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「………太宰さん?」
「ん……なんだい……?」
「あ、良かった。全く動かなかったので……」
「そうかな?」
「そうですよ……」
「……つまり敦君は心配してくれたのか」
「まぁ、そうなりますね」
「御免ね。心配させてしまって」
「いえ」
「太宰さんが元気にいてくれるならいいんです!!」
「敦君……」
「君は本当に良い子だねぇ〜!!」
「わっ!」
カチカチと鳴り響く時計の針。
真っ暗になった窓の外。
只管にパソコンに向かう一人の少年。
それとは対比してだらけている一人の青年。
「太宰さん、僕もそろそろ帰りますよ?」
「敦君が帰るなら私も帰る〜!」
「資料は作り終わったんですか?」
「……終わったよ〜?」
「終わってませんよね?」
「終わったよ?」
「終わってませんよね!?」
「うぅ……」
「敦君、もう一寸ここに居てほしいなぁ?」
「厭です」
「ちょっ、行かないでぇぇ……!」
「厭です。帰ります」
「ねぇ、」
「っなんですか……?」
急に色のある声を響かせ、
少々驚く。
「お願い、もう少し」
「もう少しだけ」
「でも……」
「行かないで」
「………」
悲しい声色だった。
まるで、泣いて声が出にくい子供の様な、
何かを後悔している様な。
「……今日だけですよ」
「あぁ……有難う」
「やっぱり、君は優しいね」
「……まるで彼奴がここに居るようだ……」
「……?何か云いました?」
「いいや?」
「昔の友人を思い出しただけさ」
「太宰さん、友人とか居たんですね」
「あぁ、君の様に優しい人だった」
「人一人すら殺せない様な」
「優しい人だった」
「……」
太宰さんの表情は、酷く悲しいモノだった。
今にも泣き出してしまいそうな。
「……太宰さん」
「なんだい……?」
「一寸、目を瞑ってください」
「目?こうかい?」
太宰さんの綺麗な額に
そっと接吻をした。
「え……?」
「!あっ、すみません!厭でしたよね……」
「……」
「真逆其方からしてくれるとは……」
「今日は良い日だね」
「あ、え……?良い日……?」
「あぁ、良い日だ」
「敦君に会えて、接吻も出来て、」
「良い日だ」
「そ、其れは、良かったです……?」
「ねぇ敦君」
「な、なんでしょうか?」
「少し、聞いて欲しい事があるんだ」
「はい……」
太宰さんは少し頬を紅らめ、そっと僕を抱き締めた。
そして僕の耳の近くで一言。
「好きだよ」