では笑っていても、心の奥で濁った色の感情が渦巻いているのを見ちゃうと、なんだか心がすごく疲れちゃうんだ……。
あ、でもね! 変なことに、僕の目を通して見える世界は、他の誰よりも鮮やかで、生き生きしている気がするんだ。まるで光と色の天国!みたいに。この「本当の世界の色」を、僕は見つめることをやめられないんだ。
あっと、もうすぐ日が暮れちゃう。
いつものように穏やかな一日が、終わろうとしていた。
僕はそう思ってたんだ。
でも、その夜のことだった。
喉が渇いて、食堂へ向かっているとき、 いつも通る食堂に続く通路の、外れにある特別教室の前。そこだけは、いつも空気が重くて、僕、昔からこの通路が嫌いなんだ。
その時、僕の視界に、今まで一度も見たことのないものが現れた。黒く、深い霧みたいなもの。あの、特別教室のドアの隙間から、それがゆっくりと、でも確かに存在感を持って流れ出してくるのが見えたんだ。僕がこれまで見てきたどんな感情の光とも全然違う、凍えるような、重い感じ。でも、どこかで見たような、見覚えがあったんだけど、それが何なのかどうしても思い出せなかった。
やっぱり僕、この通路は嫌いだ。
僕は、その場所から逃げるように、足早に食堂へと走った。
この異質な霧が、僕の、そして世界の運命を大きく変えることになるなんて…
この時の僕は、知る由もなかったんだ-