コメント
7件
本当に最高すぎます🥰また続き楽しみにしてますね💕︎大晦日編は湊さんとシンちゃんの会話も愛おしいし明日香が柊くん迎えにいくのんもかわいすぎます😍
大晦日。
それぞれが持ち寄った料理や飲み物が食卓に並んでいた。
「これ全部お前が作ったのか?」
1番気合いが入っていたのはシンの手作りの料理の数々だった。
「湊さんのために頑張りました」
湊を見てシンが微笑む。
「お…おぅ…ありがとうな…」
少し照れながら湊は頭をかいた。
すかさず横から
「アキラさん。俺もお刺身持ってきたんだけど」
明日香が褒めて!と言って欲しそうに言った。
「明日香もありがとうな」
「で、柊くんはまだ?」
「さっき連絡あって、なんとかって建築家の特番終わったら来るって言ってたぞ」
「また建築家…一緒に観ればいいのに…」
残念そうに明日香が言った。
「急に誘ったからな。来てくれるって言ってくれたんだからもう少し待ってろよ」
「そうだけど…」
「先に初め…って、おい。明日香っ!」
湊が言い終わる前に目の前に並んでいる料理を口に入れた。
「だってお腹空いたんだもん」
「ったく、しょーがねーな。笑」
「湊さん。この角煮食べてください」
「おっ…うっまー!!さすがだな!シン!」
「昨日から煮込んでたんです」
「大根も、染みてて絶品だな!」
「味、濃くないですか?」
「んっ?いや、美味いよ!」
「良かった…」
二人のやりとりを肘をついて見ていた明日香は
「あのさ…目の前でイチャつくのやめてもらっていい?」
「別に俺等はイチャついてなんか…」
「はいはい…」
勝手にやって。と、言わんばかりの顔をすると大きな口を開けて肉を頬張った。
「あんまり食べ過ぎるなよ。柊くん来たら年越し蕎麦出すから」
「食べ盛りだから大丈夫だよ!」
「そ~ですか」
暫くすると、玄関のチャイムが鳴った。
「柊くんだっ!!」
目を輝かせて明日香が立ち上がった。
「柊くん遅いっ!」
「遅そくなるって晃くんに連絡したけど…」
「そーだけど…」
「いらっしゃい。寒いから上がって」
湊も柊を出迎えた。
全員が揃ったところで、乾杯をする。
賑やかな1年の最後の日が始まった。
「食べ終わったら皆で神社行かない?」
提案したのは明日香だった。
「おっ!良いな。シンはどうする?」
「湊さんが行くなら行きます」
「柊くんも行くよね?」
明日香が柊に尋ねる。
「皆が行くなら…」
「明日香、お腹いっぱいになったからって寝るなよ。笑」
「アキラさん!俺、もう高校生!いつまでも子供扱いしないでよねっ!」
楽しそうな湊の様子を横からシンは黙って見ていた。
「んっ?どうしたシン食べないのか?」
「食べます!湊さんが作ってくれたお蕎麦」
「茹でただけだけどな。笑」
「うん。美味しいです」
「ったく…そんな嬉しそうに食べるなよ…。笑」
「さすがにお腹いっぱい!」
明日香がお腹をさする。
「そろそろ行くか?」
湊が立ち上がりながら声をかける。
「そうだね」
柊も立ち上がった。
「待って柊くん!俺も行くから!」
明日香は玄関に向う柊の後を追って行く。
「着く頃には年が明けますね」
シンも立ち上がってコートを着た。
「神社で年越しってのも良いな。笑」
「そうですね」
静まり返った夜の道を2人で並んで歩く。
柊と明日香は遥か先を歩いていた。
「寒くないですか?」
「手袋してくれば良かったな…」
ポケットに両手を突っ込んで肩を竦めながら湊が言う。
「湊さん。はい…」
シンは自分の手袋を片方湊に渡した。
「えっ…なんで片方だけ?」
「いーから。右手に着けてください」
言われるまま、湊は右手に手袋を着ける。
「貸して…」
シンは手袋をしていない右手を差し出す。
「ん?なに?」
「左手。…出して」
「?」
湊は手袋を着けていない左手を差し出す。
「シン…なにやって…」
シンは湊の左手を右手で繋ぐと自分のコートのポケットに入れた。
「こうした方が暖かいでしょ…」
「…!!」
咄嗟に周りに誰もいない事を確認する。
「なにやってるんですか…笑」
「お前こそ、なにやってんだよっ」
「誰もいませんよ…笑」
