side.涼架
元貴が僕を見つけてくれた時から、たぶん僕はすごく惹かれて、だから元貴からの誘いに乗ったんだ。
仲間が出来て本当に嬉しかった。
だんだんと元貴のことを知るたびに更に惹かれて好きが大好きになって、なくてはならない存在になるまでは本当にあっという間だったよ。
元貴の家に行く約束をしていた僕は控室で待っている間に自分の腕を枕にしてウトウトしてしまっていた。
部屋に戻ってきた元貴は僕が寝ていると思ったんだろう、頬にキスをされた···でも僕はそのまま眠っていたフリをしていた。
実はこんな風にこっそりとキスされるのは初めてじゃないって僕は知っていたから。
移動中のバスで元貴で眠っていた時。控室で2人きりでいて眠っていた時。
元貴の家に泊まった時。
元貴は気づかれないようにしているつもりだろうけど、外ではそこまで深く眠れないから何回もされればさすがの僕でも気づく。
···けど、頬や額にキスするだけ。
ただそれだけ。
本当はもっとして欲しいのに、元貴はなんにも言わないしそれ以上は何も無い。
だからいつだって気づかないフリをしていた。
ほら、また元貴はなんにも言わずになんにもなかったことにした。
僕も気づかないふりをして元貴の家に帰る。元貴がその気ならそれでいい。
けど僕も何にも知らないふりして側にいるから。
夜ご飯は僕が作ったトマトパスタを2人で山盛り食べて、眠い、と訴えれば優しい元貴は案の定泊まっていく?と聞いてくれる。
先にお風呂に入りドライヤーを借りに洗面所に行くとお風呂場から元貴の苦しそうな声が聞こえてドアに近寄った。
「ん···はぁ、涼ちゃん···涼ちゃん···いいよっ···」
えっ···僕の名前を呼んでる?
明らかにその声はひとりでシている、淫らな声だった。
「俺も···好きっ···くッ···ハァ···」
僕のことを思って、ひとりで···?
しかも好きって言った···。
聞いていたことをバレてはいけないと、慌ててドライヤーだけもってリビングで髪を乾かして戻す。
そして何度も寝たことのあるお馴染みのふかふかのベッドに潜り込んだ。
今のはなに?どういうこと?
元貴は何を思って···考えれば考えるほど心臓がきゅっとなる。
元貴が寝室に近寄る気配がして僕は寝ているふりをする ···いつも通り広いベッドの隣に元貴が入って来た。
考えても何の答えも出なかった。
でもそういう対象として元貴が見てくれていて、好きと言ってくれて···。
嬉しくて、堪らなくて。
僕は眠っているふりをして元貴を抱きしめる。
きっと理由があるから元貴は何も言わない。
それを受け入れよう。
けど、僕は僕が元貴を好きな気持ちを我慢するのは辞める。
隣で気持ちよさそうに眠る元貴を眺めてそう決めた。
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