テラーノベル
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今回短め、伏線的なののみです。この題名の英語は英語翻訳から拾ってきたので合ってるか分からない、ごめんバカで。
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@yaka_n_jan
鍵ですが、申請来たら通そうと思います。
ハッピーバレンタイン。
夢を見せてよCoward’s Chastity!
「ない」
「え?」
「おれ手ぇ出されてない!!!…そんなに俺魅力ない…?!」
手を出されてないというナギの悲痛な叫びが頭のなかでリピートされる。数十秒ぐらい二人ともフリーズしていた。僕の口から思え?と困惑の声が溢れていた。
「星導くんあんなに笑顔だったのに?!」
「違うんですよ!!ちょっと手つないだだけで…ハグも、キスも、セックスも!なんもされてない…!!」
「え、今日一日何してたの?午前から出て、まさかデートして終わりとか言わないよね…」
「そのまさか…っす。映画みて、カフェ巡って、今日は何年かに一度の彗星が見れるからって山登らせれて…」
あぁ、だから息切れ、乱れた服、火照った身体、腰を抑える動作。全て合点が行く。
ガチで疲れたんだけどぉと珍しく疲れきった声を漏らす。かなえさぁん、メニュー表の俺のNG欄に運動って書いといて、と終いにはメニュー表の変更を頼み込まれた。
「ほんっと全部予想外。完全にホープじゃん。…ロア、ロアいるー?ちょっと集合!」
予想以上の事態にくくく、と笑いの余韻が残りながらも、確か店奥にいた筈だからとロアの名を呼んでみるとドタドタと音を立てながら真紅の髪の毛が駆け込んできた。
「なになにかなえさん…あれ、これはこれはあの色男を射止めたナギくんじゃあありませんか!…どうだったハ・ジ・メ・テは?気持ち良かった?優しくしてくれたか?あの色男のちんこはでかかったか?!」
「ロア手伝って。誘い文句考えるから」
ナギの喉仏がひくりと震えた気がした。怖がっているのかな、だがうちの店員であるのだから営業はして貰わないとね。
怖がっているという予想は当たりでゴクリとナギから唾を飲み込んだ音がした。それに手を猫のように丸めて音を立てぬようにそろりそろりと逃げようとしていることもお見通しだ。音を立てぬようにしているのだろうが服についているシルバーのチェーンなどがジャラジャラと音を立っている。今だけは服装の好みを恨むといい。
「…あーははは…、そーゆーことね?逃したって訳だ」
ビクッとナギの肩が震えた。どうやら僕たちが何をするか理解できているみたいだ。本来なら体に教えて上げるのだが。まぁ最初だから多めに見て座学として、ナギは自慢出きるほど色々な面で良く出来た子だ。それを手を出されなかったというのは僕も悔しいものがある。
猫を抱っこするようにナギの脇に手を差し込んで持ち上げて改めてて僕の傍にぺたんと座らせる。持ち上げた瞬間ぉわっと困惑の声を上げた。こんなに可愛いのにねぇ。
「ほら、逃げない逃げない。なに、星導くんはいや?」
「いや、では……ないです…」
「グズグズしてたらこのえっちなロア先輩が星導くん寝取っちゃうぞ~?……今日はまだ初めてだから目をつむってあげる。 でも僕もあんまり甘くして上げられないよ?」
