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その頃、魔王城では。
「にゃはー! またあたしの勝ちー!!」
「妾は2位なのじゃ! ふふん! お主たち、クララと妾のタッグには手も足も出ぬようじゃな!」
クララはファニコラたちと未だに麻雀に興じていた。
ファニコラの手が早いと見れば有効牌を鳴かせ、近衛兵がリーチをかければ自分で上がる。
実はクララ、麻雀の造詣が深かった。
ぼっちの彼女がなにゆえと思った諸君には、反省を求める。
今の時代、アプリで麻雀はできるのである。
ぼっちがテーブルゲームに参加できない時代は終わったのだ。
「クララ、クララ! もう1局するのじゃ! 今度こそ、妾が1位なのじゃ!」
「ほっほー。言うじゃないの、ファニちゃん! あたしは負けてあげないよー?」
そう言いながら、先ほどから接待麻雀を繰り広げているクララ。
ここにいると、みんながチヤホヤしてくれる。
まさにオタサーの姫。
このオタサーと言う名の異世界は居心地が良すぎて、既に彼女は5年くらいのんびりしていこうかなと考え始めていた。
そんな和やかな時を過ごしていた魔王城に、凶報が走る。
「し、失礼いたします! 敵襲です! 人族の軍勢に我が城は取り囲まれております!! その数、その数、5000!!」
魔王軍の全軍は総勢50000に及ぶ。
ならば5000など物の数ではない。
と言い切りたいのは山々なのだが、そうはいかない。
平和な時代に入り、ミンスティラリアの治安維持のため、現在魔王軍は各地の屯所に散らばっており、魔王城の警備に当たっている兵士はわずか500足らず。
しかも、新兵ばかりであった。
ならば近くの屯所からだけでも援軍をと考えるのが自然だが、それも叶わない。
ダズモンガーが尋問したゲリラが言っていたように、時を同じくして国内で人族ゲリラ隊が一斉蜂起。
その対応に追われており、すぐには救援も期待できない状況だった。
「ど、どどどど、どうすれば良いのじゃ!? 妾は、どうすれば!」
「ひとまず、地下にお隠れくだされ! 我らが時を稼げば、いずれかの軍が駆けつけるでしょう!!」
「何を言っておるのじゃ! お主たち、それでは死んでしまうのじゃ!」
「もとより我らの命は魔王様のもの! そのために散るならば、本望でございます!!」
「バカ! そんなの、そんなの妾は嫌なのじゃあ!」
「ワガママを申されないでくだされ! ささ、早く避難を!!」
ここで立ち上がるのは、清く正しいリーダーの元、ダンジョン攻略を完遂したチーム莉子の頼りになるお姉さん担当。
彼女はファニコラの涙をそっと拭ってから、ウインクして言う。
「このクララパイセンに任せてくれたまえよ! 言っとくけど、そこそこ強いんだよ? あたし! おじいちゃん、遠距離攻撃できる兵隊さん集めてくれる? あたしと一緒に少しでも多くの敵さんをお城の外で食い止めるにゃー!」
魔王付きの近衛隊長は、異世界の戦士の助力に感謝しながら答えた。
「ははっ! すぐに手配いたします!」
「ふっふー! ありがと! ファニちゃん、この騒ぎが終わったら、とっておきの技を教えたげるねー! がん牌って言うんだけど! これを覚えたら無敵だぞな!」
「クララぁ……。絶対に怪我しちゃ嫌なのじゃ。お願いなのじゃ……」
「あたしは悪運強いから、へーき、へーき!! 行ってくるにゃー!!」
クララは近衛隊長の誘導で、飛竜発着場へと向かう。
彼女の対空迎撃戦が始まる。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『紙矢』もしくは『太刀風』を使える兵士は、おおよそ100人。
実に心許ない数字だが、いないよりはずっと良い。
