テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
放課後。
部活も終わり、鞄を肩にかけて校門を出ると、見慣れた背中が視界に入った。
「……悠真さん?」
振り向いた悠真が、少し驚いたように目を細める。
「お、妹ちゃん。奇遇だな」
駅へ続く道。手には就活用らしい黒いファイルが握られている。
高校の制服姿の自分とは、あまりに対照的だった。
「大学、こっちの方なんですか?」
「いや、今日は面接でさ。たまたま近くだったから」
いつもの軽い口調なのに、背筋の伸びたスーツ姿が、余計に遠い存在に見えてしまう。
並んで歩くわけでもなく、数歩だけ言葉を交わしただけ。
けれどその一瞬が、咲にとっては長い余韻を残した。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!