テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#独占欲
#ワンナイトラブ
#溺愛
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
土曜日のオフィス街を彷徨い
行く当てもなく
行き着いたのは結局ファミレス
避けたはずのリュカとの邂逅
突如現れ
構える間もなく踏み込んで来たリュカが
終始言葉を失う私を圧倒する
「ほんと分かり易いな、瑠奈は」
「そんな顔してたら言ってるとの同じだぞ」
リュカのラインに返信もせず
顔を合わせれば言葉を失う
言われてみれば
明らかにこれまでと違う態度だった
何があって
DNA鑑定結果がどうなって
私がどんな心持ちなのか
そんなものは
リュカにはお見通しなのだろう
「ところで体調のほうは大丈夫?」
「そっちこそ大事にしないとね」
「あまり無理はしないように、体も心もだよ」
まるでDNA鑑定結果には触れず
あたかも普段通りの面持ちで
私の体調を気遣うリュカ
「……うん、大丈夫」
リュカの
あたかも普段通りの様相に
強張っていた表情筋がほぐされ
ようやく口角が動いた
私は
思い違いをしていた
依然としてリュカは
以前と変わる事なく
リュカはリュカのままだった
お腹の子は
純也との子だった
その事で
これまで築いてきたリュカとの全てが
完全に潰えたと思っていた
前提となる事実が
違った結果をもたらした事で
全てが変わってしまった感覚に陥っていた
その悲壮感と
時間に追われる焦燥感から
これまで
リュカとの間にあった信頼を
リュカが説いてくれた言葉を
リュカが解いてくれた凝り固まった運命を
その全てを
愚弄にも忘れ
自分の殻に籠り
一人で勝手に闇堕ちしていた事実に気付く
「リュカ、あのね——」
ようやくほぐれた緊張と口角筋が
ようやくほぐれた心を紡ぐ
私は
これまでの経緯を
家庭の現状を
純也の現状を
そして
今の私の想いを
余す事なく伝えた
あの日リュカと結ばれた前日
純也にされた横暴
それまでも
純也とは心通わぬ冷めた関係であった事
あの日リュカと結ばれた事で
どれだけ私が救われたか
私が何を想い
私が何を願い
私が何を思い描いていたか
そして
今現在の純也が
どんな状況にあり
今現在の私と純也が
どんな状態にあるのか
とめどなく
私の想いの丈を
余す事なく伝えた
それを
リュカは
真剣な眼差しで
黙って聞いてくれた
「——でね、DNA鑑定の結果はネガティブだった」
「本当にごめんなさい……」
「快く協力してくれたのに」
「だから——」
私の想いの丈を
余す事なく伝えても
変わる事のない現実
覆る事のないDNA鑑定結果
DNA検査のお願いを快諾してくれたリュカ
だからこそ
正直にありのままを伝えた
だからこそ
私は
思い描いていた
淡い未練を断ち
決断しなければならないのに
淡い未練を断ち切れずにいる
「……なるほどね」
「身重で心身共におぼつかない中で大変だったろう」
「よく頑張ったね」
(……?)
一通り話を聞いてくれていたリュカ
一通り聞き終えて発した言葉は
思っていた言葉とは乖離していた
何かを予想していたわけではない
だが
およそ常人では考えの及ばない
どの角度からの物言いなのか見当もつかない
そんな労いの言葉だった
「色々あり過ぎて思考が混乱しているんだろう」
「想いが錯綜して迷子になっているんだね」
「当事者なのだから無理もない」
「でもね、瑠奈は思い違いをしてる」
「言っただろ?信じろって、何があっても俺が守るからって」
「俺はあの時のまま今も何も変わってないよ」
「自分で解決できないなら相談しなきゃ」
「俺は何があっても変わらないよ」
「言っただろ?これからの未来を一緒に描こうって」
DNA鑑定結果が
純也との子を指し示しても尚
この人は何も変わらないの?
どうして
この人は何も動じないの?
私は
思い違いをしていた
DNA鑑定結果に狼狽して
思考が錯綜して
誓った未来とは
異なる未来を見ていたのは
私だけ
リュカは
何も変わってない
この人は
どれだけの苦難を乗り越えてきたのだろう
どれだけの苦難を乗り越えれば
こんなにも強くなれるのだろう
自信に満ち溢れ
困難にも揺るがない
言ってしまえば
他人事にもしてしまえる
それなのに
どうしてこんなにも優しくあれるの?
この人は
どれだけ器が大きいのだろう
リュカは
まるで一般論には収まりきらない
(そうだった……)
私は改めて思い起こした
初めて出生を打ち明けられ
人狼について調べ耽った時の事を
リュカは狼の血統を継ぐ人狼
リュカはいったい……
どれだけ人間で
どれだけ狼の血を継いでいるのだろうか
“ 狼は運命の番たるメスを追いかけ執着する—— ”
“ 狼は自分の子供に留まらず、群れに入った外部の子供にも保護行動を示す—— ”