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公園のベンチに、5人が並ぶように腰を下ろしていた。
夕暮れの空は今日も静かに染まり、どこかひとつだけ、季節の境目のような涼しい風が吹いていた。
不破湊「ねぇねぇ!昨日のお話、すっごく楽しかった~!」
あどけない笑顔を浮かべながら、不破湊は両手をぱたぱたと振っていた。
その仕草に、加賀美ハヤトが小さく笑みを漏らす。
加賀美ハヤト「……不破さんの“楽しかった”って、すごい無敵ですよね」
不破湊「え?だって本当に楽しかったんだもん。甲斐田晴くんが教えてくれた“苦いのに美味しいジュース”とかも!」
甲斐田晴「缶コーヒーのこと?」
甲斐田晴は笑って答えながらも、心の中ではその発言を何度も反芻していた。
苦いけど美味しい───まるで今の気持ちみたいだった。
剣持刀也「ま、確かに…昨日は楽しかったな。不破湊のあの“恋って?”とかいうセリフが、もう、ねぇ?」
三枝明那「マジで本当に恥ずかしいわ!俺が変なこと言っちゃっただけだから忘れて!!」
三枝明那は耳まで真っ赤になりながら叫んだ。
しかし、不破湊はふわりと笑って近寄ってくる。
不破湊「でも、三枝明那くんの声、すっごくドキドキした…胸の奥がぎゅーって、なった…」
その言葉に、その場の空気が一瞬止まった。
剣持刀也(…わざとか?違うよな、いや、わざとだったらヤバすぎるけど…)
甲斐田晴(それ、天然で言ってるなら……もっとヤバいってことだ)
三枝明那「っ…そ、そりゃ……俺も、同じような…ぎゅーって……いやいやいや、ちが…!ちがうからね!?」
顔を覆いながら明那は叫んだが、不破湊はまるで気づかず、無邪気な笑みを浮かべていた。
不破湊「ん~、胸が痛くなるのに、苦しくて、でもずっと一緒にいたいって思っちゃうの…変だよね」
加賀美ハヤト「……それを“恋”って呼ぶんですよ、不破さん」
小さく、静かに、諭すように加賀美ハヤトが呟いた。
その声はまるで何かをこらえているようで、
他の3人は黙ってその場にいた。
不破湊「ねぇ、みんなって、誰かを“ひとりだけ”見つめることってある?」
その瞬間、4人の視線が同時に彼に向いた。
まるで心臓を直接掴まれたような感覚が、全員を襲っていた。
剣持刀也「あるよ」
甲斐田晴「あります」
加賀美ハヤト「ありますね」
三枝明那「……うん、ある」
不破湊「わ~!すごいね~!じゃあ、いつか僕にも“ひとりだけ”って人ができるのかな~!」
それを言いながら、不破湊はふわふわと立ち上がり、地面を蹴って飛び跳ねた。
その羽根が空を撫で、夕日を浴びて純白に輝いた。
誰もがその羽に触れたいと思った。
誰よりも先に、誰よりも強く、触れて、壊して、独り占めしたいと───
だがその想いを、言葉にすることは誰にもできなかった。
言葉にした瞬間、すべてが壊れてしまう気がして。
だからこそ、その日も4人はただ黙って彼を見つめていた。
その純白が、いつか“自分だけ”の色に染まることを、願って。
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