「……だからって」
「湊さんの手…冷たい……」
冷えた左手からシンの温もりを感じる…
忘れて良かったのかもしれない…そんな事を少しだけ思ってしまう…
神社に近づくにつれ人の数が増えてきた。
「晃っ!」
通りすがりの男性に名前を呼ばれ、咄嗟に湊はシンの手を離した。
「……!」
「よう」
「久しぶりだな。こっち帰ってたのか?」
声を掛けてきたのは湊の高校の同級生だった。
「あぁ…」
「なんだ。だったら連絡くらいして来いよな」
「そうだな。悪かったな」
「また、皆で集まろうな。じゃあな。良いお年を!」
そう言って行ってしまった。
「シン。行こう」
「……」
「すっげー人だな」
神社に着くと参拝の列にたくさんの人が並んでいた。
「あっ、いた。アキラさん!」
先に行った明日香と柊が列とは反対方向から歩いてきた。
「もう、参拝したのか?」
「人が多くて柊くんが嫌だって。おみくじだけ引いて帰ろうって」
「そっか。今日はありがとな」
「楽しかったよ!ありがとうねアキラさん。良いお年を!」
「明日香も柊くんも、良いお年を」
「あっそーだ。後でお年玉貰いに行くからよろしくね~」
「お前さっき、子供扱いするなって言ってただろっ」
「それとこれとは話が別!」
「まったく…」
「じゃあね。アキラさん。シン」
柊は会釈をして、また…そう言って明日香と一緒に行ってしまう。
「どうする?シン。並ぶか?」
最後尾は参拝場所から遥か離れた入口付近まで続いていた。
「湊さん…」
シンが言いかけた時、年越しを知らせる除夜の鐘が鳴った。
「あけましておめでとう!シン」
「あけましておめでとうございます。湊さん」
「参拝はまたにしよう。鐘突きに行きたい!」
子供みたいに目を輝かせて、湊はシンを誘う。
「そうですね。行ってみましょうか」
「よしっ!」
鐘は順番で突く事ができた。
それほど並んでいなかったので、すぐに湊とシンの番がやってきた。
「よしっ!いくぞ!シン思いっきりなっ!せーのっ」
勢いよく綱を引き上げると手を離し鐘が鳴る。
「おぉぉーっ!」
湊が感動していた。
「近くで聞くとかなり迫力ありますね」
「貴重な経験ができたわ。笑」
満足気に階段を降りた。
「おみくじ引くか?」
「はい!」
「じゃ…」
書かれた番号のおみくじを受け取ると
「あちゃ……」
「湊さん。何が出ました?」
持っていたおみくじをシンに広げて見せた。
「小吉…」
「俺は大吉です」
「うそっ!」
「恋愛は成就するって書いてありますよ。笑」
「俺のは………」
「なんて書いてあるんですか?」
「まぁまぁ…的な…?笑」
「結んで行きますか?」
「だな…」
「俺は大吉なので大切に取っておきます」
シンは大事そうにしまった。
参拝は諦めて、人並みとは逆に歩いて行く。
「本当に良かったんですか?参拝しなくて」
「さすがにあの列を並ぶのは…柊くんが嫌がるのわかるわ」
「後でまた一緒に来ましょうね」
「そうだな」
「湊さん…」
「どうした?」
「俺、このまま帰らないとだめですか?」
「それは…」
「こんな日に湊さん1人にさせたくないです…」
「お前もしかして…それで大晦日家に来るって言ってくれたのか?」
シンは黙って頷いた。
「そうなら、初めからそう言えば…」
「2人で過ごしたかったのも事実です…」
「……」
「今日は何もしません…だから、まだ一緒に居たらだめですか?」
「何もって…笑」
「……だめですか」
「さすがに1人は寂しい…よな…笑」
「いいんですか…?」
「でも。何もしないって言ったからなっ!」
「今日は…ですけど…」
「今日も明日も…なんもねーよ」
「……」
「……」
「湊さん…また手繋いでいいですか?」
「ほらっ…」
シンは満面の笑みを浮かべると湊の左手を繋いだ。
「星が綺麗だな…」
「……ですね」
そんな他愛のない会話をしながら家路に着いた。
「寒かった〜やっぱり日本人はコタツだな…」
「そうですね」
「つーか、なんで隣に座ってるんだよ!狹いだろっ!」
「くっついた方が暖かいじゃないですか」
「もう外じゃねーから暖かいわっ!」
