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枯れない花。
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「んっわぁ〜♡!秀蘭、この花も可愛いわね!」
「うん、ミモザっていうの。黄色くて、丸々としてて、なんか夏希っぽいなって。」
ミモザ。秀蘭が出す花はどれも素敵で、特にこの花は私らしいと笑いかけてくれたもの。
匂いは…私にはちょっぴり分からないけれどきっと優しい香りな気がする。
秀蘭のように。
「なんで私っぽいの?」
「木にできる花だから私よりお姉さんっぽい夏希かなって。」
「そっか、ありがとね。」
けど…私は気づいてる。
こうやって花の話をするとき、秀蘭はいつも寂しそうな目をする。
一面に広がる花畑なのに蜜蜂がいないような
名前が知られてない、道端の花のような
そんな寂しい目。
「…夏希、どうしたの?私の目…変?」
「っあ、ごめん!秀蘭!なんでもないの!」
「…教えて?言いたくないなら…いいけど…」
そう言って私の手に触れる。
暖かい太陽のような人。私みたいな雨を降らせないと輝かない夕立とは反対の人。
でも、その太陽に被る雲を少しでも霞められたら…
「…秀蘭ってさ、花のことになるといつもよりお喋りになって楽しそうだけど、なんか寂しそうっていうか、そんな風に感じるのよね。」
「…寂しそう、か。」
秀蘭は驚いたような顔と共に、心当たりのあるような声で復唱した。
「…。夏希なら、話してみようかな。」
ミモザの花が揺れた。
それと同時に秀蘭が話し始める。
「小さい頃たった一人の友達がいたんだ。その子も花が好きだった。よく裏林の花畑に行っては花冠を作ってくれた。」
何か大切なモノを押し殺すような、思い出したくないような、雰囲気を纏い淡々と秀蘭とそのお友達さんの出来事を話す。
「私の能力を個性と唯一思ってくれた友達。」
「その子は?」
ミモザの花が一つ溢れる。秀蘭は動じずに首を横に振り
「…私が水を与えすぎて、枯れちゃった。」
「っ…。そう、ごめんね…。」
「あっ、ううん。私もごめん。」
私たちを割いて強い風が吹く。 この空気の 気まずさ、大切な人を失ったことへの同情、秀蘭の特別な友達という嫉妬…。色んな感情が溢れてはかき消され、消えては浮かび上がる。
秀蘭が隠そうとしていた大切なモノを私が抉ってしまった。
「…私が考えなければ、普通の子だったら、…生まれて無かったら、あの子は今でもきっと花を教えてくれたんだろうな…。」
秀蘭の弱音に気づいてパッと横を見ると、秀蘭は手を握り締めすぎて血が流れていた。
それがミモザにも少し垂れる。
「しゅらっ!ダメ!見せて。」
ぎゅっっと私は秀蘭の手を握る。
「あぁ…ぅん、ごめん。気づかなかった。」
「…次からは無しよ」
なんて私だって言える立場じゃない。
きっと秀蘭と私の自責は似ているから。私だって大切な人を自分のせいで…、
「夏希もだもんね。…涙、出てるよ。」
心を読まれたかと疑うほど秀蘭は優しい目で私の顔をのぞいた。
今泣いてるんだ…私…。
「…最後にオハイアリイっていう花をあの子は教えてくれたんだ。」
「オハイアリイ…?」
無理矢理変わった話題は私を慰めるつもりなのか初めて聞いた言葉でもしっかりと聞き取れた。
「うん。…輝く個性とか、生きるとかが花言葉の花火みたいな花。一度だけ二人で見た。」
「そうなんだ…。いい花言葉ね。」
秀蘭の目はまだ、寂しさが宿っている。
でも、優しさだってまだある。
「…秀蘭。私たち…友達よね、?」
その優しさを作った 秀蘭の友達。そんな話を聞いたら…不安になってしまい、つい聞いた。
「もちろん。」
でもこの不安をも肯定する太陽に私は安心を覚えてしまう。
「…そうだよね。ごめん。」
「夏希、いつもありがとう。」
「んっ〜もう!秀蘭ほら!手当てするから手見せなさい!」
「やっぱりお姉さんだね、夏希は。」
大切な人を傷つけて、自分自身を呪った私たちは…
友達という花を好む、ただの蜜蜂なのかな。
ミモザが風になびいていた。