ムツキとコイハ、メイリが楽しんだ翌日の夜。次はサラフェとキルバギリーの順番ということで、2人がやってきていた。
サラフェが青色のワンピースをパジャマにしており、そのワンピースは彼女の慎ましやかな身体をすっぽりと覆っている。一方のキルバギリーもロボロボしい恰好ではなく、下着の上に半透明のネグリジェと攻めの服装である。
ただし、サラフェはイチャイチャする気にあまりなれず、キルバギリーに無理やり連れて来られたこともあって、ベッドの上でダラッと寝ているだけだった。
「ムツキさんは、昨日はお楽しみのようでしたね」
サラフェは何の気なしに昨夜のことをムツキと話し始める。音は漏れ聞こえなかったので、あくまで今朝の3人の様子を見ての判断である。
「あぁ……ものすごく良かった」
ムツキが嬉しそうにするので、サラフェはツンとした表情をする。
「……だったら、今日もメイリさんとコイハさんとお楽しみになればいいのに。もしくは、ユウさんやナジュミネさん、リゥパさんだって、手ぐすねを引いて待っていますよ」
「そんな、俺はサラフェとも仲良くしたいだけで」
「仲良くがそういう行為になるのですか? それをしないと仲良くなれないのですか?」
「あー、まー、そうだな。たしかにな……」
ムツキはサラフェに言い負かされてしまう。元々、彼は無理強いをしたいわけではないので、彼女が嫌がるのなら手を出すつもりもない。
「マスター。安心してください。サラフェは戸惑っているのです。この歳になるまで恋愛の1つもしたことないようですし。経験がないので、殿方の誘い方も知らないだけです」
キルバギリーが暴露してしまい、サラフェは動揺で急に起き上がる。
「ちょ、キルバギリー! その話は秘密にして、って!」
「マスター、私はここでサラフェへのマッサージを提案します」
キルバギリーはサラフェを大して気にした様子もなく流し、突如、眼鏡をかけ始めて眼鏡のツルに指を当てる。
「キルバギリーに眼鏡属性が追加か……」
「な、マッサージ!? そのようなことは許しません! そこから、いやらしい展開に持っていくつもりでしょう!」
サラフェはマッサージの単語からいろいろとあらぬ妄想を始める。
「なあ、キルバギリー、提案はすごくありがたいけど、俺はサラフェが嫌がることをしたくないんだ」
「あ、いや、そこまで嫌というわけでは……」
サラフェもそういう雰囲気になれば、そうなってもよいとは思っていて、中々自分からは切り出せないでいるだけだった。
「サラフェは何をごにょごにょと言っているのですか?」
「何でもありません!」
サラフェはキルバギリーに指摘されて、顔を真っ赤にして反応する。
「サラフェ、無理しなくていいからな」
「もちろん! ……ただここまで来て何もないのも殿方としては……体面というか体裁があるでしょう? そこでサラフェから仕方なく添い寝を提案しましょう。添い寝なら良いです」
ムツキはポリポリと頬を掻いて、サラフェの方を見る。
「もしかして、サラフェにツンデレ属性が追加か……」
「ツンデレ? 一体、何のことを言っていますか?」
サラフェは聞いたことのない単語に首を傾げる。
「では、リゥパさんから特製のハーブティーをいただいたので、良い眠りになるようにお2人ともお飲みになってください」
「リゥパのハーブティーか。これはとてもいいぞ。俺は好きなんだ」
「ふーん。ハーブティー……オシャレですね。いい香りです。これならいただきます」
キルバギリーがニヤリと笑う。2人がハーブティーを飲み終わり、サラフェ、ムツキ、キルバギリーの並びで添い寝をすることになった。サラフェは少し離れ、キルバギリーはムツキにべったりくっついている。
「キルバギリー。こういうのを聞くのもなんなんだが、キルバギリーにはレブテメスプがいたんだろう? 俺と一緒になってよかったのか?」
中々寝付けないムツキは、キルバギリーの視線を感じて、少し話をすることにした。
「どういう意味でしょう? レブテメスプ様は私の創造主であり、いわば、父親です。決して、パートナーではありません」
「え。じゃあ」
ムツキはそこまで言いかけて、口を閉じた。人の過去の情事を問いただすのは野暮以外の何物でもない。キルバギリーもキルバギリーで流れから察するも、彼が最後まで言わなかったことから言わない方がよいと判断して言葉を続けなかった。
「ムツキさん……」
しばらく静寂が続いた後、サラフェが急にムツキに身体を寄せてきた。彼は何事かと驚く。
「サラフェ、どうした?」
「部屋が暑くありませんか?」
サラフェは少し汗ばんでいるのか、ムツキが彼女の腕を触るとしっとりとしていた。
「暑い? そんなことはないと思うけど」
「それになんだか、ちょっと……おかしくて……んっ……」
サラフェの吐息が少し荒くなる。若干、艶っぽいその吐息がムツキの身体にかかる。
「大丈夫か? ん、え、おい、サラフェ?」
サラフェの手はムツキのどこを触れればよいのか、まさに手探り状態といった感じで細い指を彼の身体に這わせながらいろいろな所を触れていく。彼の理性も少しずつ削られていく。
「効いてきたようですね」
「どういうことだ?」
サラフェがそう呟くと、ムツキが反応する。
「マスターもリゥパさんもご存知なかったようですが、あのハーブティーには人族に強い催淫効果を与えるようです」
「さ、催淫効果?」
ムツキは初耳だった。自分がそのような影響を受けたことがなかったので驚きしかない。
「つまり、サラフェは欲情しています」
「キルバギリー……」
ムツキにはキルバギリーがやっていけないことをしたという感覚しかない。
「ムツキさん……はぁはぁ……このままじゃ……どうしようもないですからぁ……優しく……お願いできますか……」
サラフェの瞳が潤んでいる。先ほどまで頑なだった彼女のその誘いはムツキの心を揺らすが、彼はそれを振り切った。
「【アンティドート】。どうだ?」
「……治った? ……恥ずかしい……」
ムツキは状態異常を治す魔法を唱えた。すると、サラフェに掛かっていた催淫効果が嘘のように消え、汗も引き、吐息も普段通りのものに戻る。
「2人とも今日は部屋に戻る方がいい。後、キルバギリーは明日説教だ」
「承知しました……」
ムツキが少し低めの声色で伝えるので、キルバギリーはしゅんとしながら返事をする。
「ムツキさん」
「ん?」
「あなたが思った以上に紳士だと分かりました。ちょっとだけ見直しました」
「それはよかった」
「あと、添い寝は続けます。これは私が提案して決めたものですから」
「そうか。分かった」
その後、何事もなく、3人はゆっくりと眠りについた。少しだけ最初と変わったことは、サラフェもキルバギリーと同様にムツキにぴったりと身体を寄せてきたことである。
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