にしても…… 言っている事は互いに判らないでも無いのだがぁ…… もっと平和的に話し合いとかすれば良いのに、そう思ってしまう私、観察者であるが…… まあ、仕方ない、観察とは常に一方通行、そう言うものなのだ。
実の所、こちらの考えを伝える術(すべ)が無いことも無い。
私が持つスキルは『観察』と『経験』、それだけではない。
三つ目のスキルの名は『密告』、インフォーマントだ。
これは特定の対象に自身が知り得た観察や経験に纏わる知識を、何らかの媒体を通して伝えるスキルである。
コレを使えば、レイブやズィナミの不毛な戦いを止める事も可能なのかもしれない。
だが、このスキル『密告』は術者にとっての消滅を意味しているのだ。
固有のスキルである『観察』と『経験』によって知り得た情報を他者に漏らす事、それは自分の存在を賭して行う必要が有る、当然と言えば当然だ。
それ位のリスクは有るのである。
だってもし私、観察者が皆さんの時代、令和に生きるインフルエンサーだったらどうだろうか? 『観察』も『経験』も気楽に皆さんに紹介し捲って軽く億ってしまう事だろうね。
『信長公の本音に迫る、実録本能寺』
だとか、
『少年呂布君、僕強くなるんだ、成長観察記』
とか、
『ジーザス本当の所、ある夜の誘惑と屈託、見てきたから話せます(エッヘン)』
なんかを無尽蔵に配信してしまうからね。
だって今生きているタレントさんや政治家の昨日だって観察できるんだから、バズら無くても週刊誌とかに売れるよね?
と言う事で、当然のリスクとして他者に伝える『密告』を使うと存在が消失してしまう、そんな縛りが有るのだ。
だからレイブとズィナミを止める事も出来ないのだ、自分の無力が辛い……
ドンドンバキバキバンバンガキガキ、衝撃音と悪態だけが響いていた広場に変化が訪れたのは不意の事である。
ズィナミが高速移動を止めたらしく、広場の端に姿を表して口にする。
「むっ! 何だこれはっ!」
背後から姿を表したレイブが上段から虎爪(こそう)を振り下ろしながら叫ぶ。
「貰ったぁーっ! くたばれババアーっ! ぐっ、がっはあぁーっ!」
ズィナミは左の肩越しに裏拳を振り上げた姿勢で制止している、因みに全身は赤を越えてどす黒く変じ、頭部に伸びた角もいつの間にか十二本まで増えている。
南米辺りから輸入される奇怪な多肉植物みたいだ、そんな風に表現すれば皆さんにも判り易いだろうか?
一方のレイブと言えば、見た目こそ最初と変わっては居なかったものの、表情を怒り満面に変えて丈夫そうな白い歯を噛み締めながらズィナミを睨みつけていた。
裏拳一発で数度のバレル横転を余儀なくされ、器用に着地を果たした後でもまだ、鼻先と首元にしっかりと残ったダメージの大きさが怒りの元なのであろう、一目瞭然である。
「ほ、本気でやりゃぁがったなっ! く、糞ババアァーッ!」
発言から察するにここまでは本気では無かったらしい……