「俺は湊さんにくっついた方が暖かいです。身体も心も…」
「お前…さっきの言葉忘れんなよ」
「何か言いましたっけ?」
「忘れたとは言わせねーよ。シンちゃん」
ニヤっと笑うと湊はシンの脇をくすぐり始めた。
「やめてください!湊さんっ!笑」
「どうだ!思い出したかっ」
「さあ…?」
「まだとぼける気かっ」
「やめっ!湊さん!やめてっ…笑」
払い除けるシンの手が湊にあたる。
それを避けようとした湊は床に倒れてしまった。
「ごめんっ!湊さん!」
起きあがらせようと湊の腕を掴むと
「えっ…」
湊がシンの腕を引っ張りシンは湊に覆いかぶさる。
「すみません…どきます」
「どくな…」
シンの腕を掴んだまま目をそらしながら湊は言った。
「でも何もしないって…約束したから」
「嬉しかった…お前が来てくれるって言ってくれた事…」
「……」
「だけど…怖かった…」
「どうして…?」
「抑えきれなくなるから…」
「湊さん…?」
「わかってる。お前はまだ高校生だから何もしちゃいけないって…でも…」
湊はシンの首に腕をまわす。
「もう…………無理かもしんねー…」
シンを引き寄せる。
「イヤか…?」
「イヤがってるように見えますか?」
「……見えない」
「…あたりまえです。好きな人に誘われてイヤなわけないでしょ…」
照れている湊の顔を自分に向けると
「俺の事、好き。って言ってください…」
「……」
「ここまできて、まだ意地張るんですか…?」
「言ったら終わっちまう…」
「言わなきゃ始まりません…」
「始まったらだめなのかもしれない…」
「どうしてそんな事言うんですか?」
「ごめん…シン。やっぱりやめよう…」
「なんで…?」
「こんな始まり方はだめだ…」
「どうして?」
「これじゃ、今までと変わらない…こんな始まり方したらすぐに終わっちまう…」
「湊さん……?」
「お前を失いたくない…」
「どうして…?」
「……」
「湊さん…どうして俺を失いたくないんですか?」
「…た…だから……」
「…えっ…?」
「………大切…なんだよ。お前のこと…だから失いたくない…」
「好き。だとは言ってくれないんですね…」
「ごめん…」
「謝られたら余計に惨めになるじゃないですか…」
「そんなことっ…」
「さっきだって…俺の手、離したでしょ。そんなに恥ずかしいですか?俺と居るのを誰かに見られるの…」
「あれは…」
「大切だ…なんて言うわりに案外あっさり手放すんですね……」
「そんなっ…」
「隣、新しい家族が引っ越してきました…」
「………そっか…」
「その日から俺、部屋のカーテンが開けられないんです…」
「……」
「灯りがつく度に湊さんが帰ってきたんじゃないかって…もう隣に湊さんはいないのに…」
「シン…」
「俺は湊さんがいないとダメなんです…あんたが好きで…どうしようもないくらい湊晃が欲しいんです…」
「……」
「これだけ言ってもまだ湊さんには伝わらないんですね…」
「伝わってるよ…」
「え……」
「痛いくらい伝わってるよ…胸が苦しくなるくらい…締めつけられるくらい…お前の事しか考えらんないくらい…」
「だったら…」
「あと…3ヶ月…待ってくれないか…」
「…待てない…って言ったら…?」
「……」
困惑する湊に
「嘘です…待ちます。3ヶ月。いや…約束した卒業式まで…」
「…うん」
伏し目がちに頷く湊が愛おしくて
「ごめん湊さん。さっきの言葉守れそうにない………」
湊の腕を掴み引き寄せると
「これだけ…させて」
そう言って湊を強く抱きしめる。
「……シン」
湊もシンの背中に腕を回しシンを抱きしめた。
言葉なんて本当はいらない。
互いの気持ちを確かめる方法ならいくらでもある。
なのに…好き…のたった一言が欲しい…
抱きしめ合う身体が すでに証明しているのに……
どうしてこんなにこだわるのだろうか…
窓の外からはまだ鐘の音が響いていた…
【あとがき】
大晦日編というより、年越し編ですね。笑
安心してください。
んっも〜!焦れったいな!早く付き合ってしまえっ!!
と、作者も思っています…笑
それでは、また次回作でお会いできますように…
月乃水萌