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「アック様、どうされるんですか? それとシーニャはどこに?」
「まぁ待て。シーニャはきっと無事だ。ここにはいないけどな」
霊獣シリュールに守られているし、少なくともここより安全なはずだ。
「それじゃあ、フィーサは?」
「見ての通りだ。ぐっすりと――うっ!?」
鞘《さや》に収まっているフィーサを確かめようとすると、そこに彼女の姿は無い。真っ暗闇の中、どこへ行ったかと見回していると、その姿はルティの真後ろにいるように見えた。
しかも人化して、久しぶりにお姉さんな姿になっている。初めて見た時よりも艶《つや》っぽく見えるが気のせいだろうか。
「――全く、騒がしくて仕方が無いなぁ」
「えっ……? わわわっ!? い、いつの間に~!」
「イスティさまはともかく、どうしてあなたがここにいるの?」
「それはアック様が~……」
ルティはおれを見つめるが、全ておれのせいだから何も言えない。だがフィーサが目覚めたなら、さっさとここから脱出しなければ。
「そ、それはそうと、実はおれはここから抜け出そうとしているんだが」
「……ここは異空間?」
「ああ。ドワーフが召喚した幻獣フォルネウスの腹の中だ」
「フォルネウス……七十二の一つの魔神、ね……ふぅん」
「はぇぇぇ? 魔神!? え、わたしたち魔神さんに食べられちゃったんですかっ!?」
魔神と聞いただけで驚いたルティは、見える範囲でバタバタと走り回って慌てている。フィーサが知る魔神ということは、脱出が可能か。
「それでフィーサ。魔神相手ではあるが爆発魔法で脱することは可能か?」
「イスティさまはソロモン王のことは知ってる?」
「大昔の旧約聖書の悪魔ということくらいしか知らないな。そうすると、フォルネウスってのはソロモン王の?」
「うん、そうだよ。でも幻獣として召喚してるから、大昔の魔神そのものじゃないと思うけどね」
「そうだろうな。末裔とはいえ未熟な召喚だ。コイツもその程度なんだろうな」
その程度な奴に呑み込まれたわけだが。
「……それじゃあ、イスティさま。爆発魔法じゃなくて闇魔法でフォルネウスを懐柔しちゃおっか」
「おれたちを呑み込んでいるのに従えられるっていうのか?」
「イスティさまも言った通り、魔神だけど未熟な幻獣だよ。だからこのコよりも強い闇魔法を展開すれば、従って外に出してくれると思うんだ!」
「魔神よりも強い闇魔法……」
「大丈夫だよ。イスティさまはヘリアディオスで闇神さまを降《くだ》したでしょ? 光以外なら、どんな相手でも何とか出来ると思うの! だからイスティさまは自信を持って唱えてね」
そう言われればそうだ。神族国家ヘリアディオスでは光神リアディオだけはどうにも出来なかったが、それ以外の属性はほぼ極めたようなものだった。
「……分かった。それを唱えれば、ここは崩れてフォルネウスそのものも従えられるんだな?」
「うん!」
「よし! ルティシア! フィーサにくっつけ。すぐに出られるぞ!」
「はぇっ? よ、よく分からないですけど、そうしますです~!!」
悪魔を絶望させる魔法でフォルネウスを懐柔してみるか。
「魔神フォルネウス!! 絶望を味わい、おれに屈することを誓え! 『ダーク・デスペリア』」
◇◇
「アックがやられるはずが無いのだ! オマエ、あまりいい気になるななのだ!!」
シーニャは霊獣シリュールの水の膜に覆われ、守られている。しかし主人の姿が同一の場所から消え失せてしばらく経つと、徐々にその効果は薄まりやがて消えてしまう。
そのことを知るドワーフたちが、ただひたすら時間の経過を待ってシーニャを囲んでいた。
「小さき人間に従う虎人族! フォルネウスはボクからすでに放たれたぞ!」
「ウゥ? ドワーフ関係無いのだ?」
「こうなるともうボクの意思に関係無く、人間を呑み込んだままだ。お前ももうすぐ幻獣に喰われるんだぞ!」
「ウウウニャ……」
ドワーフ相手だけならシーニャだけでも苦戦することなく倒せる。しかしアックを呑み込んだ幻獣をどうすればいいのか、シーニャは悩むしかなかった。
「よぉし、そろそろ虎人族もボクが――えぇっ!?」
「ウ、ウニャッ!?」