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セカイで絵名が寝ていた。制服姿だがカーディガンを着ていない。私が借りてしまったからだろう。返さなければ。そう思ったが、返すのは何だか気が引けた。絵名のものだが、ちょっと嫌になる。
少し考えた私は、一度部屋に戻ることにした──
***
目を開けると、体が横になっていた。確か息抜きついでにセカイに来て、ついでにまふゆにカーディガンを返してもらおうと待っていた筈だ。寝落ち、それも体が倒れるほどに? いや、待て、この匂いは……。
「まふ、ゆ……」
見上げると、端麗な顔が下からはっきりと見えた。
「起きたんだ」
「……うん。ありがとう」
まふゆを待つというミッションは偶然ながらも達成したが、この状況は。まるでいつもと逆だ。
取り敢えず私は体を起こす。まふゆは英語の単語帳を読んでいた。そういえばテストだったか。体にかけられていたものが流れるように落ちて、私はそれを見た。まふゆのカーディガンだ。
「あ。まふゆ、私のカーディガンやっぱり返してほしくて。私の部屋にあるそこそこ使ってるクッションあるから、それと交換しよ」
「いや、あれがいい」
「え?」
「あのカーディガンがいい」
「え?」
「だから、それ貸すよ」
「え……?」
「お母さんが二枚買ってたし。困らないから貸すよ」
「……え、なら、解決?」
私はカーディガンがほしかったんだし。でも、娘がいきなり黒いカーディガンを着だすのもおかしい気がする。
「やっぱり、うーん、駄目だと思う」
「絵名、手を広げて」
「あーはいはい」
まふゆはカーディガンを手に取って、私の袖に通した。少し大きい気がする。でも萌え袖とかって可愛いし。って何肯定してるの。
「まふゆのカーディガンを返したくない気持ちは何一つわからないけど、カーディガンはやっぱり……」
「ボタン閉めてたよね」
「うん。ていうかこれ、ちょっと大きいね」
「似合うよ、絵名」
「え、ほんと?」
凄く満足気な顔で見てくるまふゆ。
なら別に──ってだめだめ。お母さんにどうやって説明しよう。友達とカーディガンを交換してて、あーそうそうまふゆまふゆ。って大丈夫そう。全然大丈夫かもしれない。
「あれ、まふゆは私のカーディガンどうするの?」
「家にあるよ」
「着るの?」
「いや、一緒に寝てる」
「え……?」
「落ち着くから。絵名の匂いもする」
「ちょっと待って普通に恥ずかしい! やっぱり返してよ!」
「できそうにない」
返しそうにない顔してるもんね。
でも、確かにまふゆの匂いがするカーディガン。包まれてる感じ、落ち着くわけではないけど、なんか、分かるかも、
「まあ、安心するよね」
「うん。落ち着く」
「そこ、譲らないのね……」