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シャオロンはいつものように夜の街で、女性の格好をしてお金を稼いでいた。華奢で女性的な顔立ちが、まるで本物の女性のように周囲の視線を引きつけているのだ。昼間は関西弁で冗談を飛ばして、時には生意気な口をきく彼だが、夜の街では自分を偽り、まるで女性のように振る舞うことに慣れていた。特に何も深く考えずに、流れに身を任せていた。
その晩も、夜の街角に立ち、あたりを歩く人々に声をかけながら、必要な額を稼いでいた。だが、ふと視線を上げると、彼の目に飛び込んできたのは――まるで映画のワンシーンから抜け出してきたような、長い黒髪をなびかせた絶世の美女だった。
その女性はまさに目を奪われる存在で、周囲の喧騒をまるで無視するかのように、静かに歩いている。その姿を見ているだけで、シャオロンは心の奥底で何かが揺れ動くのを感じた。まるで、恋に落ちてしまいそうな感覚に包まれた。あまりにも美しすぎて、その場に立ち尽くしてしまう。
思わずその女性に近づいて、何気なく声をかけてみた。「あんた…なんや、ほんまに美しいな…」
その声に反応した女性――ロボロは、ゆっくりとシャオロンの方に振り向いた。深い瞳を持った彼女の顔には、何か冷静で知的な雰囲気が漂っていた。シャオロンは一瞬、目を合わせることすらできなかったが、女性は少し驚いた様子を見せてから、すぐに微笑みを浮かべた。
「ありがとう、あなたも…かわいらしいわね。」ロボロはその言葉を穏やかな口調で返した。
シャオロンは、彼女の微笑みに心がときめくのを感じた。普段は誰かをこんな風に意識することはなかったのに、何故かこの女性だけは特別だった。自分が女装していることを、恥ずかしがるどころか、堂々と受け入れてくれるような、その眼差しにどこか安心感を覚えた。
「お前、名前はなんて言うんや?」シャオロンは気になったことをそのまま口にした。
ロボロは少し考えた後、静かに言った。「ロボロよ。」
その名前にシャオロンは驚いた。まるでその名前には特別な意味があるかのように、ロボロの名前はシャオロンの心に深く響いた。何かを感じるような、不思議な引力に導かれるような気がして、彼は思わず言葉を続けた。「ロボロ…か。ええ名前やな。」
ロボロは微笑みを浮かべ、静かに頷いた。その美しさにどこか謎めいたものを感じる一方で、シャオロンは今、この瞬間、何かが変わる予感を感じていた。
「お前…こんな夜の街で何してるんや?」シャオロンが少し照れくさそうに尋ねると、ロボロはしばらく黙ってから、ふと目を細めて答えた。「私も、ただの通りすがりよ。ただ、気になるものがあっただけ。」
その言葉には、深い意味が込められているように感じられ、シャオロンは思わず胸が高鳴った。自分がその「気になるもの」になれたのかどうか、それはわからなかったけれど、何かが確かに動き出したような気がして、心が揺れ動くのを感じていた。
その後、シャオロンとロボロはしばらく並んで歩きながら、何気ない会話を交わした。何度も振り返りたくなるような、美しい存在――ロボロの存在が、シャオロンの心に強く刻まれた。そして、少しずつ、二人の間に芽生えていく不思議な感情に、シャオロンはどう向き合うべきか悩み始めるのだった。
シャオロンは、何故か自分の体が止められないように感じ、気づいた時にはロボロを雑木林の中に引き込んでいた。その手が、何も考えずに彼女の腕を引いていたのだ。驚きと同時に、心の奥で湧き上がる何とも言えない感情に駆られ、足が一歩一歩進んでしまった。
「あら…」ロボロは予想もしなかった展開に、少しだけ驚いた様子を見せる。その後、すぐに表情が落ち着くと、微笑みを浮かべたが、どこか冷たい輝きが目に宿っていた。「それは、駄目よ。」
シャオロンはその言葉に何も反応できなかった。彼女の瞳が、まるで魔法のようにシャオロンを引き寄せ、心を掴んで放さなかった。そして、ロボロが優雅に一歩近づき、人差し指を軽くシャオロンの唇に当てた。その瞬間、シャオロンは体が硬直したように動けなくなった。まるで、何かに呪いをかけられたような感覚。ロボロの指先が触れたその場所から、じわりと熱が広がるような気がして、シャオロンは声すら出せなかった。
「また来るわ…」ロボロの声が耳に届き、シャオロンはその言葉がどこか切なく、そして残酷な響きとして心に残った。
その後、ロボロは何事もなかったかのように手を振り、雑木林を離れていった。シャオロンはその後ろ姿を見つめ、動けない体でただ立ち尽くすしかなかった。何が起きたのか、どうして自分がこんな行動を取ったのか――一切が謎だった。彼女の存在が、まるで全てを支配しているかのような不思議な力を感じ、シャオロンは自分が持っていたすべての感情を掴みきれずにいた。
そして、しばらくの間、心がぽっかりと空っぽなまま、その場に立っていた。しかし、ロボロが去った後の空気の中に、何かが残っている気がしてならなかった。シャオロンは静かに息を吸い込むと、力を振り絞って足を動かし、再び歩き出す。それは、彼女に対して抱く感情が、ただの気まぐれや衝動に過ぎないことを証明するための一歩でもあり、同時に彼女の存在に引き寄せられ続ける自分を認めるための一歩でもあった。
その瞬間、シャオロンの心には一つの確信が芽生えていた。ロボロとの出会いは、ただの偶然ではなく、運命だったのかもしれないということを。