テラーノベル
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…
レコーディングスタジオの空気は、重く淀んでいた。
蛍光灯の冷たい光が、コンソールやマイクスタンドに反射し、部屋に無機質な雰囲気を漂わせる。
時計の針はすでに深夜を回り、スタッフもサポートメンバーも、藤澤涼架を含めて全員が作業を終えて帰宅していた。
スタジオには、若井と大森、二人だけが残っていた。
若井はヘッドフォンを握りしめ、ブースの中で何度も同じフレーズを繰り返していた。
ギターの音、歌のピッチ、リズム
――どれも完璧を目指して練習してきたはずなのに、
今日に限ってどうしても上手くいかない。
指先は震え、喉は乾き、頭の中は
焦燥感でぐちゃぐちゃだった。
「…もう一回、やり直します。」
若井は震える声で呟き、コンソールに向かって合図を送った。
だが、コントロールルームにいる元貴の反応は
なかった。
ガラス越しに見える元貴の姿は、椅子に深く腰掛け、腕を組んでじっと滉斗を見つめている。
いつもテレビやライブで見せる、ニコニコと愛らしい笑顔はそこにはなく、
代わりに冷ややかな眼差しがあった。
若井はごくりと唾を飲み込み、マイクに向かって再び歌い始めた。
だが、最初の音程がわずかに外れ、
すぐに自分のミスに気づく。
ブースのスピーカーから元貴の声が響いた。
「ひろと。」
その声は、低く、抑揚を抑えたものだった。
普段の元貴の、明るく軽快なトーンとはまるで別人のよう。
若井の全身に鳥肌が立つ。
背筋をビリビリと電流のような恐怖が走り、
膝がガクンと震えた。
思わず立ち上がったものの、
力が入らずその場にへたり込んでしまう。
「ひろと」――この声で呼ばれるとき、それは元貴が支配を求める瞬間だ。
若井はそれをよく知っていた。
長い時間を共に過ごす中で、身体に刻み込まれるように教え込まれていた。
この声で呼ばれたら、逆らうことは許されない。
反逆すれば――その代償はあまりにも重い。
「…元貴、俺、頑張ってる。練習もしてきた。本当に――」
若井の声は震え、言葉は途切れがちだった。
だが、元貴はブースのガラス越しに冷たく微笑むと、
ゆっくりと立ち上がり、コントロールルームから出てきた。
ドアが静かに開き、元貴の足音がブースに近づいてくる。
若井の心臓は早鐘のように鳴り響く。
「頑張ってる? それでこれ?」
元貴の声は静かだが、鋭い刃のようだった。
「コツコツ努力するのがお前の一番の武器だろ? 他の奴らと同じ土俵に立つにはそれしかないのに、なんでこんな簡単なフレーズすらまともにできない」
元貴は若井の目の前に立ち、身をかがめてその顔を覗き込む。
若井は思わず後ずさりしたが、
背中はブースの壁にぶつかり、逃げ場はなかった。
元貴の手が若井の顎を掴み、
強引に顔を上げさせる。
「俺、失望してるよ、滉斗。」
その言葉に、若井の胸は締め付けられるように痛んだ。
元貴の目は、まるで若井の心の奥底まで見透かすようだった。
恐怖と、どこかで感じる服従の感覚が
若井を支配していく。
「…ごめん、元貴。次は、ちゃんと――」
「次? もういいよ。」
元貴は若井の言葉を遮り、冷たく言い放つ。
「今日はもう終わり。帰るぞ。」
若井は小さく頷くしかなかった。
元貴の声には逆らえない。
それは、若井の身体に染みついたルールだった。
…
初めて書いたので日本語おかしかったり分かりにくいかもしれませんが…誰かに刺さってくれると嬉しいです🙌🏻
S貴さん大好きなんです🥹
まだ続きます
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コメント
1件
イヤーン大森サン厳しいな…!怖い…!でも怯えてる若井さん可愛いから見ちゃう