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妻と娘が死んだあの時は
オリキャラ
霧野(きりの)
雨乃(あめの)
乃愛(のあ)霧野の、子供
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霧野「………、」外眺め
霧野「……雨は嫌いだ。」外眺め
霧野「妻と娘が死んだ日を思い出すから、。」
この日は朝から酷い雨だった。
ざあざあとうるさい音を立ててる雨。
雨の音が心地いいという話も聞くが、俺にはさっぱり理解できなかった。
雨の音なんて、…俺にとってはうるさいだけ。恐怖心を煽られるだけ。
雨乃「霧野さん顔色悪いよ」
雨乃「具合悪いの?」
霧野「…………ぁ、ううん、 そんなことないよ」
霧野「少し頭が痛いだけだから」
食卓の向かいに座る青年が、心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。
青年の名前は、雨乃。
俺の妻の弟で、俺の現在の同居人だ。
俺は妻と娘が亡くなったその日、生きる気力を全て失った。
この世の全てに絶望し、まともに生きることが出来なくなった。
当然務めていた会社は辞めることになり、病院へ行ったら鬱病と言われた。
簡単な家事すらもできないので、義理の弟の雨乃に面倒を見てもらっている。
隙あらば自決しようとする監視も兼ねて、雨乃と一緒に住むことになった
雨乃「霧野さん、姉さんのためにも死なないで………」
雨乃「姉さんも、乃愛ちゃんも、霧野さんが死ぬことなんて望んでないよ」
雨乃「霧野さんに生きて欲しいって思ってるよ…………!」
雨乃「だから死ぬなんて絶対にだめだよ!」
妻と娘が死んですぐに自殺をしようとした俺に、雨乃がそう言ってくれた。
だから死ぬべき僕は、死ねずに今日まで生き延びてしまっている。
毎日死にたい思いと戦いながら、意味もなく生きている。
雨乃「霧野さん頭痛薬飲む?」
雨乃「毎日雨ばかりじゃ気が滅入るよね」
雨乃「洗濯物も乾かないし、早く梅雨が開けるといいね」
霧野「………そうだね、」
胸の奥がズキズキと痛む。
妻と娘は、約1年前大雨の中出かけて………、
濡れた歩道橋で転落し、亡くなった。
雨の音は、俺にそれを強制的に思い出させる。
もう全て忘れたいような、決して忘れてはいけないような。
正解なんてもう何も分からなかった。
雨乃「はい、頭痛薬とお水」
雨乃「それから朝食後の抗不安薬」
霧野「…………ありがとう」
雨乃が薬と水をテーブルの上に置いてくれる。
オーバードーズ防止のため、俺の全ての薬は雨乃が管理してくれていた。
雨乃「今日は大学休みだから、一日中霧野さんと一緒に居られるよ」
雨乃「雨だから出かけられないのが残念だけど、映画でも見ようよ」
雨乃「ミステリー映画で面白そうなやつがあって…………」
雨乃「霧野さん、ミステリー映画好きでしょ?」
霧野「うん、ありがとう」
霧野「………………」
大型ソファに二人で腰をかけ、大画面のテレビで映画を見る。
映画はありふれた推理サスペンスだった。
ミステリーは大好きだったはずなのに、イマイチ内容が頭にはいってこない。
鬱病になってから、映画などのフィクション物語を楽しむのも、困難になってしまった。
特に、今日は雨だからか、身体が重く、頭もぼぅっとする。
慢性的な体調の悪さは1年前からずっと続いているが、雨の日は特に酷い。
霧野「…………ッ/」
雨乃「……………/」
雨乃が俺の手を握ってきた。
するりと指を絡ませ、まるで恋人同士のように。
雨乃が、何故俺の世話を焼いてくれるのか……。
その理由を、僕は知っている。痛いくらいに。
雨乃「霧野さんっ、………」
霧野「雨乃、ごめん………」
霧野「ごめんね………」
俺は雨乃の手をやんわりと振り払う。
雨乃が俺の面倒を見てくれるのは、義理の弟だからではない。
義理の兄弟だからという理由だけでは、普通そこまでしない。
雨乃が俺を放って置いてくれないのは、そこにあるからだ。
雨乃は俺を愛してる。それも情熱的なまでに。
雨乃「霧野さんッ……」
雨乃「もう忘れていいんだよ、」
雨乃「楽になっていいんだよ」
雨乃「次の恋をしていいんだ。」
雨乃「姉さんだってそれを望んでいるはずだよ。」
雨乃「いつまでも私に囚われないで。」
雨乃「姉さんならそう言うはずだよ。」
雨乃「それは霧野さんだって分かってるんでしょ?」
霧野「確かに俺の知る妻は、……そういう女性だ。」
霧野「俺に早く新しい人を見つけて幸せになりなさいって言うと思う。」
霧野「だけど俺は妻以外の人間なんて愛せないんだ」
霧野「女性だろうと男性だろうと、愛せないんだ」
霧野「例えそれが、妻によく似た気であろうとも」
雨乃は、妻によく似ていた
顔も雰囲気も性格も、生き写しのようにそっくりだった。
だから、たまに雨乃に妻の面影が見えて、心がぐらつきそうになる。
妻によく似た雨乃を愛することで。
妻と同じ血の流れる彼と愛し合うことで。
俺のこの底のない寂しさを埋められるのではないか?
一時的にでも、寂しさを誤魔化し、楽に楽になれるのではないか?
そんな卑怯なことを考えてしまうこともあった。
だって俺は、それほどまでにずっと寂しかったのだから。
妻と体を重ねて、現実逃避をして、楽になったって妻は俺を責めやしない。
もう死んでいる人間が、生者を責められるはずもない。
雨乃「霧野さんっ………」
雨乃「好きだった、……ずっと前から……」
雨乃「姉さんと結婚して、乃愛ちゃんが生まれても諦められなかった」
雨乃「ずっとずっと霧野さんのことが好きで、仕方がなかった。」
雨乃「ねぇ、俺じゃだめなの、?」
霧野「お、俺は、……」
霧野「今でも妻が好きだ。愛している。」
霧野「その気持ちを抱えたまま、妻とよく似た君を受け入れることは出来ない」
霧野「だってそれは、雨乃に対しても、失礼なことだから、………」
そうだ。雨乃を妻の代わりにするなんて最低だ。
妻に対しても失礼なことだ。
あぁ、俺はなんて卑怯で最低なんだろうか。
僕は最低だ。自己嫌悪で吐き気がする。
雨乃「俺、いいよ………」
雨乃「姉さんの代わりでもいいよ」
雨乃「だからお願い、霧野さん」
雨乃「俺とキス、してください」
霧野「そんな、……ダメだよ………」
霧野「それをしたら俺は自分で自分を許せなくなる」
霧野「一時だけ夢を見て、実際には更なる泥沼にハマるだけ」
雨乃「逃げたっていいんだよ」
雨乃「現実逃避だっていい。弱くてもいい」
雨乃「卑怯でもいい。最低な貴方でも愛してみせる」
雨乃「霧野さん、どうかもう自分で自分を責めないで」
雨乃「貴方はもう充分苦しんだよ」
雨乃「だからもう、楽になってもいいんだよ」
霧野「…………きっと俺は、雨乃を本当の意味では愛せない」
霧野「君に妻の面影を見て、代わりにする」
霧野「君はそれでもいいのかい」
雨乃「うん、いいよ」
雨乃「いつか本当に好きになって貰えるように頑張るよ」
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続く