叶から電話がかかってきたのはそれから数日後のことだった。だが、運悪く配信中だったので出ることはなかった。
正直出る気もなかったが。
それから数日の月日がすぎた。
お互いの想いを伝えあってから一年。ちょっと前までは彼がいない日など考えられないくらい一緒に時間を過ごしていたのに。
なんでこんなことになっちゃったんだろ。ほんとばかだな、俺。
ブブ…
仕事用スマホのバイブレーションだった。
見るとマネージャーからの連絡だ。
ローレンイロアス 様
いついつにくろなんの収録入りました。3Dで現場入りです。よろしくお願い致します。
マネージャー
まじかよ。。。はぁー。
仕事に私情を持ち込むわけにはいかないが、どう頑張っても今の気持ち的に無理そうだった。
はぁーー、ガチで断りたい。
しかし、今までくろなんには何回かお邪魔させてもらったことがある手前、いまさら私情で断るわけにはいかない。
やっと重い腰をあげ、了解です、と短い返信を送った。
「いやー寒いね」
「っぱもう秋ですからね」
「葛葉は最近あったかいものなんか食べた?」
「んー、カレーかな」
「こういう時あんまカレーって言わないけどね笑」
「せーの」
「「くろのわーるがなんかやる。」」
ついに始まってしまったくろなん収録。この日が来ないで欲しいとどれだけ願ったことか。どんなに嫌がっても収録は進み、とうとう自己紹介を求められる。
「そしてー?」
「どうもー😄ローレンでぇす」
「よろしくー」
「ローレン最近なにしてるの?」
「あー自分は結構バロラント、ハマってますね、再熱というか。」
「そうなんだ」
葛葉は相槌をしてくれたが叶は黙ってカメラを見ている。反応してくれない感じね。りょーかい。
「興味なさそうじゃない?!」
「笑笑カットされるぞ、ここ」
「自己紹介、名前だけマ?!」
葛葉とそんな会話をし、なんとか険悪な雰囲気を隠す。
「あれ、そう言えばかなえも最近バロやってるって言ってたよな。」
葛葉が叶に話をふる。
「あーうん」
あからさまに興味のない口調で答える叶。
そんなに俺と会話したくないのかよ。
「へぇーまたランク行きましょ。」
「…」
無視かよ、、、、
「ま、まあよくきてくれたねローレン」
くっさんがきまずそうに話をもとに戻す。
しかし、収録が進んでいくにつれて、俺と叶はどんどん最悪な雰囲気になっていった。
「じゃあ叶はー、」
葛葉が進行する。
「葛葉がいい」
「いやでも流れ的にローレンと組んだ方が、、」
「やだ」
その言葉にカチンとくる。
「じゃあ俺もいや」
「えー、、、」
明らかにくっさんが困ってる。
なかなか決まらないチームわけにスタッフも狼狽はじめる。
「一旦、休憩挟みますか」
「そうっすね、」
はぁー無理だ。叶とまともに話せない。そもそもあいつが浮気してんのが悪いよな。
そう考えているのが伝わったのか否か、くっさんが俺に声をかけてくれた。
「ローレン、ちょっとこっちで話すか」
「…っす。」
少しみんなから離れたパイプイスに並んで腰掛ける。
「叶とうまくいってんの?」
「…いや、そんなにうまいこといってなくて」
「だよな笑今日の二人見てたら勘付くわ」
「ですよね、ほんと迷惑かけてすんません」
「なに、なんかあったん?」
「いや、あの、浮気されてて、、」
「え?叶に?」
「、、はい」
「うそ。叶いっつもお前との惚気話しかしないよ?笑
それにお前と付き合ってから他の男と、それこそ地元の友達とかとも飲みに行ってないみたいだし、結構一途じゃん?
なに勘違いしてんのか知らないけど、話してみてくんない?」
「そうっすね、、、この前の◯日に電話かけて出なくて、その次の日も出なくて、ラインとかもないしってなって他の男と喋ってんのかなって….深夜に」
事情を全て話すと急に葛葉が笑い出した。
「っwwwwwwwwwwwwww!!!お前おもろすぎだろwww 」
「いや、俺は真剣に…!」
「それ、wwwwwwその相手の男www、俺な?」
は?思わず口が開く。脳内が一瞬でショートしたみたいだった。
「だーかーら、俺だよ、それ笑◯日でしょ?その日からずっと叶と俺は、叶が、バロのランク落ちちゃってぇ彼氏とランク行けないから練習付き合ってって言われてたんだよww」
「え゛?? 」
「それなのにお前www喧嘩してせっかく二人で行けるようになったバロの試合断られるとかwwwwwwあっははwwwwwww腹よじれるwwwwww」
じゃあほんとに俺の勘違いってこと?くっさんなら浮気とかじゃないししかも誘う理由俺とランク行きたいって、、、
「ガチでやったわ…」
「あっははwwwwwwwwwおもろすぎだろwwwwww…..はぁはぁ、、はよ仲直りしてこい。」
「はい、してきます。ほんとにお騒がせしてすんませんでした。」
そう言って椅子から立ち上がり、叶が休憩しに行った楽屋へ足を踏み出した。
continue…
次回完結
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