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「たっくんってさ、いっつもリュウキの隣におるよな」
他のアーティストのライブにゲストで参加した後、楽屋で集合写真を確認しながらセイトが呟いた。
「そうかな」
「そうやろ(笑)最近どの写真みてもずっと隣やん」
「え、それさ、俺も思っとったんよ」
当の本人のリュウキが、会話に参加してくる。
「なんでいつも隣来るん?」
「なんでって、別になんとなくだよ」
「あ、そうなん?」
なんの悪気もなく、軽く聞いて、軽く受け流すリュウキ。
「あ、たっくんから隣行ってんねや(笑)」
「リュウキが来る時もあるよ」
「え?そうやっけ?」
「お前なんも覚えてないじゃん」
少し呆れた口調でそう返した。
「ごめん、その場のノリ?雰囲気?で決めてるからさ」
「そのわりにずっとたっくんの隣やな(笑)」
「え、なんかそんなん言われるん嫌やけん次はやめよっかな」
「なんでだよ」
「あ、怒った(笑)寂しいと?」
ニヤッと笑いながら、俺を見て煽ってくるリュウキ。
「……全然?」
「間、空いてたでたっくん(笑)」
「あ、寂しいんや!(笑)次試そ〜っと!(笑)」
「可愛いなたっくん(笑)」
そう嬉しそうに笑って、2人で俺をいじった。
少し考えてしまったことを、密かに後悔する。
「なんかまたイチャついてるやん、やめてや〜?もう〜」
うんざりしたような声でナオちゃんがそう言いながら、セイトの隣に来た。
「イチャついてねぇわ!なんやねんナオくん入ってくんなよ」
「はぁ〜?!あんたまたそんな口の利き方…っ、マミーに言うで?ほんま」
「おいマミーを出すなよ」
「もうほんまマミーには弱いねんから(笑)かわいいなぁ?よしよし♡」
「いらんって!」
「も〜素直やないなぁ。ナオだって別にあんたに用があるんとちゃうんよ。セイちゃん、あっちの楽屋遊びに行かへん?」
「ん?ええで、」
ナオちゃんがセイトを連れて、楽屋を出て行く。
「…ねー、たっくん。」
「ん?」
「もし俺がおらんやったらさ、誰の隣行くん?」
「え?」
俺の答えを待つように、じっと顔を見てくるリュウキ。
リュウキの大きい目に、吸い込まれそうになる。
「…その場の、ノリでしょ、そんなの。」
さっき、リュウキに言われた言葉をそのまま返してやった。
「……ふぅん、」
自分で言ってきたくせに、ふぅんって。
食らってんのかな。もしかして。
「……リュウキは?」
「ん?」
「リュウキは、どうなの。俺がいなかったら誰に行くの」
「え、」
「その場のノリ?雰囲気?」
先手を打つように、先に言ってのけた。
「ううん。ラン兄」
「は、?」
「え、なに?」
「……別に、」
即答で、ランと答えたリュウキに拍子抜けする。
何かを期待したわけでもないけど、少しイラッとした。
「やっぱり九州組やろ」
「……あっそ。」
「はっ、?なんなん?」
「田舎は田舎で仲良くしてろよ」
「はぁ?うざっ!!じゃあたっくんはトムのとこ行けよ」
「そうする。」
「えっ…、」
「着替えてくる」
少し喧嘩っぽくなってしまい、気まずくなって席を立った。
***
(RYUKI視点)
「着替えてくる」
怒った声でそう言って、たっくんは楽屋を出て行った。
は?なんで怒るん。
意味わからん。
そうイライラしつつも、内心怒らせてしまった事に焦っていた。
どうしよう、と思っていると、着替えから戻ってきたカイリュウが目に入って、名前を呼んだ。
「カイリュウ」
「ん?なんよ」
「ちょい相談。」
「ん、?」
腕を引っ張って、隣に座らせた。
「なぁやばいたっくん怒らせた」
「は?何してんねん…なんで?」
「わからん」
「わからんってなんやねん、解決出来るもんも出来へんやんけ」
「いや、なんか…最近俺とたっくんが集合写真撮る時よく隣におるよねって話してて。もしたっくんがおらんやったら誰の隣行くん?って聞かれて、ラン兄って言ったらなんか怒ってどっかいった」
「理由分かっとるやん。はよ謝り行けや」
「え、でも俺怒られるような事言ってなくない?」
「お前がどうとかちゃうねん、たっくんがどう感じたかやろ?たっくんが嫌と思ったんなら、それはお前が悪いねん」
「…そうなん、?」
「…まぁ正直俺もようわからんけどな」
「わからんのかよ(笑)」
「まぁなぁ〜…たっくんは、リュウキ愛強いとこあるからな。寂しかったんとちゃう?そんなん、かわええな〜で終わらせとったらええねん。お前も、ハッキリ言うからあかんねん。そこは反省せぇよ」
「ん〜…わかった、ありがと」
「そうやって素直でええやつやねんから、意地張らんと謝ってきや?」
ポンポンと俺の背中を叩いて、さ〜帰るか〜とか言いながら去っていった。
大人やな、カイリュウって。
カイリュウの言葉が刺さって、たっくんを探しに楽屋を出た。
……着替えてくるって、言ってたよな。
更衣室に入ると、丁度着替え終えたたっくんの後ろ姿が目に入った。
「…たっくん、」
声を掛けると、振り向いた。
「なに、」
「さっき、なんか、ごめん、」
「…いや、俺もごめん。」
「……もう怒ってないん?」
「怒ってないよ。…ありがとね、わざわざ言いに来てくれて」
……なんだ、こんなことなら、もっと早く謝っとけばよかった。
「ううん。なんで怒ったと?」
「え?」
「え、」
やば。これって聞いちゃダメなやつ?
