「あ…っ」
寝室の方向に足を向けただけなのに、ふらついてしまった。
「おっと…大丈夫か?」
咄嗟に二の腕を掴んでくれたおかげで事なきを得た。
「ん…ごめん…」
「謝ることないさ、おいで」
「うん…///」
自分より大きな手が重なる。
その手は熱い…
兄は相変わらず優しく、落ち着いている態度だったが
本当は自分と同じように発情し、きっと心拍数も上がっているのだろう。
その手がドアノブにかかると、本当に始まるのだと息が止まり、唾を飲み込んだ。
ガチャ…
「ほら…」
「う、うん…///」
なんだか怖いような…とても嬉しいような
言葉では上手く言い表せない気持ちで、後に入ったニュートは扉をゆっくりと閉めた。
「…」
セックスって…具体的に何をすればいいんだろう
はじめ方がわからない…
何か言った方がいいのかな…
ドアノブに手をかけて止まったままのニュートの頭の中は
それでいっぱいだった。
「ニュート…」
「あっ、な…なにテセ…」
背後から名前を呼ばれ、はっと振り向く。
その瞬間
ちゅ…とまた唇を重ねられた。
「んっ…♡ふひゃ…♡」
一度したからか、躊躇なく舌が入ってきては自分もそれを受け入れる。
「ふっ…♡ん…あっ♡」
身体の期待度は更に上がり、キスだけでも感じやすくなっている。
「は…っんぷ♡っ…ひっ…♡」
そのキスは、普段の兄からは想像できない激しさで
唯一空いている鼻からの呼吸でも間に合わず
ただ一瞬できる口同士の隙間から、声が漏れるのみ。
もちろんこの状態が続くと息が苦しくなってくるのだが
それさえも気持ちいいと思ってしまう。
「…ぷはぁっ…ひゅっ…も、もうダメ…♡」
口が離れてようやく大きく息を吸い込むことができた。
ニュートはもうキスはさせまいと自分の口を手の甲で軽く塞ぐ。
「あはは、もうわかったよ…それにしても凄いよニュート…もうとろとろだ♡」
兄は笑いながら
顔が真っ赤で、いまだに肩が上下に揺れ動く自分の目を覗き込むように見ている。
そんな兄に、少し冗談半分で聞いてみた。
「んん…ハグよりキスの方が好きになっちゃった?」
「どっちも好きさ、でも…ニュートとのキス、凄く気持ちいいよ」
「人前でしたりしないでね…?♡」
「あー…ははっ、気をつける」
兄はまた少し笑いながら答えた。
「…」
自分は冗談で言ったというのに
この返事の仕方は、少し怪しい。
もしそうなってしまったら、どう叱ろうか
ニュートはあとで考えることにした。
そんなことを考えかけた一瞬の隙に、兄の指は自分のシャツのボタンへかかっていく。
「…あ…やあぁっ…///」
顔に熱が集中する。
「恥ずかしがってるニュート…可愛いよ…♡」
「んやっ…待ってよテセウス…ちゃんとベッドの上で…あっ♡」
兄の手を掴むが、止まる気配がない。
否、快感に負けて力の入らない今の自分には
兄を止められる可能性すらないのだ。
「今服を脱いでおけば、早いだろう?」
「絶対ちがっ…!我慢…できないだけ…だっ…♡」
「勘が鋭いな、当たりだよ…♡」
言葉での抵抗も虚しく、一番下まで外され
重なっていた布を外側へゆっくりと開かれる。
「あぁ、この身体…最高にそそる…♡」
「っ〜〜〜///」
今自分は、きっと人生で一番恥ずかしい思いをしている。
2年生の頃、初めて自分の手でパフスケインの赤ちゃんを捕まえられたと思ったら、タワシだった時
4年生の頃、週に一度兄と手紙のやり取りをしているのが先生たちにバレた時
働きはじめて間もない頃、少しコートが大きいなと思ったら、兄のものを間違えて着ていると同僚に言われた時
それらももちろん、思い出せば忘れたくなるものばかりだが
今はその記憶たちとは比べ物にならないほど
恥ずかしい。
「ん…また傷ができてる」
どうやら兄は下腹部の右側にある傷の存在に気づいたらしい。
とはいえ、5センチほどしかないものだが。
何か言われてしまうと思い、ニュートはすぐに弁明を始める。
「熱を出してる子を治療してたら、びっくりさせちゃって引っ掻かれたんだ、あ…あの子は悪くないんだよ?熱で…混乱してて…」
緊張している割には、魔法動物のことになると言葉がすらすらと出てくる。
そんなニュートを見て
「ふ…わかってるよ、別に僕は怒るわけじゃない…」
とただ微笑む。
「テセウス…あ、あんまり…見ないで…き、傷じゃなくて…身体自体…」
「…僕は恋人だから、今日からこの身体を可愛がってもいいんだな…ははっ…最高だ…♡」
何を言ってもその言葉は、甘い言葉に埋もれてしまう。
「っ…♡はぁ…はぁ…っ」
「少し呼吸が乱れすぎてるぞ、落ち着いて…」
「テセウスのせいだよ…っ♡」
「え?僕?」
「わ、わかってるくせに…ふぅ…ふぅ…」
必死に落ち着かせようと奮闘する。
でも兄と目が合うと、一瞬心臓がドキッと掴まれるような痛みが走る。
「っは…むり…っ…落ち着けないっ…!」
「あは…可愛いよニュート…♡」
「ちょっと待って…僕もちゃんと落ち着きたいから…」
そして目を閉じてもう一度深呼吸をしようとした
首筋にふにっ…と何かが当たる。
「んっ…♡テセウス…?」
その正体は何か考えようとしたその時
皮が引っ張り上げられる感覚がした。
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