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なの

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unknown
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白黒猫

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「….はぁ……死ぬかと思った。あんなに怒鳴らなくてもいいじゃんかよ」
職員室から這い出してきた俺は、ぐったりと肩を落としていた。
学年主任の説教は一時間近くに及び、「入学 早々、屋上で爆音を鳴らすとは何事だ!」と耳にタコができるほど聞かされた。
「お疲れ様、若井くん。ほら、冷たいのでも飲みなよ」
廊下の影で待っていてくれた藤澤先輩が、自販機で買ったばかりのスポーツドリンクを俺の頬に押し当てた。
「ひやっ!….冷たっ。先輩、待っててくれたんですか?」
「放っておいたら、君、またどこかでギター弾き出しそうだったからね」
先輩は苦笑いしながら、俺の隣を歩き出した。向かう先は、もちろん旧校舎の音楽室。
「約束、覚えてますよね?」
俺がボソッと呟くと、先輩の足がピタッと止まった。
「…..本気だったの?さっきの」
「当たり前ですよ。俺、嘘はつきません。先生に謝ってきたんだから、次は先輩が俺に付き合う番です」
音楽室の扉を開けると、そこにはまだ大森が残っていた。窓枠に腰掛けて、相変わらずノートに何かを書き殴っている。
「….遅い。もう帰ったかと思った」
「悪い、大森!先生の説教がライブのMCより長くてさ」
俺はギターを担ぎ直し、ピアノの前に立っている藤澤先輩を振り返った。
「さあ、先輩。ここに座ってください」
「…若井くん。さっきも言ったけど、僕は譜面がないと弾けないんだよ。それに、僕のピアノは…..君たちの熱い音を邪魔しちゃう」
先輩は、鍵盤に触れるのを躊躇うように指を丸めた。その指は、完璧な技術を叩き込まれてきた、綺麗すぎる指だった。
「邪魔かどうかなんて、鳴らしてみなきゃわかんないって!大森、こいつの『サビ』、もう一回いけるか?」
大森はノートを閉じ、俺と藤澤先輩を交互に見た。
「..いいよ。藤澤先輩、コードはこれ。あとは、自由に弾いて」
大森が短いフレーズを口ずさみながら、ノートの端に殴り書きしたコード進行を先輩に突き出した。
「自由、に…..?そんなの、やったことない
よ..」
「大丈夫、俺がガイドしますから!先輩、信じてください。俺たちの『音」を」
俺は先輩の背中を、半ば強引に押して椅子に座らせた。
観念したように、先輩が鍵盤に手を置く。真っ白な指が、カタカタと小さく麗えていた。
「いくぞ!ワン、ツー、スリー、フォー!」
俺がギターを掻き鳴らし、大森が鋭いリズムを刻む。 最初、先輩は迷えるように、小さな音でコードをなぞるだけだった。
「先輩!もっと!もっと自分を壊していいんです!」
「 ……っ、壊す….?」
「親の顔も、生徒会の仕事も、全部忘れて!今、ここで鳴らしたい音だけ出してください!」
俺が歪ませたギターで先輩のピアノを煽り立てる。
その時、先輩の目つきが変わった。
「……..あ」
先輩の指が、突如として鍵盤の上を激しく踊り始めた。
それは、クラシックの優雅な旋律じゃない。
どこか悲鳴に似た、でもとてつもなく美しい、爆発するようなピアノの音だった。
(….うわ、なんだこれ….エグい!)
大森の目が、驚きで大きく見開かれる。
俺たちの音が、先輩のピアノに飲み込まれ、そしてまた弾き返される。
不協和音スレスレの、危うくて、圧倒的に自由なセッション。
「…..っ、あああ!!」
先輩が叫ぶように最後の一音を叩きつけた。
音楽室に、強烈な余韻が残る。
「 …すご…..」
大森が、ギターを持ったまま呆然といた。
「….あは、ははは!なにこれ、すごい….。指が、勝手に動いちゃった……」
先輩は、自分の手を見つめながら、子供みたいに笑い出した。その目には、少しだけ涙が浮かんでいた。
「言ったでしょ、先輩。あんたのピアノは、叫んでるって」
俺はギターを置いて、先輩の肩を叩いた。
「どうだ、大森。これでもノイズか?」
大森はフィッと顔を背けたけど、耳の先が少し赤くなっている。
「……天才がもう一人増えただけだよ。…三人でやるのも、悪くないかもね」
「よっしゃ!!」
俺の叫び声が夕暮れの校舎に響き渡る。
窮屈な制服も、怖い先生も、もうどうでも良かった。今、この瞬間、最強のバンドが産声をあげたんだ。
「藤澤先輩、俺たちと一緒に、最高に正しくない音、鳴らしましょうね」
俺が手を差し出すと、先輩は少し照れくさそうに、でも力強くその手を握り返してくれた。
「…うん。よろしくね、若井くん、大森くん」
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コメント
2件
**「……うわ、すごかった🔥」** 第9話、めっちゃ熱かったわ!若井くんが説教くらってまで先輩を音楽室に連れてったの、ちゃんと約束果たすとこがかっこいい。そして藤澤先輩が「壊す」って言葉で解放されて、あの爆発みたいなピアノ——「叫んでる」って表現がぴったりすぎて鳥肌立った。三人のセッションシーン、頭の中で音が鳴ったよ。大森が「天才がもう一人増えた」って認める流れもグッときたし、バンド結成の産声が最高すぎる!次回500、もう待てないわ🔥