俺またやらかしたかも…
「ごめん!なんでもな…
「わかんない。何でだろうね。」
「っ…? ラン兄って、言ったから?」
“寂しかったんとちゃう?”
“かわええな〜で終わらせとったらええねん”
カイリュウの言葉が、頭に浮かんだ。
「寂しかったと?かわいいやん、たっくん。」
「っ……ぶふっ、(笑)」
「なんで笑うん?」
「いやっ…棒読みすぎだろ(笑)」
「えっ、?あっ…」
カイリュウの言葉をそっくりそのまま言ってしまったせいか、慣れない言葉で棒読みになってしまった。
「ふふっ…(笑)…うん、…まぁ、そうかもね。」
「ん?」
「寂しかったかな。ちょっとね?」
「えっ…、」
「大人げなくて、ごめんね」
笑いながら、俺の頭を撫でて、更衣室を出て行った。
「っ…、大人げなくは、ないやろ、」
誰もいなくなった更衣室で、独り言を漏らした。
***
(TAKUTO視点)
更衣室から出て楽屋のドアを開けると、丁度出ようとしていたランとぶつかりそうになる。
「っおー…びっくりした。ごめんたっくん」
「いや、俺もごめん。帰るの?」
「うん。あ、タクシー呼んどるけど、一緒帰る?」
「え、まじ?うん。ちょっと荷物取ってくるわ」
「うん、わかった」
ランの誘いに乗って、楽屋に荷物を取りに入る。残っているメンバーと挨拶を交わした後、ランの元に向かう。
楽屋を出ると、ランとリュウキが話していた。
「あ、たっくんもう大丈夫?」
「うん、おまたせ」
「リュウキもタクシー乗ってく?方向一緒やろ?」
「え?あぁうん、乗る」
ランの誘いで、そのまま3人で帰る事になった。
更衣室での会話があった後で、正直少しだけリュウキに対して気恥ずかしさのようなものがあった。
内心戸惑いながら、自然とランを真ん中にしてエレベーターまで歩き始める。
「……ん?」
「ん?」
「ラン兄どしたん」
ランの声に疑問符がついて、立ち止まった。
「…隣に行かんの?」
「「え?」」
俺とリュウキを交互に見て不思議そうにそう言ったランに、同時に声が出た。
「いつもすぐ隣に行くやん」
「…え、そんないつも隣やっけ、」
「隣やん、俺今めっちゃ違和感なんやけど…」
ランの言葉に、リュウキと目が合う。
確かに、正直言うと隣にリュウキがいないのは自分でも違和感があった。
リュウキも、さっきの俺との事を気にしているんだろう。
一瞬の間。
俺が大人になんないとな、
そう思って、リュウキに手招きしてみる。
「えっ…、」
「違和感なんだって。」
ランの言葉を使ってみると、少し迷った後照れたように俺の隣に来た。
ランが少し笑いながら、リュウキがいた位置にずれた。
「…どしたんリュウキ、なん照れとうと?(笑)」
「いや照れとらんから!」
「照れとうやん、かわいいな(笑)」
ランがからかうからか、なかなか俺の方を見ないリュウキを可愛いなと思った。
***
外に出て、タクシーに乗り込む。
「たっくん、先いいよ。」
ランは、こういう時必ず俺を優先してくれる。
歳上、リーダー、自然とその立ち位置を考えた振る舞い。
素直に、ありがとうと返事をして乗り込んで端に座る。
2人を見ながら乗ってくるのを待っていると、どっちが先に乗るか迷っているのか、少し止まっている。
「……おいで?」
自分でも無意識にリュウキの方を見て、呼びかけながら隣をトントンと叩いた。
「えっ、」
「リュウキ早く」
「っ、あぁ、ごめん、」
ランに促され、焦ったように俺の隣に座った。
「俺助手席行くわ」
そう言って前に行こうとしたランをリュウキが掴む。
「え、ラン兄もここでいいやん」
「狭いやろ(笑)ねぇ、たっくん。」
ランがそう問いかけ、俺を見る。
その言葉に、リュウキもこっちを向いた。
「…ううん。ランも乗りなよ」
言いながら端に少し寄る。
「みんなで喋ろうや」
「わかったわかった(笑)」
引っ張ってくるリュウキに、笑いながら応じるランが乗り込んだ。
「…リュウキ、ランが狭いでしょ?」
