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彼女の自責。
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この惑星に何百と分かれる国を統治する神がいた時代。
沈黙の城がまだ、楽園として機能していた時代。
あの四神の古代魔法の継承が途絶えだ時代。
時空と感情、創造と破壊の気まぐれによって神者 たちが生まれたあの時代。
初代感生の子が生まれる
少し前の物語。
ー神心座の楽園ー
「レタリー、聞いたかイ?新しく余らの仲間ができたんだヨ。」
私が彼の話を伺ったのは休憩の間もない仕事の時間。
「…仲間、ですか?」
「ウん。ファイルナの神者が現れたのサ。」
「わー!おめでとうございます、ですね! 」
手だけを休め拍手する私とは裏腹に、少し不安が漂う瞳で双子神様は言った。
「…感情表現の苦手なあの子ガ、感情豊かな人間の子を神者にするなんてネ。」
「コれはいい兆しかもシれないよ、テサイ。」
多様な神々が存ずるこの世界の中心でお二人はそんなことを気にしていた。
「面倒だけド、レタリーが色々と教えてあげてネ。センパイなんだかラ。」
「承知致しました。」
私は四神様の神者としては二番目に造られた存在だった。創造神様のハクウと並び、この楽園では中枢管理を任されている。
双子神様からの命令は絶対であり、面倒だと思ったこともない。それなのにお二人は今回の任務を 面倒だけど と前置きした。
今までと同じことをするだけ。
そう思っていた。
ファイルナ様は神の中でも少し異質で、創造神様に匹敵する力を持ちながら人間の感情に固執する方だった。
だからこそ、人間が神者になれたのかも知れない。
「貴方がフェリーダさん…?初めてまして。双子神様に仕える、秘書と管理の神者・レタリーと申します。」
彼もまた、泣きたくなるような美しい翼を持つ異質な存在だった。
はじめまして。ルナの友達、自由と愛の神者・リスタ・フェリーダだよ。
その声も透き通っていて事前に聴かされていなければ、人間だと気付けない声色だった。
ファイルナ様をルナや友達と呼ぶその姿勢や、自由の肩書きを背負う責任は神者として文句のない立ち振る舞いだった。
フェリーダは愛を誰よりも知っているらしく、その分野について双子神様は博識な子と称していた。
…何より彼と話すと気持ちが楽になる。
そんな人間だったから、私たち神者も、神々も彼を暖かく向かい入れた。
あんなことさえ…起きなければ
「…レタリー。キミのせいじゃなかっただろう?。コれは余を含めた全神の責任だ。」
「シサイの言う通りサ。この悲劇はただのドラマじゃないんだかラ。」
だけどっ…。私は、ファイルナ様に…彼に対して何もできなかった。
双子神様は私の気持ちを察するように側にいて下さった。
「…花は枯れるものです。でも、なにか、ナニカ行動を起こせたんじゃないかって…。」
声を震わせて私は嘆いた。
お二人に。
神々に。
自分自身に。
「人の痛みが分かったら…。」
「…。レタリー、余らは神だ。ハクウやフェリーダと違ってね。」
と、数分後シサイ様がお口を開かれた。
「人間は人の為にト、偽りの笑顔を作ってしまう生き物ダ。」
「他人ばっかりで、自分の儚い夢を蔑ろにするくらい。 フェリーダだってそうだった。」
一呼吸置き、私が納得するまで待って下さった。その表情は後悔や、同情といった暗い感情を宿す眼差しで。
「だからネ、余らにはその答えは出せなイ。…けどネ、フェリーダは誰かの味方になりたかったんじゃないかナ」
味方…?
「最後までファイルナに味方したからフェリーダはコうなってしまったけれど、」
「最後まで諦めなかったのモ、彼だっタ。」
味方とは誰かにとって敵になる覚悟ガあるっていうことサ。
愛と自由を知ってる彼だからこそ、自分自身の運命を受け入れた。
レタリー、それは神者としテ誇れることなんだヨ。
ダから…。彼の勇姿を讃えよう。コのことを繰り返さない為に。
ファイルナ様に起こったことを重く受け止めながらも、誰よりも早く双子神様は前を向く決断をした。
…それは知力による分析か、悲しみによる反動か分からないけれど。
ならば、今度は私が次の世代の誇りにならなきゃ。
「レタリー、落ち着いたかい…?」
そう。彼の…フェリーダのように。
「…分かったヨ。」
え…?ファイルナは無感情神でしょ?どう言うことなんですか?
…。話さなきゃ。私が、彼のことを…!
「大丈夫だよレタリー。感生の子供達にはしっかり伝えなきゃね。」
…あぁ。
「これは余ら神々ノ、責任なんだからネ。」
貴方様達が背負うことないのに…。
私は、まだ、
…私だけが、まだ、立ち直れてないんだ。
ーーーレタリーの自責。 Fin。