テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
初投稿となります、名無と申します
よろしくお願いします!
初投稿として短編集を出してみました
cp無しほのぼのもcp(R系描写なし)もちょい不穏系も書きます
そして、初回に選ばれたのは英×海です
付き合ってはいません
では、話も早々に本編どうぞ
イギリスさん視点で進んでいきます
「……イギリスさん、どうされたんですか?」
一人で波止場にいた私に声をかけたのは、可愛い愛弟子。
「どうもしませんよ、海さん。ただ海を眺めていただけです」
そう返すと彼は隣に来て、一緒になって海を眺め始めました。
「陸から見る海も綺麗ですね」
「そうですねぇ、やはり船の上から見る機会の方が多いですから、そう思うのでしょうね」
そこで会話は終わり、聞こえるのは波の音だけ。その静かで力強い音が、空間を支配しているようにも思えます。すると、彼は思いついたように言いました。
「そうだ、イギリスさん。小指を出してください」
「小指、ですか?」
「はい、小指です」
その言動の意図がわからず、おずおずと小指を差し出しました。すると彼は自分の小指を出し、私の小指に引っ掛けるようにして握りました。
「……これは?」
小指から視線をあげると、明らかに先程よりも表情が柔らかくなっていました。物珍しそうにする私が面白かったんでしょうか。
「これは俺の国……日本にある文化、といいますか。なにか約束をする時に、相手と小指で約束を交わすんです」
小指で繋がったお互いの手を何回か小さく上下させてから、すっと離して照れくさそうにする彼。
「約束を忘れないようにとか、破らないようにとか、なにか意味があったと思うんですが……俺は忘れてしまいました。なので、今回は約束を破らないため、とさせてください」
「ほぉ、そのようなものがあるんですね。……して、これはなんの約束なのですか?」
肝心な部分を聞くと、優しい笑顔を浮かべて答えてくれました。
「それは、えっと……。戦争が終わって一段落ついたら、日本に遊びに来て欲しいんです。そのときは、二人で一緒に───────」
瞬間、頭に襲う鈍い衝撃。
ガバッと体を起こすと見えたのは、私を見下げる呆れ顔と、私を叩いたであろう丸められた雑誌。
「……フランス」
「イギリス、君はいつまで寝てるのさ。もう飛行機は日本に着いたよ。」
……あぁ、そうでした。私はたまたま日本に行く予定があったフランスと一緒に、日本行きの飛行機に乗っていたんでした。
「……寝ていたんですか、私」
「そりゃぁ、もうぐっすりと。長時間のフライトだから疲れるのは分かるけど、降りる時間は考えて寝るようにしなよ?」
「それができたら苦労しないんですが」
「ま、そうだけど。ほら、飛行機降りるよ」
私を置いて飛行機を後にするフランス。やっぱり彼は薄情です。
……久しぶりに夢を見ましたね。なんだか、とても懐かしい。
まだぼんやりとする頭を無理やり起こして、飛行機を降りました。
フランスは日本にいる旧友に会うらしく、空港で別れました。
つまりは、今私は一人で歩いてます。フランスといるよりは、一人の方が落ち着くのでいいのですけど。
静かで美しい道は、歩いているだけで気分が上がります。日本は本当に清潔ですね。……その気分だけで、荷物の重さは誤魔化せませんが。
すると、急に吹かれた風に乗って何かが舞い始めました。ふと風の吹く方に目線をやると、優しい桃色が目に入ります。
「……桜でしたか」
足を止め、桜を見上げます。ふわり、と空中を漂う花弁を掌で優しく受け止め、それを眺めていました。
「やはり、美しい」
そう口にすると、浮かんだのは愛弟子の顔。彼の瞳は、赤く美しい色でした。その目は少しツリ目で、とても不器用で。猫耳が見えた時は、とても恥ずかしそうにして──。
刹那、視界が歪み、掌に雫が落ちます。花弁を濡らして、また一つ、また一つとその数は増えていきました。
「……あれ、何故でしょう」
雨が降っている訳でもないのに、どこから……?