リュウキの腰に手をやって、こっちに引き寄せるとお尻を上げて寄ってくる。
「あぁ…っ、うん、ごめん。」
「…え、これいける?たっくん潰れとらん?」
「大丈夫だよ」
「…ねぇまってなんかめっちゃおもろい、」
ぎゅうぎゅうになった後部座席に、リュウキの言葉を皮切りに3人で笑い合う。
「ねぇ俺絶対前の方が良かったやん(笑)」
「ええやん!これがおもろいねん!ねぇ、たっくん。」
急にニコニコの笑顔を俺に向けて、そう言うリュウキ。
何がおもろいんよ、と思いつつも、いつもの顔に戻った安心感で自然と顔が綻ぶ。
「いや普通に狭いのは狭いだろ(笑)」
「ひょろいから大丈夫やろ」
「おい、誰がひょろいねん」
「あははっ!(笑)たっくんはひょろいって。」
「まだ言うの?(笑)」
「反応おもろいもん(笑)」
リュウキと普通にやり取りができて内心嬉しくなってしまい、いつもなら怒る冗談も笑えてしまった。
「仲良いな〜…(笑)」
俺とリュウキのやり取りに、ランがボソッと呟いた。
「ラン兄も入ってきてよ、一緒にいじろうや」
「たっくんをいじれるのはリュウキだけやろ(笑)」
「え?そうなん?」
「自覚ないんかい…普通いじれんやろ6個上とか」
「え、そうなん?たっくん」
「いや俺に聞くなよ(笑)」
「あ、そっか。」
「もう…っ、お前、ほんとに…っ、(笑)」
アホすぎるリュウキの言葉がツボに入って、笑いが止まらなくなってしまう。
「めっちゃ笑うやん!よっしゃ!」
「なんで”よっしゃ!”なん?(笑)」
「え?笑わせられたけん」
「…っ、リュウキ、そのままでおってな…?(笑)」
「ん?どういう意味?」
ランも言いながらツボに入ったのか、2人で笑っているとなぜか嬉しそうなリュウキ。
「いやウケすぎやろ(笑)」
「っ……ほんとに可愛いな?(笑)」
「可愛いやめろ」
つい、「可愛い」と言うと、いつものように秒で拒否してくるリュウキが余計に可愛い。
「ねぇマンションマンションやろ?」
「元気すぎやって…(笑)」
「俺寝てていい?」
「はっ?おいたっくん寝るのは無しやろ!」
「ちょっとだけ。」
「えー、、」
「リュウキ。寝かせてあげな?」
「…ちょっとだけね、?」
少しいじけながらも、素直にそう言ってくれるリュウキ。
その言葉で、目を瞑る。
うとうとしていると、ランとリュウキの会話が耳に入ってきた。
「リュウキ、あのゲー厶どこまでやったと?」
「あ〜、最近あれやれとらんっちゃんね」
「えーそうなん?うわ〜、早よやってほしか〜、最後やばいで」
「は?!ネタバレしたら許さんばい?」
「するわけなかろ(笑)」
俺が会話にいないからか、九州の方言が出ながら話す2人。
“やっぱ九州組やろ”と言ったリュウキの言葉が頭に浮かぶ。
寝ると言ったくせに、ずっと会話を聞いてしまっている。
「…やっぱラン兄と話しとうと、なんか素出るんよねー」
ランと話しながら、何気なくリュウキが呟いた。
その言葉に、なんだか少し疎外感みたいなものを感じて、俺もいるんだけど、なんて思いながらリュウキの肩に頭を乗せた。
「っ、うわっ、びっくりした、っ!」
「しーっ。たっくん寝とうから」
本当は寝ていないけど、なんとなく寝たフリを続ける。
「…あ、俺ここで降りるな?たっくんによろしく」
「うん、わかった。おつかれ〜、バイバイ」
「ばいばい、おやすみ」
ドアが閉まる音がして、タクシーが走り始める。
「……たっくん、寝とうと?」
リュウキが小さく呟いた。
今更起きてるなんて言えなくて、そのまま寝たフリを続けていると、しばらくして頭にズシッと重みを感じた。
スースー、と寝息が聞こえてきて、リュウキの顔が乗ってきた重みだと気付く。
……あったかいな。子供体温かよ。
どこまでも可愛いヤツだな。
そんな事を考えながら、時折目を開けては、寝顔を眺めていた。
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