「じゃあね、みんなはあたしの矢に合わせて、スキル撃ってくれる? 盾出せる人は、悪いんだけど、前の方で展開しといて! ただし、危なくなったら逃げて良し!」
長らくソロ探索員だったクララだが、チーム戦のノウハウは六駆と莉子の連携から学んでいた。
六駆を師事こそしていないが、彼から習得したものは意外と多い。
「さあ、行くよ! お姉さんに続けー! 『サンダルアロー』!!」
「行くぞ、皆の者! 『紙矢・輪舞曲』!!」
「『連弾太刀風』!!」
ゲリラたちは、人工の羽を魔力による推進力で翼に変えて、上空から魔法攻撃を仕掛けている。
その中心を射るのは、クララの矢。
激しく放電しながら周囲の敵を巻き込んでいく『サンダルアロー』の威力に、魔王軍の兵たちは沸いた。
一方、クララは自分のスキルの威力の高さに驚いている。
種明かしをすると、ミンスティラリアを覆う煌気は、現世のそれと比べると3倍近い量がある。
これはスキルを使用する者が少ないため、大気中の煌気が余っているからなのだが、そこまでの複雑な理屈をクララに理解せよとは酷な話。
莉子が神獣レスジャレオンを単独で討伐できたのも、実はこの事情が少なからず影響していた。
「クララ殿! これならばやれます! どうぞ、もう一射、お願いいたします!!」
「お、おうだにゃー! よーし、ガンガン撃つよ! 『パラライズサンダルアロー』!!」
ゲリラ隊は攻めあぐねており、同じ場所に留まって次の行動を考えると言う統率の低さも手伝って、クララの矢は撃てば当たる状態だった。
そのまま攻勢を続けて、かなりの数のゲリラを撃ち落とす事に成功。
空が人だかりで埋まっていた事を考えれば、随分と雲間から光が射してきていた。
だが、敵の数は対空迎撃隊の20倍。
さらに、地上からは3000の兵が攻め込んで来る。
このままでは、いずれ城門を突破されるのは時間の問題かと思われた。
が、援軍来る。
「『獅子雷音』!! お客人、お待たせしちゃったわね!!」
「お、おおお!! 遊撃部隊隊長、ニャンコス様ぁ!!」
「あなたが来てくだされば、千人力だ!! 皆、煌気を高めよ!!」
駆けつけたのはライオンの顔をした、スマートな獣人。
彼女に翼はないが、六駆の『天滑走』を習得しており、その応用で空を縦に横に、自在に駆ける。
その速度は魔王軍一と呼び声高き、ダズモンガーに並ぶ双璧の1人。
「やー! 助かったにゃー! 猫さん、ナイスタイミング!! これで空の方はどうにかなるかもだねー! あたしは椎名クララ。猫さんはニャンコスさんね! よろっす!!」
「え、あ、ああ。私、ライオンなのだけど……。良く間違われるけど、ライオンなのよ? 今、こっちに遊撃隊が向かっているわ! 数は2000! よく耐えたわね!!」
兵士たちは口々にクララの奮戦の様子を彼女に聞かせた。
改めて礼を言うニャンコスに対して、「お礼は豪華な晩ごはんが希望!」と答えるクララ。
彼女の明るさは、窮地にこそ輝きを増す。
「あたしも語尾に、にゃーって付けることが多いから、ニャンコスさんとは仲良くなれそう! チーム猫、ここに臨時結成だにゃー!!」
「私……ライオン……。も、もう良いわ! あなたち、まだ煌気は尽きてないわよね!? クララさんと一緒に迎撃を続けて! 敵陣のど真ん中に強力なのを頼める? 私は散らばった残りを刈り取るわ!」
どうにか踏ん張れる地盤固めは完了した。
あとは、莉子とダズモンガーの到着が待たれる。
ところで、我らが主人公、六駆おじさんはどうした。
まさかとは思うが、この状況で空気を読まないなどと言う事は許されない。
チーム莉子が奮戦する中、主人公としての面目が保たれるのか。
活躍次第だが、最悪の場合、ミンスティラリアに残留させられる事もあると覚悟せよ。