《止めるのが遅くなって、本当にすみませんでした!!パワハラの証拠を集めるためとはいえ、怪我をさせてしまうなんて…ッ 》
なんで、なんで僕のことなのにそんなに悔しがるのだろうか。なんでほとんど喋ったことのない僕を守ってくれたのだろうか。浮かんでくる様々な疑問と、全く理解できない状況に思考が追いつかない。ただ分かるのは、 僕は彼を心配させてしまった。ということ
「だ、大丈夫です!こんくらい痛くもなんともないですから!」
《……甲斐田さん》
「全然痛くないですし、逆に弱すぎ?みたいな!」
《甲斐田さん》
「本当、無駄な心配かけさせちゃってごめんなさ…」
《甲斐田さんッ!!!!》
「ッ……」
《そんな顔で「大丈夫」な訳ないでしょう。こんな時くらい、泣いてくださいよ…》
彼の手が僕の頬を優しく撫でる。久しぶりに感じる暖かい温もりが、受け止めきれないほどの優しさが、全身を包み込む(あ、抱きしめられてるんだ。)と理解した瞬間
「………え?」
『汚らしい手でハルに触るな。ニンゲン風情が』
腕のひしゃげたナニカが僕を見ている。首は潰れ、足は捻れ、腹部からは腸がこぼれ落ち、血がとめどなく流れている。それは紛れもなく、○○さんだった。
「あ、あぁ…! うあああああああああああッ!!!!」
(なんで、なんでなんでなんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで)
『だってハルが言ったんじゃないですか』
僕が言ったから?僕が言ったから加賀美さんは○○さんを殺した?それってつまり
僕のせいで○○さんは死んだ…?
全身の血の気が引き、頭が真っ白になる。でもその事実だけは脳にこびりついて離れない。絶望と恐怖が僕を飲み込み、上手く息が吸えなくなっていく。
そんな僕のことなんて露知らず、加賀美さんは優しい声で、まるで赤子をあやすように話しかける。
『可哀想に、こんなに震えて。もう大丈夫ですよ。ハルを傷つけるものは全て、ワタクシが消してあげますから。』
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