以下、キュンbrο
「ぼく、もっと赤城のこと触りたいんやけど…いい?」
「ふぇ…?!」
顔を真っ赤にして聞いてきたカゲツを前に間抜けな声が出た僕。
時間はおよそ20分前を遡る。
「久々に一緒に外食したらめちゃくちゃ楽しかったね」
「ぼくも楽しかった。あのお店のご飯美味かったしまた行こ」
「うん」
外食後の夜道。寒空の下では手袋必須だっただろうに忘れてきてしまったことを少し後悔した。
カゲツは寒くないだろうか、と横目に見るとダウンのポケットに手を突っ込んで歩いていた。
それを見て閃いた。
多分、漫画だったら自分の頭上に電球が出ていただろう。
いや、後悔じゃなくてチャンスじゃない?
寒いからっていうのを理由に手を繋いで歩けるドラマでよく見るアレじゃん。
思いついてから彼の方に手を伸ばして少しの躊躇いから行く先を彷徨わせて彼の細い腕をとった。
「なに?」
「寒いから手繋ご?」
「え、うん」
「はは、照れてるの?」
「照れてない」
嘘つけー、と言いながら手をとるとぎこちなく手を握り返してきた。
「あったか~。子ども体温」
「赤城が冷たいだけやん」
手を繋いで歩くとかそういう恋人らしいことは初心な彼の反応が楽しくて嬉しいからよくする。
といってもまだお互いに恥ずかしいからそれ以上に触れ合ったことはない。
歩調を合わせてゆっくり歩くこの時間は暖かくてちょっと擽ったくて心地いい。
帰宅後。
「そういうのってどこで覚えてくるん?」
「え?」
「寒いから手繋ごとかそんなん、ぱって出てこないんやけど」
「ドラマとか…?というか、素直にしたいこと言ってるだけだし…急にどうした?」
家についてコートを脱いでいると唐突に彼は聞いてきた。
「なんかさー、赤城から色々してくれるやろ。今みたいに手繋ぐとかハグとか」
「あぁ、確かに?」
「なんていうの、スマートにさらっとするやん。ぼくそういうの出来ないから」
ちょっとしょぼんとした様子で彼は言う。気にしているんだろうか。
「別に僕はスマートじゃないよ。あとさらっとやんなきゃいけないルールとかもないから気にしなくていいんだよ」
フォローするように言えばちょっと俯いてから顔を上げる。
「じゃ、じゃあ、言っていい?」
「うん」
赤らめた顔で僕の方を恥ずかしそうに見ながら言う。
「ぼく、もっと赤城のこと触りたいんやけど…いい?」
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