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学校に着くと、美優がすぐに声をかけてきた。
「ねえ咲、この前のお兄ちゃんの友達、また家に来てたんでしょ?」
「……うん、まあ」
ごまかすように笑うと、美優は興味津々といった顔で身を乗り出した。
「就活してるんだよね? 大学四年ってことはさ。もう社会人目前じゃん!」
「そう、みたい」
“社会人”。
その言葉に、咲の心臓が小さく跳ねる。
同じテーブルで食事をして、同じ部屋で笑い合っていたのに――。
自分とはまるで違う場所に立っているんだ、と改めて思い知らされる。
「やっぱ年上っていいなぁ。頼りになりそうだし!」
美優の無邪気な言葉に、咲は小さくうなずくだけだった。
胸の奥では、どうしても言葉にできない思いが膨らんでいく。