五日前のことがあったから今日失敗しても逃げれるようにチェーンやネックレスは全く着けずカジュアルに、そしてメガネを掛けた少し格好付けた服装で星導が指定してきた場所に向かう。色だけはいつも通り黒く、モノクロだ。星導も全体的にモダン風な色でオーバーサイズのカーディガンを羽織っている。いかにも文系って感じ格好。
色や格好が相まってペアルックみたいになってしまった。俺は気恥ずかしくて敢えて言わないが、星導は気付いているのだろうか。なんにも言わないから気付いてないか。
今日は水族館だそうだ。デートと言えば真っ先に水族館が思い浮かぶ程スタンダードな場所。
今日も会話の話題に尽きることはないだろう。水族館のような次から次へと話題を提供してくれる場所は俺達、処女童貞にぴったりだ。
水族館がいかに優しい場所かはともかく、今日ホテルに誘うような言葉をかなえさんとロアさんがメモに書き出して渡してきた。読んでいても恥ずかしくなるような内容をなに食わぬ顔で書き起こしては「ココはもうちょっと言い回しにした方がいい」とか「コレを言うなら~…」と数十分くらいずっと推敲していた二人の姿を思い出しながら、それを全く知らない星導にルンルンと連れて行かれた。勿論その渡されたメモはしっかりと持っている。
「あ、ナギくんこれはクリオネ。クリオネってね食事するときに頭が割れるんです。バッカルコーンって言うらしいですよ。」
「ばっかる…へぇ凄いな」
「これはエチゼンクラゲ。中華クラゲって言って食べれるんだよ」
「コイツが、食べれる?マジか」
「あ、ナギくん見て見て!蛸いる蛸!」
「テンションたか、なに星導蛸好きなん?」
「好きでもないけど嫌いでもなくて、…なんか見てて面白くないですか?」
「……確かに、なに考えてんのかわからん」
「ナギくんは蛸すき?」
「普通かな」
「あ、蛸って___」
と、気になる魚に行ったり着たり予想通り会話に尽きることはなかった。星導は俺が気になった魚の元に行く度雑学のようなものを教えてくれる。そのお陰で魚の博士になれてしまいそうだ。
…そう言えば今日は手、繋がないんだ。
空いてますよと言わんばかり星導の近くで腕をプラプラと揺らしてみても手を繋ごうとする気配はない。星導は熱心に魚たちの様子を観察して、時々可愛いーとか初めて見たとか呟いて、時折俺に微笑み掛けて「楽しいね」と言うばかり。
ふーん、へーぇ。…もしかして今回は俺から手を繋がないと行けない感じ?。星導は今か今かと俺から繋がれるのを待ってそわそわしているのか?
前回は流れるように手を差し出されて、俺も流されるように掴んでしまって。それに恋愛もののストーリーは好んで見ていないから参考になるような情報は残念だが持ち合わせていない。
どうすれば良いんだ…助けてかなえさん…!と頭のなかでガックリと項垂れる。そうだ、こんな時あのロアさんならどうする?… 悶々とイメージを膨らませてみる。
星導のカーディガンの袖をちょいと引っ張って、その場で止まる。星導はゆっくりゆっくり進んでいるから自然にカーディガンが伸びる形になる。俯いて、ちょっと目を伏せる。星導が振り向いた時にちょっと顔を上げてちょっと潤ませた目で見つめてみる。
「どうしたの?ナギくん」
「ねぇほしるべ。 …手が…寒いんだけど」
「…あ、水族館ってちょっと肌寒いよね。俺カイロ持ってるよ。」
そういうことじゃない!!
