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やっホゥ happy Cookieケンタッキー
んじゃどぞ
日付が変わる少し前。七海建人の自宅マンションの呼び鈴が鳴った。
インターホンを確認するまでもない。この時間に予告なく訪れ、かつ防犯性の高いはずのオートロックをすり抜けてくる人間は、この世に一人しかいない。
「……何ですか、こんな夜更けに」
七海がドアを開けると、そこには任務帰りなのか、高専の黒い上着を少し崩した五条悟が立っていた。アイマスクを外し、素顔に丸眼鏡をかけた彼は、七海の怪訝な顔を見るなり「やっほー、ナナミン」と緊張感のない声をあげる。
「京都で買ってきた限定の和菓子、お裾分け。一人で食べるの寂しくってさ」
「私への嫌がらせですか。私は明日も朝が早いのですが」
「まあまあ、中入れてよ。外、結構冷えるんだから」
溜息をひとつ。七海はそれ以上拒むことなく、体を引いて五条を招き入れた。結局のところ、この男を本気で拒絶することはできないのだと、七海自身が一番よく知っている。
リビングのソファに深く腰掛けた五条は、自分の家のようにくつろいでいる。七海は上着を脱ぎ、キッチンで静かにお茶を淹れた。
「はい、どうぞ」
「ありがと。ねえナナミン、ネクタイ外さないの?」
ローテーブルに湯呑みを置いた七海の手首を、五条が不意に掴んだ。
驚いて見下ろすと、眼鏡の奥にある六眼が、じっと七海を見つめている。その瞳には、いつものふざけた軽薄さは微塵もなかった。
「……外しますよ、今から」
「じゃあ、僕が外してあげる」
五条はソファから立ち上がり、七海の目の前に立つと、長い指先で七海のネクタイの結び目に触れた。ゆっくりと結び目が緩められ、シャツの第一ボタンが外される。その一連の動作は、ひどく丁寧で、同時にどこか威圧的だった。
五条の指先が、七海の鎖骨のあたりに軽く触れる。衣服越しではない、ダイレクトな体温。
「ナナミンってさ、僕の前以外でもそうやって隙なく綺麗にしてるわけ?」
「……仕事ですから。当然でしょう」
「ふーん。じゃあさ、」
五条は顔を近づけ、七海の耳元で低く、けれど確かな独占欲を孕んだ声で囁いた。
「僕以外の誰にも、そんな風にネクタイ緩めさせちゃダメだよ。……もし他の奴にやらせたら、僕、その場所ごと更地にしちゃうかも」
冗談めかしているが、この男なら本当にやりかねない。
七海は呆れたように息を吐きながらも、その傲慢な言葉の裏にある、五条の「子供じみた寂しさ」を冷たく突き放すことはできなかった。
「……馬鹿なことを言っていないで、早くお菓子を食べて帰ってください」
そう言いながらも、七海は掴まれたままの手首を振り払おうとはしなかった。
終わりンゴンゴ
ℝ𝕒𝕟
269
こぬぬー(響)
120
コメント
1件
うわあ、五条が夜中に突然現れてネクタイ外すとか、独占欲あらわな台詞がすごく五条らしくてぞくぞくしました……! 七海が呆れつつも手首を振り払わないところに、二人の距離感が絶妙に現れてて、設定や関係性の表現が巧いなと感じました。続きがすごく気になります!