最近、変だ。
二人はメンバーで、友達で、家族以上で…
今年はミニアルバムを出すことになった。
入れ込む曲はもうほぼ出来上がってたけど、最後に入れる曲だけが全然出来ていなかった。
BFFみたいに二人に贈る曲を描きたかった。
今度は感謝じゃなくて、気持ちとか想いとかを表した曲を描きたくて、描き始めた。
最初は溢れるように言葉が出てきて止まらないくらいだったのに、自分の気持ちとか出てきた言葉とかを見つめるうちに違和感が大きくなってきて、分からなくなっていった。
大森「全然書けない…」
焦った俺は三人だけでスタジオに入れるようにしてもらって、改めて二人への気持ちを見つめ直すことにした。
二人にはミニアルバムの事で細かいところを詰めたいと言って呼び出し、俺の真意は言わないことにした。
若井「元貴、曲、煮詰まってるの?」
スタジオに入ってすぐに若井が聞いてきた。
何で分かるんだろう…
大森「あ〜…ね。分かっちゃう?」
若井「見てればね。でも、スタッフさんは分かんないかもだから、安心していいと思うよ。」
余計な心配を掛けたくないと思ってる俺を安心させようとしてくれてる。
藤澤「どんな曲なの?僕達に出来る事ある?」
涼ちゃんが俺の負担を減らそうと、そう言ってくれた。
大森「また、二人に贈りたい曲だから…教えられない」
二人は驚いて
藤澤「わぁ…嬉しぃ…でも、無理してるんでしょ?」
若井「次とかその次とか、これからもたくさん出すんだから、追い詰められてるなら違う曲の方向でも考えたらどうかな?」
二人の気遣いに鼻の奥がツンとなりそうになる。
大森「やだよ。そう言う妥協みたいなの、嫌いなの知ってるでしょ。」
強がって言ってしまう。でも、やめたくないのはホント。
大森「無理してるわけじゃないから。ただ、ちょっと整理できてないだけ。絶対、このアルバムに入れたい。」
若井「じゃあさ、打ち合わせもうちょっと後にして、少し休んでからにしよう。」
若井はそう言ってスタジオのソファに移動し、俺を隣に呼び寄せた。
俺は素直に若井の隣に腰を下ろす。若井の体温が感じられる距離で、いつもみたいに若井に寄りかかった。
涼ちゃんも俺に飲み物を持って来てくれて、俺の隣に座った。
藤澤「三人だけでスタジオ入るなんて初めてじゃない?休止前は五人でよく入ってたけどさぁ」
若井「そうかも。三人は初めてだわ。」
そんな会話をしながら、この空間を心地いいなと思っていたら、涼ちゃんが俺の頭を撫でながら、
藤澤「元貴、眠いの?寝てもいいよ。」
と、言ってきた。それを聞いた若井は、
若井「そうなの?横になんなよ。」
と、俺を動かして膝に頭を乗せてくれた。いわゆる膝枕。
大森「わっ!」
突然動かされたので、俺はちょっと驚いて声を上げてしまった。
ポスっと若井の膝に頭が乗って、涼ちゃんが俺の頭を撫でて、二人が柔らかい笑顔で俺を見下ろしてて…
その瞬間、何がきっかけかは分からない。いつもの感じだった。いつもの三人の空気感。頭を撫でられるのも、膝枕も、二人の微笑みも、いつものそれだったのに…
大森「…っ!」
涙が溢れてきた。みるみる視界がぼやけて、耐えられなくなった雫は俺の目尻から零れ落ちた。
若井、藤澤「!」
それに気付いた俺は、どうしていいか分からなかった。戸惑いが大きくて、でも決定的で、否定できなくて、自分の気持ちをどうしていいか分からなかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!