…………いえ、これは愚問でしたね。
泣いているだけです。ただ、私が。
「泣くなんて、いつぶりでしょうか」
目に溜まった涙を拭いながら、自嘲気味に笑いました。最後に泣いたのはいつか、なんて事はもう記憶にありませんから、その自問に答えは出ません。ですが、今泣いているのは事実。
「……やはり、怖いんでしょうね」
私が日本に来た理由。それは、日本さんたちに会うため───────基い、誰が生存しているかを確認するため。
私が戦後日本に訪れるのは、これが初めてです。陸さんが生きているのは知っていますが、他に誰かが亡くなっているのかは知りませんし、知る術もありませんでした。
私は連合国側であり、日本の立て直しを全面的に任されたのはアメリカですから。
もし、もしもの話ではありますが、日本家に行って、愛弟子やその弟さんの訃報を聞くことになるならば…………あぁ、耐えられる気がしません。
夢でみた彼との約束を思い出して、また掌の花びらを見やります。
「……最初に約束をしたのは、貴方ですよ。破らないための、小指の約束なのでしょう?きっと守ってくれると、信じていますからね」
そっと花弁を摘んで、それよりも優しく、そっと口付けを。
「さて、そろそろ行かねば。待たせては悪いですからね。」
道を急ごうと、荷物を持ち直します。
……その時、聞こえてきたのです。
「────イギリスさん?」
海のように透き通った、私を呼ぶ声。待ち焦がれていたこの声の持ち主は、私の知人の中では一人だけ。
振り返ると、最後に見た服装と似たような装いで、彼は立っていました。全く、戦争が終わってもそんな服を着ているのですね。服装には気をつけなさいと、散々言ったのに。
「……海さん、」
「っ、!イギリスさんッ!」
彼は柄にもなく、走って私の胸に飛び込んできました。あまりの勢いに後ろに倒れそうになりましたが、どうにか持ちこたえます。そして、自分に抱きつく彼を見ました。
今にも泣きそうに、目を潤ませています。会ったばかりの時は無表情にも等しかったのに、そんな表情を見れる日が来るとは。
……なんて、そんな事を言っている場合ではありませんね。
「海さん、どうしてここに?」
「俺は少し散歩に出ていて、戻ってきたところで……イギリスさんこそ、どうして日本に?」
「あら、陸さんからお聞きになっていないのですか?今日、あなたの家に訪問する予定なのですが」
「えっ、そうなんですか!?聞いてもいませんよ、そんなの」
……あの人、また重要なことを伝えていなかったんですか。まぁ、仕方ないですね。重要情報を「そういえば、」で伝えるような方ですから。
……おっと、それよりも彼に言うことがあるでしょう。
「……海さん、生きていらっしゃったんですね」
「はい。戦場には行きましたが……どうにか生きながらえて、今もどうにか生きています。俺もそうですが、弟も。全員、生きています」
安心からか、体から力が抜ける感覚がしました。戦争に駆り出された全員が生存している……その情報だけで、十分ですよ。
「戦争が終わったあとも自衛隊の事で忙しく、イギリスさんに手紙すら送れませんでした。それで、今の今まで知らせられなかったんです。すみません」
「いいんですよ。今生きていると知れた、それだけでいいんです」
私は精一杯の笑顔で、彼に伝えました。
「……本当に、もう一度会えてよかった」
私の言葉に彼は安堵のため息を漏らし、私に抱きついたまま離れなくなってしまいました。私自身、まだまだ子供らしさの残るその行動を可愛く思ったので、優しく抱きしめ返し、頭を撫でてやったりしました。聞こえる音といえば、桜が風に揺られる音くらいでしょう。
そうしていると、ふと彼はそっと私から離れました。口元を手で隠しているその顔は、とても赤く見えます。
「…………すみません。その……抱きついてしまって。嬉しくなって、つい」
昔は見られなかった多彩な表情に、私の方がなんだか嬉しくなりました。
「ふふ、いいですよ。私もなんだかそうしたい気分でしたので」
私の返事に少し照れくさそうにしていた彼は、あの日のように優しい笑顔を浮かべました。
「……イギリスさん、覚えていますか?」
「あの約束のことですか?もちろん覚えていますよ。戦争が落ち着いたら、日本に遊びに来てくださいと。」
「……そのときは二人で一緒に、桜を見に行きましょうという約束も、覚えていますか?」
「Of course.忘れるわけがないでしょう。大切な愛弟子との約束ですからね」
つい母国語を出してしまいつつそう返して、桜の並木を見やります。海さんは一緒になって、桜を眺めてくれました。
桜を眺めるだけの無言の時間でさえ、とても愛おしい。貴方が隣にいてくれることの嬉しさがどれ程か、言葉では言い表せませんね。
心地いい無言の空間を堪能していると、彼が言葉を発しました。
「イギリスさん、日本にはいつまでご滞在される予定なのですか?」
「今日を含め、一週間程ですね」
「あの、よかったらなのですが。その一週間のどこかで、一緒に……二人で花見に行きませんか?丁度、桜が見頃なんですよ」
「おや、私でいいのですか?」
「……俺は、イギリスさんがいいんです」
「ふふ、わかりました。では、スケジュールは話しながら決めましょうか」
不安そうにしていた顔がぱぁっと明るくなり、嬉しそうに隣に来てくれる彼。そんな所も、とても愛らしい。やはり、日本の方は可愛らしい方ばかりですね。
「イギリスさん、荷物持ちますよ」
「ありがとうございます。では、これをお願いしても?」
「はい!任せてください」
荷物を少しばかり任せて、予定を決めながら歩き出します。二人で、足並みを揃えて。
そんな私たちを見守るかのように、桜がふわりと揺れていました。
3500字程度を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
さて、お話の方はいかがでしたでしょうか
実は指切りは英語圏……つまりイギリスにも似たようなものがあるのですが、子供のする約束事なので、長い時を生きるイギリスさんは忘れていたということにしておいて下さい
海さんが指切りを知っているのは、お話にもある通りまだまだ子供っぽい部分が残っているからということに……。やはり戦時中なのであまり年上に甘えられず、子供心が残っているということでお願いします
誤字脱字があるかもしれませんが、フリック入力に慣れていないので暖かい目で見守ってやってください
面白かったら、次回も読んでいただけると嬉しいです。次回は枢軸×☭でコメディ書きます
私はこの辺りで失礼します。それでは〜
コメント
1件
【感想】 初投稿とは思えないほど、心理描写が繊細で美しいお話でした…! 特に、小指の約束のシーンと、桜の花びらにそっと口づける場面が胸に沁みました。イギリスさんの「泣いているだけです」という気づきの一文が、彼の長い時を感じさせて切なかったです。再会できて本当に良かった…! お二人の足並みを揃えるラストに、じんわりと温かくなりました。続きのコメディも楽しみにしていますね🌷
611
246
385