でも、ということは。
「連続で受けられるっていうのは、10日開ける必要がないという意味なんですね。それだと、今日中にランク7以上にはなれそうにないですね」
私が言うと、哲人が驚いたように言った。
「邪栄ちゃん。そんなランク上げてどうするの?」
「え?」
「え?」
「上げないの?」
「ダンジョンに入れるランクになれば、それ以上は必要ないよね?そもそも身分証明書代わりなんだし」
「あ、そうだっけ」
うっかり忘れてた。
そういえば、ランク5以上ならダンジョンで即死しない程度らしいって聞いたっけ。
一応、ダンジョンの入口でランクを確認されるから、私たちはランク5以上あったら問題はないんだった。
「ごめんごめん、ランク9はめんどくさそうだなとか考えてたわ」
「ベヒモス倒すつもりだったの?!」
「あははー」
「ヤエさんは、楽しい方ですね」
ベルータさん、黙って肩震わすのやめてくれませんかね。
森の中にある小屋のようなところへ着いた。
聞けば、試験のときに使うほか、低ランクの人たちの休憩所にもなっているらしい。
まずは哲人が、といういうことで私たちは小屋で待つことになった。
「たーた、たっだ!だーだー」
「うんうん、そうだねー」
「だだー」
勇人が起きたので、小屋の前に籠を置いて、そこに座らせてみた。
そうしたら、遊びたそうだったのでそこらへんに落ちている枝を渡してみた。
楽しそうに籠の淵を枝で叩いている。
まだちょっと安定して座っていられないから、背中に手を添えていないと倒れてしまう。
それにしても、哲人はちゃんと帰ってこられるかしら。
「だ!だ!だたーた!」
「うん、ごめんごめん。あれ?それどうしたの?」
「たったった!」
ご機嫌で振り回す枝は、途中で折れている。
籠の向こうに先っぽが転がっているから、どうやら叩いた拍子に折れたらしい。
力強いなぁ。
しばらくしたら、檻を乗せたリヤカーのようなものを引いた哲人が戻ってきた。
檻の中には、ホーンラビットがたくさんと、ワイルドボアが1匹入っている。
見たところ、2匹ほどホーンラビットがお亡くなりになっているが、ほかは生きているらしい。
多分、この数だとランク6じゃないかな。
「お疲れ様です。ホーンラビット2匹狩猟、ホーンラビット12匹捕獲、ワイルドボア1匹捕獲ですね。これなら、文句なしにランク6ですよ、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「哲くん、よかったね」
「うん、ありがとう。次は邪栄ちゃんだね。頑張って」
「はーい」
檻を乗せ変えたリヤカーを受け取り、森に入る。
捕まえた魔獣は、ほかの人の試験に使ったり食用として売ったりするらしい。
今回の売上は、ちょこっとだけ冒険者側にも入るんだとか。多めの手数料は、試験代みたいなものだろう。
さてと。
「<索敵、ホーンラビット、ワイルドボア、ブラックベア、オレンジファング、半径500メートル以内>」
お、いっぱいいる。
白い小さい点がホーンラビット、茶色い点がワイルドボア、黒い点がブラックベア、オレンジの点がオレンジファングらしい。
白い点は、あんまりいない。
ちっ。
哲人め、この辺にいるホーンラビットあらかた狩ったな?
捕獲の魔法で、ホーンラビット3匹、ワイルドボア5匹、ブラックベア2匹、オレンジファング2匹をそれぞれ捕まえた。
オレンジファングは肉食らしいから、足を縛って檻の上部に吊り下げている。
大きさは大型犬くらいかな。
ブラックベアは、ワイルドボアより一回り大きいが、こう見えて草食らしく、ホーンラビットが怯える様子はない。
それらを全部入れたので、なんというか、ぎゅうぎゅう詰めになってるな。
帰ろうと索敵して小屋を見つけて歩きだしたのだが。
「何かしら?なんか人が多い気が……」
わらわらっと集まる人の点。
そしてぱっと散って、逃げるらしい点がいくつか。
追いかけようとする点が1つ。
動かない点が2つ。
点を数えて、背筋が冷たくなった。
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