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AM6:12 / コムドットの自宅 編集部屋前
カタ…カタ…カタッ……
静まり返った早朝の空気の中、
一人だけ、編集部屋でうずくまるように作業をしていたのは──○○。
でも──今はもう、編集なんてまともにできていない。
画面の波形も止まっている。手元のマウスは動いていない。
○○「う、ぁ……ぅっ……」
小さく、嗚咽。
右頬を押さえて、ぐしゃぐしゃになった顔で、涙が止まらない。
○○「いた……い……いたい……っ」
唇をぎゅっとかみしめ、
声を漏らすのを必死に堪えていた。
けれど、どうにもならない。
──痛み止めが、切れてる。
──もうストックも、ない。
○○「……(やばい、限界……飲まなきゃ……)」
立ち上がって、ふらふらと自室へ。
必死に薬箱を探すけれど、やっぱり空。
○○「(……ない。……もうない)」
崩れるようにベッドに倒れ込む。
涙が枕に染みこむ音さえ聞こえてきそうなほど、
静かで苦しい、早朝。
AM6:23 / リビング
ちょうど起きてきたのは、❤️やまとと💚ゆうた。
いつも通り、朝一で編集や準備に取りかかろうとしていた。
ふと、廊下の奥から小さく聞こえる、
“すすり泣くような声”。
❤️「……あれ、○○……?」
💚「なんか聞こえたな。泣いてね……?」
2人で顔を見合わせ、すぐさま○○の部屋へ向かう。
扉の前で、すうっと息を飲む。
コンコン──
開けると、そこには、
枕を抱きしめたまま、ぐしゃぐしゃに泣いてる○○。
💚「…………」
○○「──!!?」
咄嗟に体を起こし、
顔を拭って、すました顔を作る○○。
○○「……あ、朝早いね、2人とも」
💚「いやいやいや、○○」
❤️「……目、赤いよ?」
○○「……え、花粉。……たぶん」
❤️は一歩前に出て、両手を広げる。
❤️「──おいで」
○○「……え?」
❤️「早く。ほら、こい」
戸惑いながら近づく○○を、
やまとはそのまましっかりと抱きしめた。
○○「…………っ」
抱きしめられた瞬間、
堪えていた涙がまたぶわっと溢れ出す。
❤️「よしよし……歯が痛くて泣いてたんだよね?」
○○「……っ……なん、で……知ってるの……?」
心臓がドクドク言ってる。
怖くなって、呼吸が速くなる。
❤️「ほらほら、ゆうた。呼吸が乱れてる」
💚「ほんとだな。放っとくからダメなんだよ、俺らが」
○○「……痛くないし……」
💚「そっか。じゃあこれ、いる?」
ゆうたは懐から、
前に処方された痛み止めの1錠を出して見せた。
○○は咄嗟に奪い取るようにして、
水もなしに飲み込む。
💚「すっげ、反射で飲んだな」
❤️「やっぱり痛いんだね」
○○の体がビクリと震える。
❤️「……ほら、痛み止め飲んで、落ち着いたよ。なあ、ゆうた」
💚「うーわ、嘘ついてたんだ……」
○○「……ちが、違うの……!」
❤️は苦笑しながら、アイスの袋を開けた。
❤️「……アイス、買ってきたんだった。食べる?」
○○「……い、いい……」
💚「痛み止め、効いてるんでしょ?」
○○「……い、いらない……」
必死に顔を背ける○○。
でも──
❤️「ふーん。……ズボッ」
無理やり、アイスの棒を口に差し込まれた。
○○「あ゛う゛う゛う゛う゛う゛ッ!!」
一気にこみ上げる激痛。
冷たさが、虫歯に触れて──神経が焼けるような痛みに変わる。
❤️「あれ、効いてないんだ? 痛み止め」
○○「……やまとは、何がしたいの……」
❤️「……これが“今の○○の状態”だって、教えたかったの」
○○「……別に、痛くないし……」
そんな○○に、やまとは再び抱きしめた。
❤️「……ずっと痛かったんだよね?」
○○「………………」
すぅ、と息を吸ったあと、○○の体から力が抜けた。
❤️「……な、ゆうた。俺すごくね?
抱きしめただけで脱力したよ、今w」
💚「もー……そんなに痛いの? じゃあ、これもいる?」
ゆうたが取り出したのは──
歯科専門でしか処方できない超強力な痛み止め。
○○は迷わず、それに手を伸ばそうとした。
──でも。
❤️「ちょっと待って」
○○「……なに……?」
❤️「そんな強い痛み止め飲むくらい、歯痛いんだよね?
だったらさ、もう検診、受けようよ」
○○「……い、いらないって言ってるじゃん!!」
でも手はもう、薬をつかんで──
ごくっ、ごくっ。
○○「…………」
○○「(……いたく、ない……)」
💚「あーあ。飲んじゃったか」
❤️「……○○」
○○「なに……」
❤️「それ、副作用でさ。普通の痛み止め、
今後しばらく効きにくくなるよ」
○○「…………え?」
❤️「だからね。自分で市販で買うやつ、効かなくなるんだよ」
沈黙。
○○は目を見開いたまま、震えていた。
ゆうたもやまとも、
優しい顔のまま、でも逃がさないように○○をじっと見ていた──。
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