心の中で羞恥心が溢れ返る。頑張って行ったのに!!鼓動が早く胸打って血液が心臓から勢いよく押し出される。恥ずかしくて逆に顔や手、全身の至る所が熱くなり始めた。
星導はカーディガンのポッケからカイロを取り出した。「どーぞ、あげる。」と渡されたカイロは温く、なんならちょっと熱い。さっきは寒いなんて言ったのだが、今は熱くて熱くて堪らない。
欲しいのはお前じゃないと、カイロを睨み付けながらポッケの奥底にメモと一緒に突っ込んだ。熱いのが悟られないように奥に奥に仕舞い込んだ。水族館が少し暗い所でよかった。顔が赤くなっているのがバレないから。
クーラーが効いた少し肌寒い空調の水族館に感謝した。
呼び出された今日もまたレンタル五日間中の五日目。手を繋ぐことすら出来なかった前回、手を繋ごうとした俺の勇気、星導の鈍感さを盾に必死に弁解すると、じゃあ次は絶対手繋いでねと小さく、交際歴が全くと言っていい程無い俺にとっては大きい目標が設定された。勿論、今回の服装もいざとなったら逃げれるようにチェーンやベルト等、過度な装飾は控えております。
「今日はプラネタリウムです。ちなみにもうチケットは取ってあります。」
「プラネタリウム、って俺寝そー」
「今回のは寝ても良いやつだから。なんならテーマ的に思いっきり寝てストレス発散してください!って感じ」
まじか、俺にぴったり過ぎる。だが、寝言で変なことを口走ったり言ったりやいびきをかかないように気は抜かないようにしなければ。星導は星とかに興味があるようで意気揚々と俺を連れていく。名前に星って入ってるし、あんまり驚くことじゃないけど。
プラネタリウムに入ってみると子連れの家族、カップルが多くて男二人での客は見掛けない。少しだけ気恥ずかしくなりながらも本命のドーム型の空間に入っていく。
薄暗い丸い空間に中心に向く向きで並べられた円形のソファとベッドが合体したような、ソファ。睡眠を誘うような甘い匂い、だがハーブ特有の爽やかさが漂っている。
いざソファに身を委ねてみると柔らかいクッションが沈み込み、まるでふよふよと海を漂うような感覚に陥る。始まる数分前、既に瞼にはダンベルを乗せられたようだ。プラネタリウムが始まったとして何分持つか、始まる前に尽きるかもしれない。
ふいに星導を見てみると、星導は目を輝かせてプラネタリウムが始まるのを待っていた。星導を見てみると狭いソファだから勿論顔が近付くわけで、ラベンダーとは違う花のフローラルな匂いに一層強い睡魔が襲い掛かった。
「楽しみだね」
「…ぅ?」
「わ眠たそう、さては昨日夜ふかししたでしょ」
「し…てなぃ」
「うそ、ナギくんわかりやすいね」
「してないってばあ…」
そう言いながらナギくんは完全に堕ちた。こてりと首がこちらに傾いたまま真っ直ぐ睡眠に。
相当疲れていたのだろう、チケットを取る前からナギくんは寝そうだなと思っていたが、始まる前に寝てしまった。ナギくんがこれでストレス発散出来るのなら別に良い。別に起こそうとは思わないが、少しプラネタリウムを一緒に見たいと言うと気持ちも無かったと言えば嘘になる。自分が好きな物を知って欲しかった。ただそれだけだ。
レンタル三回目、一番の接触と言えば一回目の時の手を繋いだ限り。前回の二回目は全く接触は無かった。だがそれで良いのだ。ゆっくり進めて行けば良い、焦ることはない。この十五日間、ナギくんは俺が独占しているのだから他の男の目に映る筈がない。有ったとして、かなえさんとロアさんを含むNaughty Recordのキャストの方達だけだろう。
伏せられた睫毛、通った鼻筋、薄い唇。全て精巧な造形。雰囲気を作るためのスクリーンから漏れている無造作な光が肌に透き通ってガラス細工のような姿が網膜に焼き付けられた。
スクリーンに写される作られた月よりもこの瞼の中に隠されている本物の月を独り占めしたくて堪らない 。
一瞬「んん…」 とナギくんが唸って良い体制を探すように身を捩った。ちょっとだけ、距離が縮まる。鼻の先同士がすり…と当たって、ほんの少し動いてしまえばキスが出来てしまいそうな距離感。
もしここがカーテンで囲われていたのなら、俺は今ファーストキスをナギくんに捧げていただろう。…睡眠姦じゃないです。
