テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第1話 黒いスーツのゲームマスター
最初に目を覚ましたのは、メバルだった。
「……ここ、どこ?」
白い床。白い壁。白い天井。
窓も扉もなく、時計すらない。部屋全体が、光そのものになったように見えた。
メバルが起き上がると、少し離れた場所でカキが頭を押さえていた。
「うーん……。俺、さっきまで何してたっけ?」
「寝ぼけてる場合じゃないよ!」
明るい声が響き、ノアが勢いよく立ち上がった。
その隣では、リリカが周囲を見回している。
「閉じ込められたのかな? でも、扉が見当たらないよ」
「壁に隠し扉があるかもしれない」
冷静な声で言ったのは、レオンだった。
彼は壁に近づき、指先で表面を確かめる。ルイも無言のまま天井を見上げ、監視カメラの有無を確認していた。
「監視装置は見えない。だが、見えないだけかもしれないな」
「なんだよそれ。怖いこと言うなって、ルイ」
セイジが苦笑しながら立ち上がる。
そのとき、部屋の中央から靴音が聞こえた。
コツ、コツ、と一定の間隔で響く音。
全員の視線が、一斉に中央へ集まった。
そこには、一人の男が立っていた。
黒いスーツ。
金色の髪。
右腕は、肩から先が存在していない。
残っている左腕を体の横に下ろし、男はただ静かに立っていた。
表情は穏やかだった。
しかし、目だけは違う。
その視線を受けた瞬間、部屋の空気が重くなった。冗談を言おうとしていたカキでさえ、口を閉じる。
K-Tは、男から目を離さなかった。
「お前は誰だ」
低い声で尋ねる。
男はK-Tを見た。
ほんの一瞬だけ、その目に懐かしさのようなものが浮かんだ気がした。
だが、それはすぐに消えた。
「ようこそ、アマングアスへ」
「アモン●アスだね」
ノアが小声で言った。
「アモング●スじゃん」
リリカも続ける。
セイジが二人を見て、困ったように眉をひそめた。
「名前が少し違うぞ。そこは気にするところなのか?」
「気にするよ」
リリカは真剣な顔でうなずいた。
「ゲームの名前は大事だからね」
「そこじゃないだろ」
マサカゲがため息をつく。
「全員、ふざけるのは後にしろ。まずは状況を確認する」
「マサっち、こういうときも真面目だなあ」
カキが言うと、マサカゲは鋭く睨んだ。
「お前は緊張感がなさすぎる」
「いやいや、緊張してるからこそ冗談を言ってるんだよ」
「その理屈は今すぐ捨てろ」
ミステーは、黒いスーツの男をじっと見つめていた。
黄色と黒のピラミッド型の被り物が、かすかに揺れる。
「あなたは、右腕を失ったのではない」
男の眉が、わずかに動いた。
「最初から、右腕を持っていなかったのでは?」
「ミステー、何を言ってるの?」
メバルが不安そうに尋ねる。
「腕は記憶である。失った腕を見れば、失った記憶も分かる」
「分からないよ」
「私にも分からない」
ミステーは真顔で答えた。
マサカゲが頭を抱える。
その間に、アオノは壁へ近づき、白い表面を調べていた。
「材質は金属に近い。ただの壁ではない。電力が流れている」
「操作できそう?」
メバルが尋ねる。
「試してみる」
アオノが小型の装置を取り出した瞬間、黒いスーツの男が左手を上げた。
壁に、青白い文字が浮かび上がる。
参加者十二名を確認。
第一試合を開始します。
「十二名?」
レオンが人数を数える。
K-T、メバル、カキ、マサカゲ、ミステー、アオノ、ノア、リリカ、セイジ、レオン、ルイ。
「十一人しかいないぞ」
ルイが淡々と指摘した。
部屋の空気が凍りつく。
全員が互いの顔を見た。
確かに、ここにいるのは十一人だけだった。
「あと一人は誰?」
ノアの明るさが、初めて消えた。
ゲームマスターは答えなかった。
