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ナガチカは更に説明を続ける。
「コイツはねぇ、魔力が豊富な場所で育つんだよ、昔はリョウコ叔母さんやリエ叔母さん、彼女等の魔力を吸い上げて濃い緑の葉を茂らせていたものだよ…… それにもう一つの特徴、こいつが大事な所なんだけどね、逆に魔力や聖魔力が少ない場所で発芽させた場合は、黄緑色の薄っすらとした葉で成長するって所なんだけどね? 潤沢に魔力を吸収して育った葉には、生命力を失って弱った人を回復する効果があるんだけどさ、反して、黄緑色で弱々しく成長した葉っぱにはね、魔力過多で石化しかけた生物から、余剰な魔力を吸い取ってくれる効果があるんじゃないか? そう言われててさぁ、多分ペジオもその為に栽培して研究していたんじゃないかと思われるんだよねぇ」
「ほおぉっ!」
思わずナッキが答えてしまった事も理解できる。
今の話が本当だとすれば、この『魔力草』、いいや柿には、弱った人々を癒す力だけでなく、かつてのヘロンの仲間達のような、魔力過多による石化をも止める能力を有している事がビシバシ感じられ捲ってしまうのだから止むを得ない状況なのだろう。
ヘロンは叫ぶ。
「ナガチカ様、それ頂けませんでしょうか? 私は、我が眷属である鳥たちをこれ以上、訳の判らぬ石化によって奪われたくは無いのですっ!」
んまあ、そりゃそうだよな…… 当然の願いだろう。
だと言うのに、我が父、ナガチカは難しい表情を浮かべて首を捻りつつ答える。
「う、うーん、気持ちは判るんだけどねぇ、これ、恐らく君達鳥類、と言うか私も含めた哺乳類に使うのはね、時期尚早、だと思うんだよねぇ……」
「ど、どう言う事です?」
ヘロンの質問にナガチカは答えた。
自ら名乗った通り、科学者らしい論理的な説明であった。
概略を伝えておこう。
ナガチカ曰く、生物の進化のタイミング、所謂(いわゆる)、新しいか古かったか、そこらに注目する必要が有る、そう言う話をし始めたのである。
地球に生命が生まれて以来、単細胞生物から様々な変遷(へんせん)を経て進化を続けて来た中で、我々人類にとって画期的な事柄と言えばやはり、手前勝手な話であろうが脊椎(せきつい)生物の誕生に他ならないだろう。
ドラゴやランプの様に、昆虫、外骨格生物とは全く違う進化の道筋を歩いてきた我々にとって、太古の魚類が手に入れた背骨、この髄(ずい)の存在は無視できない、というか有難た(ありがた)過ぎる進化に他ならないのだ。
昆虫や甲殻類の全体に謂(い)える事だが、自分以外の外界を知る術(すべ)は巨大な触覚によるところが非常に大きい。
ドラゴ達トンボは視力に優れているが、それも頼りの触覚を退化させ、広く大量になった視覚情報の処理に振り分けた結果である。
見えてはいるがその殆どを無為に見流さざるを得ないのである。
転じて、魚類から始まり、大ブームを続けている脊椎動物であるが、こちらは激変し続ける地球環境にあわせて、非常に便利に進化を遂げ続けてきたのである。
当初、水中での移動手段の高速化に特化した末端の骨格であった鰭(ひれ)は、時を経て捕食者から身を守る為の甲冑(かっちゅう)や鋭利な棘(とげ)等を肉体に加えて個別の進化を続け、種族毎の特徴を際立たせた上で、両生類として陸上への進出を果たす事になる。
海中の名残として角や分厚い外皮を有して居た彼らは、全身の鰭を手足そして尾に変化させる事で、陸上に対応し、やがて水棲(すいせい)を捨てて爬虫類へと再び進化を果たし、陸地に広範な勢力圏を広げ続けて行ったのである。