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街の風が少し冷たくなり始めた夕暮れ、彼らはいつものように集まっていた。
不破湊「今日はね~、道端でかわいい猫ちゃん見たんだよ!白くてふわふわで…なんかちょっと、羽根みたいだった~!」
不破湊の無邪気な声が空気をやわらかく包む。
加賀美ハヤト「……猫ですか」
剣持刀也「ふわっちの羽根より綺麗な白色はないよ」
不破湊「えへへ~!そうかなぁ?」
いつも通りの笑い声。だが、その空気の中に、4人だけが感じていた妙な違和感があった。
甲斐田晴(最近…なんか、僕たちの中で不破さんを巡って“空気”が変わってきてる)
三枝明那の目線が不破湊を追う。剣持刀也はいつも以上に距離を詰めている。加賀美ハヤトは静かに微笑んでるけど、なんとなくその視線は鋭い。
不破湊「ねぇねぇ!今日はみんなで手つなぎっこしない?」
その言葉で全員の心拍が跳ねた。
三枝明那「っ……え、それ、マジで言ってる…?」
不破湊「うんっ!人間界ってそういうの多いんでしょ?繋がってると仲良しって感じする~!」
不破湊は、何の下心もない純粋な笑顔で、手を差し出していた。
甲斐田晴「……そっか。じゃあ、僕から」
すっと手を伸ばした甲斐田が、不破湊の手に自分の指を絡ませるように握る。
その一瞬、甲斐田の手はほんの少しだけ震えていた。
剣持刀也(くっそ…早いな、甲斐田)
次に手を繋いだのは剣持刀也。やや強めに、不破湊の手を引いた。
剣持刀也「別に順番とか関係ないでしょ?」
不破湊「うわ~!なんかあったかい~!人間ってほんとに“あったかい”んだねぇ!」
加賀美ハヤト「……じゃあ、私も」
加賀美ハヤトもそっと手を重ねたが、その視線は他の3人とは一線を画していた。
彼だけは、明確に“不破湊”そのものを見ていた。
最後に残ったのは三枝明那だった。
三枝明那「……ん、俺も」
その声はかすれていて、微かに震えていた。
彼の中では、もうそれは“手を繋ぐ”という、行為以上の意味を持っていたからだ。
不破湊「わ~!こんなにいっぱいの手に囲まれるのって…なんか、すごいな~…」
その言葉に、4人の心が一瞬止まった。
不破湊は、全員の手を受け入れていた。
平等に、誰を特別扱いするでもなく、ただ“みんな”が好きという態度で。
それが、逆に───たまらなかった。
甲斐田晴(このままだと、僕の気持ちは埋もれてく)
剣持刀也(誰かに取られるくらいなら、僕が先に壊してでも…)
三枝明那(ずっと隣にいたい…でも、俺じゃ無理なのか…?)
加賀美ハヤト(私を“特別扱い”してもらえないなら、いっそ無理やり私のものに───)
その夜、彼らはそれぞれの部屋で“つながっていた手”の感触を思い出していた。
そして、同じ言葉が頭をよぎっていた。
「つながりたい」
───でも、それはただの“手”じゃ、足りないものだった。
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