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「では、企画のテーマの方なのですが……、」
シュウの言動には引っかかるところもあったけれど、気を取り直して、作ってきた企画書を示した。
「今回は、バンドのヒストリーということで、ページを組みたいと考えていまして」
「どうして、ヒストリー仕立てに?」
企画書を手に、聞いてくるマネージャーに、
「ヒストリー仕立てにして、最終的にヒット曲の紹介をする形にまとめたいので」
そう説明をすると、
「…つまりは、ちょっとだけ趣向を変えただけの、いわゆる今度の曲の宣伝ってことね…」
シュウが鼻先で軽く笑って呟いた。
──なんだかいちいち突っかかるように感じつつも、やんわりとスルーをして細かい打ち合わせを詰め、事務所を離れた後で、突然にSNSに連絡が入った。
もしかして、カイからかな……と思って、急いで画面を見ると、
『今日、時間ある?』
と、シュウからメッセージが届いていた。──そういえばメンバーとは、いつかの飲み会の時にSNSのIDを交換していたことをふと思い出した。
シュウが私に何の用だろう……と思いながら、
『仕事が終われば、特に予定はないです』と、返信をした。
『だったら、仕事終わったら教えて?』
『はい、了解です』
ごくビジネス的にやり取りをして、会社に戻りKILLAの事務所で詰めてきた要望などをザッと整理し、大まかに企画のページ割りをした。
時計を確認すると、9時過ぎになっていて、一旦切り上げる形で、
『仕事、終わりましたが、何の用事でしょう?』
と、シュウにメッセージを送った。
『じゃあ、これから俺と会ってもらえるか?』
相変わらずシュウがどうして自分に会いたいのかはわからないままだったが、仕事で関わっている以上はあまり角が立つようなこともできず、行くより仕方がない気がして、彼の行きつけだという、音楽事務所近くのバーで落ち合った。
先に店の中で待っていたシュウの向かいに座ると、
「さっそくだけどさ、」
彼の方から、いきなりに話を切り出された。
「……あんた、最近カイと2人っきりで、会っただろ?」
そうしてシュウが、何かを探るように私を上目に見た。
「えっ…なんで、知っていて…」
カイのあの時の様子からしても、まさか自分からシュウに話したようにも思えなかった。
「……それぐらい、教えてくれるヤツは、いくらでもいるんだよ…」
シュウが言い、唇の端をわずかに吊り上げて表情をふっと歪ませた──。