ナギくんの事だからキスなんてごまんとしてきただろう、俺のファーストキスを奪ったって造作も無いことなんだろうな。過去に戻れるのならナギくんが知らぬ誰かに手折られる前の世界に行きたい。
「…ほしぅ。て…」
「つぁいでよお…」
何度もその言葉が頭の中でリピート再生される。星導、手を繋いでよ。と。
ナギくんが俺と手を繋ぎたがってる。
ナギくんが、俺と。
宇宙猫のように思考が固まる。まあここプラネタリウムだしな、って喧しい。ナギくんは寝ている。という事は寝言。
すかさず『寝言 なぜ』と調べてみる。回りに迷惑を掛けないように光が漏れないように隠して。
寝言の主な理由としては、ストレスとか睡眠不足。何に関して言うのかという一番の大事な項目は仕事のエピソード、感情的なつぶやき、夢の内容の反映、ストレス、不安、へぇ。
夢だとしてナギくんの夢の中に俺が居る。ストレスだとしても、ナギくんは俺と手を繋がない事にストレスを感じている。
どっちにしても、ナギくんって俺の事好きなんじゃないの?という結論に至る。
プラネタリウムが始まるという放送に慌ててタブをスワイプして電源を切った。
まさか、いや…もしや。 バクバクバクと心臓のBPMが有り得ない程スピードアップする。
脈ありかなしか考えて、結局至った答えは…。
「どっち?」
何回もレンタルを重ね、今日はピクニックデートを予定していた日の朝。空には雲一つなく、絶好のデート日和だった。だがNaughty Recordの電話番号から風邪とかなえさんでもロアさんでもない知らぬ声から教えられた。ナギくんが風邪だと知り、心配で居ても立っても居られなくなって来てしまった。何も出きる筈がないが、淡い期待を抱いて。
「かなえさん!…ナギくんが風邪ってホント?!」
「星導くんいらっしゃい。ナギは絶賛風邪でお休み中です。ごめんねレンタル期間中なのに。今回は特別に延長料金なくて良いから。」
「今はロアが様子見に行ってるから大事があっても大丈夫だと思うんだけど…、もうすぐお客様のとこ行かないといけないし。 僕も心配だなぁ。」
「俺が行ったりとか」
「駄目だね、キャストとお客様だからね」
「ですよね」
「一応、星導くんのこと信頼はしてるけどね」
「ストーカーとか…ありますもんね」
青天の霹靂。ピリッと背中に悪寒が走ると共に和やかだった空気が入れ換えられた。気付かぬうちに地雷を踏み抜いてしまったのかもしれない。
_かなえさんは首を傾げながらにっこりと口許を綻ばせた。陶器みたいな真っ白。ナギくんとはジャンルの違う白さ。真っ白と言っても血色が悪く体調不良という印象は与えられない。日頃から丁寧な手入れをしているであろうベージュの髪が柔く空中にふわりと舞う。揺れる香水の甘い匂いに近寄りがたい気高さを感じる。
今も全く恐怖という感情は頭のどの一角にもいないのに、どこか「しないよね」と選択肢を押し付けるみたいに物を言わぬ重圧を掛けられて無自覚にもヒクリと喉が震えて言葉が詰まった。
この風景は至って自然だ。もしこのシーンだけを切り取ったとして、笑顔のお兄さんという感想しかあたえないだろう。だが俺にとっては普段優しい人を怒らせてしまったというトラウマで、もしそういう目的でナギくんの家に行こうとしていても絶対にこの顔が浮かんで身体が竦み出来ないと思う。
「星導くんはストーカーってされたことある?」
「ナギはもともとこの店のお客さんで…、でも誰とも何もしてないよ。君みたいにデートしてただけ。ナギって美形でしょ?一回だけ男に家まで付かれて襲われたことがあるの。すんでのところで僕たちが保護した。 ナギはこの店に関する記憶がなくなった、でもまた類いのことが起きたら思い出すだろうけどね。」
「だからね、星導くん。諦めて」
オーバーキル、死体撃ち。
無理と言われたなら潔く諦めようと思ってた。しつこく聞いて出禁になって来れなくなるぐらいなら一般客とキャストの関係でいたかった。
でも、ナギくんのトラウマを一方的に知り、自分の臆病な性格に酷く感謝した。
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