ただ、左手をゆっくりと動かす。
すると、部屋の中央に黒いカードが十二枚現れた。
そのうち一枚だけが、誰にも触れられていないのに裏返った。
カードに表示された文字は――
不明
「誰も触ってないのに……」
リリカが後ずさる。
メバルは、無意識にK-Tのそばへ移動した。
「Kさん……」
「動くな」
K-Tは短く答えた。
彼は全員を見渡す。
「この部屋には、俺たち以外にも何かいる」
黒いスーツの男が、初めて笑った。
「説明を始めよう」
壁いっぱいに、宇宙船の映像が映し出される。
巨大な船体。
赤い警告灯。
そして船名――《アストラ号》。
「君たちはこれから、船内で五つの試合を行う」
ゲームマスターの声が、白い部屋に響いた。
「役職はランダムに配布される。クルーメイトはタスクを完了するか、裏切り者を全員追放すれば勝利」
画面に、赤い文字が浮かぶ。
インポスター
「インポスターは、クルーメイトを減らし、同数にすれば勝利となる」
続いて、別の役職が表示された。
シェイプシフター
「シェイプシフターは、他人の姿へ変身できる」
「変身って……そんなの反則じゃん!」
カキが叫ぶ。
「誰を信じればいいのか、分からなくなるよ!」
「だからゲームになる」
ルイが静かに言った。
セイジは腕を組む。
「もしゲーム中に倒されたら、どうなる?」
ゲームマスターは、全員を見渡した。
「勝敗が決定した時点で、全員が生き返る」
「生き返る?」
レオンの声が低くなる。
「死ぬことを前提にしているのか」
「そうだ」
男は迷いなく答えた。
「これは、仲間を信じることと、疑うこと。その境界を知るためのゲームだ」
「誰が、そんなことを知りたいんだよ」
メバルが強い口調で言った。
普段なら不安そうにしている彼女の目に、怒りが宿っている。
ゲームマスターは、メバルを見た。
「いずれ分かる」
その言葉と同時に、床に光の輪が広がった。
「それでは、第一試合を開始する」
「待て!」
K-Tが一歩前へ出る。
「俺たちをここへ連れてきた目的は何だ」
ゲームマスターは答えなかった。
ただ、K-Tを見つめる。
二人の間に、誰にも理解できない沈黙が生まれた。
やがて、ゲームマスターは小さく笑った。
「君は、まだ思い出していないのか」
K-Tの目がわずかに細くなる。
「何の話だ」
「いずれ、思い出す」
光が全員を包み込む。
メバルは、薄れていくゲームマスターの姿を見ながら叫んだ。
「Kさん! あの人と知り合いなの?」
K-Tは答えなかった。
最後に見えたのは、黒いスーツの男の左手だった。
その手には、いつの間にか一枚のカードが握られている。
カードの表面に書かれていた役職は――
ゲームマスター
次の瞬間、視界が白く染まった。
そして一行は、見知らぬ宇宙船の中へ転送された。
第一試合が始まる。
誰が味方で、誰が敵なのか。
まだ、誰にも分からない。
ただ一つだけ確かなことがあった。
この船には、十一人ではなく――
十二人いる。
コメント
3件
やばやばやばやばやば!!😭✨ 第1話からすでに情報量がエグすぎて脳が追いついてないんだけど?!笑 白い部屋に突然集められた11人のキャラたち、それぞれの個性がもうバッチリ出ててワクワクが止まらない!!特にノアとリリカの「アモン●アスだね」のやり取りに声出して笑ったwww そしてミステーの「腕は記憶である」発言、意味わかんないけどめっちゃカッコよくない?!🤯💕 ゲームマスターの“君はまだ思い出していないのか”ってK-Tへの意味深すぎるセリフ…ッ!!この二人の過去が気になって仕方ない😭💦 さらに12人目の“不明”カードの不気味さよ…これからの展開が怖すぎるけど楽しみすぎる!!続き読みたい〜!!🔥
#異世界転生
K-Takasaka
49
#人狼