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Prologue4「すれ違い」
日付 : 5⁄14
天気 :晴
内容 :中也と仲直り
結果 :また失敗
「ぁ……」
いつの間にか、寝てしまっていたらしい。今は何時かと辺りを見回すと、カーテンの隙間から、太陽がのぼりかけているのが見えた。大体、朝の5時と言ったところか。瞼が少し重く、服のところどころに、滲みができていることから、私は昨日、相当長い時間泣いていたことが分かる。今日は平日。もうとっくに彼は家を出ていることだろう。
「…ひどい顔」
中也が仕事に行ったほんの数分後に起きたのだろうか。電気のついていない洗面所には、ほのかに彼が使ったであろうシャンプーの匂いが残っている。彼のいたことを実感することが、今の私にとってどれだけ苦しいか。けれどもそれを認めてしまうと、また寂しさが溢れ出てきてしまうから、気持ちを入れ替えるかのように、脱衣所にある小さな窓を少し開けて、空気を入れ替えた。彼のいた痕跡が吸い込まれて外に出され、代わりに新鮮な空気が入ってくる。
「嗚呼そうだ、こんな顔じゃあ仕事も行けないし…」
自室に戻って、充電が僅かしか残っていない携帯を開く。連絡先を開けて、仕事場の上司に電話をかける。
「はぁ~い、もしもし国木田くん?」
「……なんだ」
といってもまだ朝の5時30分。モーニングコール…と言っても早すぎる時間だ。携帯からは、不機嫌そうな声が聞こえる。
「今日ねぇ、ちょっと体調が悪くて。休ませてもらうよ。」
「……あの唐変木が報連相を守るとは…」
「失礼な」
「まぁ…いい、最近は梅雨が迫ってきて、体が冷えて風邪が流行る時期だからな。社の皆には健康でいてほしい、故に、社長には俺が言っておく。いつもは叱ってばっかりだがなにかあったら_」
「わぁ~いありがと。じゃ、切るね」
どうやら何か言いかけていたようだが、国木田くんがこれ以上喋るとお説教が混じりそうだから切っておこう…。
「はぁ…何しようかなぁ…」
仕事は無事に休みを取れたものの、体調不良だという訳でも、用事がある訳でもないため、暇である。ただ今日は人に会いたくなかった。だから休んだ。何も引き摺ってない。
ただ、それだけだ。
暇というのは、こんなに、何をしようか迷うものだっけ。部屋の中を見回しても何もなく、眠気もない。自殺…の気分でもないし、まだ死ねない。だったらもうあれをやるしか_
「……昨日の反省でもしよう」
ずっと頭にあった、昨日の出来事。それをいまさっき思い出したかのように、態と口にだす。きっと彼は普段通りに支度して、職場へ行った。それはつまり、彼は昨日の出来事に関して、本当に何も思っていないのだ。だとしたら、自分だけ考えているのもなんだか癪で、先程まで無視していた。
だけど流石に、もう我慢できない。
「というか、私のどこが悪かったのさ。」
そう呟いたのが最後。
「抑も浮気だって中也が私をほっとくからでしょう…私だって好きな人と付き合って速攻関係を持つほどじゃないし…初めだって私ずーっと中也の帰り待ってたよね…健気に莫迦狗兼莫迦彼氏のおそ~い帰宅を待ってたよね…?帰ってきたらちゃんとお疲れ様って言ったよね、疲れてるって思って甘えなかったね、それをぜ~んぶ駄目にしたのは中也の方だよね…」
部屋の中に誰かの本音がドバドバと止めどなく溢れ出される。怒鳴るようにして壁にぶち撒けられた言葉は、どんどんと弱いものに変わっていく。気づけば途中から、消え入るような声量で、鼻を啜っていた。
「やだよ…嫌いって……言わないでよ“ぉ”っ……」
涙がまたポロポロと溢れる。思いっきり顰めた顔を、水滴が綺麗になぞって、ソファの奥に沈んでいく。いつも彼のことになると自分は泣いてばっかりいる。それが苛つく。彼は私のことが嫌い。それがもっと苛つく。彼は私のことが大嫌い。それがもっともっともっと苛つく。それでも、感情に任せたまま違うんだって言って殴ってやりたい。でも、私は臆病だから、天邪鬼だから、思ってもないことを口にするしかないんだ。
「きっと”、それが悪いんだ“……」
彼が帰ってきたら、まずはごめんなさいって、私は大好きだよって言おう。中也に拒否されてもいい。嫌な顔されてもいい。でも、自分の気持ちをちゃんと伝えたい。
「どうすれば、伝わるかな…」
少し掠れた声でつぶやいて、辺りを見回す。流石に言葉だけじゃ伝わらないだろうし、何か行動で示さないと。綺麗好きな中也のことだ。部屋の中には埃一つだってないため家事は無理そう。だったら……。
私はゆっくりと息を吐いて、彼との仲直りのため、行動に移ったのだった。
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部屋の中に、ぐつぐつと、何かを煮る匂いと共に、ふわりと暖かい匂いが充満する。
そう、私は今、料理をしているのだ。
「案外料理って楽しいものなのだね、」
今までは面倒くさがってあまりしなかったけれど、今度からはもっとやってみよう。なんて考えながら、ある程度煮込んだ鍋の中に生姜を散らすように入れて再度火にかける。今作っているのは鶏レバーを使った赤ワイン煮だ。丁度冷蔵庫にあった鶏レバーに、中也のお気に入りの赤ワインを用いた料理。意外にも切ったり煮込んだりするだけなので、素人の私にもできそうな料理であった。
ちなみに、この料理やレシピを知ったのは、中也が以前読んでいた、赤ワインを活用した料理集なる存在のお陰だ。あんなに昔のことを思い出せるなんて、自分の記憶力の良さに、思わずなんて優秀なんだ、と褒め回したくなる。
鶏レバーは脂をとったり血抜きをする…と言う工程が必要で、少し戸惑ったが、ポートマフィアにいた頃(ナイフの扱い方)を思い出しながらすると、案外上手くできた。
「中也早く帰ってこないかな~♪」
鍋の中をかき混ぜながら、帰ってきた時の彼のリアクションを想像する。驚いて褒めてくれるだろうか。少しは見直してくれるだろうか。そんな都合の良いシチュエーションを幾つか考えていると。自分の決定的なミスに気がついた。
「…ワイン切れちゃった……」
レバーにワインの味を染み込ませたかったがため、丸々一本を使い切ってしまっていたのだ。
「ん~……、買いに行くかぁ…」
ワインが一本消えていたら流石に気づきそうだ、と今更ながらに気がついた。これは流石に喧嘩の種になってしまう…。彼の好物のワインで仲直りをしようと思っていたのに、そのワインで喧嘩してしまう結末なんて…、空回りし過ぎではないか。それは避けたい。
「まだ時間はあるし…、」
鍋の火を消して蓋をし、服を着替える。まだ8時。早く帰ってきても10時だろう。後2時間はあることを確認してから、足早に近くのスーパーへと向かった。
短い&変…‼︎急な料理展開なぁぜなぁぜですが、太ちゃんに買い物行かせたかったのでづ…😭
次回も見て下さい…‼︎