テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
48
翌朝、まだ薄暗い時間帯に、蓮はゆっくりと目を覚ました。
隣を見ると、凛がスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
起こさないようにそっとベッドを抜け出し、部屋に備え付けてあるトイレの中でスマホから兄が熟睡している事を外で待機しているであろう2人に伝え自分はいつでもドアが開けれるように入り口付近でそっと息を潜めてその時を待つ。
数分が一時間位に感じるような緊張の中、今から行くとのメッセージを受け、蓮は意を決して静かに扉を開けた。
銀次と東海の手元にはそれぞれ小型カメラが。ナギの手には小型のクラッカーが握られており、スヤスヤ眠る兄の目の前でそれを鳴らして驚かせようという算段だ。
ドッキリを仕掛けられた瞬間、兄は一体どんな反応をするのだろう? 驚いて大きな声を上げる?
それとも……? 期待と不安が入り混じる中、ナギたちを部屋の中に招き入れ、息を潜めたままベッドの方を指さし合図を送る。
「お邪魔します……。我らが鬼監督。御堂凛さん……。どうやらぐっすりと眠っているようです」
どこぞのリポーターのマネでもしているのか、案外ノリノリで息をひそめながら凛に近づいていくナギの姿が何だか可笑しくて、口元が緩んでしまいそうになるのを必死に堪える。
ナギたちが一歩、また一歩と凛に近づくにつれ、部屋の緊張感がどんどん高まっていくのがわかった。
息をするのも億劫になりそうなほどの重圧の中、ナギの指が上掛けに隠れている凛の布団を掴んだその瞬間――。
突然凛の腕が伸びてきて、ナギの手首を掴むとそのままグイッと引っ張られ、体勢を崩したナギの身体は、あっという間に凛の胸板の上に倒れ込んでしまう。
その動きがあまりにも自然で一瞬何が起きたのか理解できなかった蓮だったが、ハッと我に返ると慌てて二人の方へと駆け寄った。
「ナ、ナギ大丈……っ」
近寄った蓮が見たものは、凛がナギの腰をグッと抱き寄せ、顎に手を添えて強引に唇を重ねている姿だった。
「!?」
あまりにも衝撃過ぎて蓮の思考が停止する。
ナギは凛の肩を押し返すが凛の力が強くビクともしない。むしろ更に強く抱きしめられて身動きが取れなくなってしまったようだった。
「んーっ! ふ、ぅ……っ」
次第に酸素を求めて苦しくなったナギは、ドンドンと凛の背中を叩きながらなんとか顔を背けようと試みるが、凛はお構いなしに舌を絡ませてくる。
一体、自分の目の前でなにが起こっている? ナギと、兄が……? まさか……そんなはずは……。
混乱する頭の中を整理できないまま、蓮はただ立ち尽くしていると酸欠でくったりと力を失ったナギの身体を抱き締めながら、凛はようやく彼の唇を解放し、ゆっくりと目を開けるとカメラに向かって不敵な笑みを零した。
「……人の寝込みを襲うなんて、随分と大胆な事するじゃないか」
唾液で濡れた唇をペロリと舐めると、凛はニヤッと笑みを浮かべながらナギの耳をそっと撫で、こちらを見て固まったままになっていた蓮に視線を移す。
「わぁお……これは中々……面白くなってきましたねぇ」
「お、面白いか!? オレ、見ちゃいけないものを見た気しかしないんだけど!?」
真っ赤な顔をして銀次にツッコミを入れる東海の声でようやく我に返った蓮は、慌ててぐったりしているナギを引き離すと自分の眠っていたベッドへと寝かせ、凛を睨んだ。
「兄さん、起きてただろ!?」
「さぁ? 思い人が夜這いに来たのかと思って対応しただけだが? まぁ、別人だったが……これはこれで……」
「なっ!?」
口元を歪めて笑いながらシレっととんでもない事を言いだした兄の言葉に思わず面食らう。一体なにを言っているのかと、反論しようとするがそれよりも早く凛が東海の持っていたカメラを奪った。
「――ところで、俺の寝顔なんて撮ってどうするつもりだったんだ?」
「そ、それは……」
「それは?」
低い凄みのある声で尋ねられ、東海の身体がヒャッと小さく跳ねる。やはり怒っているのだろうか?
「いや、その……。ちょっと企画で……寝起きドッキリをしかけようかって事になって……それでその……」
「ほぉ? それでこんな事を? と、言う事は蓮。お前もグルだったんだな?」
しどろもどろになりながら、今にも泣きだしそうな顔をする東海から視線を移し、こちらをもう一度振り向いた兄の表情は相変わらず読めない。
「ま、まぁ企画の一環でさ……。盛り上がるかなぁって思ったんだけど……」
「で? 盛り上がりそうか?」
「あ、あんなのっ! 流せるわけ無いじゃないかっ!!」
ナギの唇を奪われたという事実だけでも腹が立つのに、そんな動画をUPなんて出来るわけがない。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!