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私
の名前は『お嬢様』。
今年高校に入学して2ヶ月経ったある日のこと。学校から帰宅しようと下駄箱を開けるとそこには一通の手紙が入っていた。
その手紙の内容は放課後体育館裏に来てくださいというもの。ラブレターだったら嬉しいんだけどね……。
正直言って私は告白された経験がない。今まで一度もないのだ。だから今回もそうであってほしいと思ってしまう。だってこんなにもドキドキしているんだもの。
私は緊張しながら授業を受けた。そして待ちに待った放課後になった。私は足早に体育館へと向かう。そして、恐る恐る中の様子を窺うと一人の男子生徒が立っていた。
私に気付いたのかこちらを見て目が合った瞬間、ニコッと微笑んできた。
あぁ~この人かっこいいなぁ~。私は見惚れてしまった。
「あのぉ~僕に何か御用ですか?」
声をかけられハッとする。いけない、ついボーっとしてしまったわ。
私は一度深呼吸をして気持ちを整える。よし! 行くぞ!!
「はい、少しお話したいことがありまして。突然ですけど貴方は私のことが好きなんですか!?」
勢いよく言ったものの恥ずかしくなって俯いてしまいました。だけど返事を待つまでもないですね。顔を見なくても分かるほど彼の頬は赤く染まっているのですから。
彼は勇気を振り絞るように震えた声で言った。
「俺だって……お前のことが好きだったんだよ!」
その言葉を聞いた瞬間――
少女の顔がくしゃりと歪み、一筋の涙が流れた。
(うわあああぁ!)
俺はベッドから跳ね起きた。
全身に汗をかいていた。心臓が激しく脈打っている。
「夢……」
なんて悪夢を見てしまったんだろう。
あんなひどいことを言っておいて、どの面下げて告白なんかできるっていうのか。そう思いながらも足は勝手に動く。
こんなはずじゃなかったんだ。
こんな風にするつもりはなかった。
自分の気持ちなんて伝えるつもりもなかった。
なのにどうしてこうなった? わからない。
わからないけれど……。
「俺はお前が好きだよ」
「え?」
「だからさ……俺の彼女になってくれないか?」
「ちょっ、ちょっと待って! それどういう意味!?」
「そのまんまだよ。好きだから付き合ってくれって言ったんだ」
「それはわかったけど、なんで今言うの? だって私たち友達じゃん!」
「そうだな。ただの友達だった。でも今は違う」
「どっちにしてもおかしいでしょ。普通もっと雰囲気とかシチュエーションとか考えない?」
「考えた結果がこれなんだよ」
「はぁ……。ねえ、もしかしてだけどさ」
「うん」
「私が告白されると思ってた?」
「ああ」
「はあー……。あのね、私とあなたが一緒にいた時間ってかなり短いよね。それでもう好きになったって言われても……」
「はい!好きです!」
「うん、ありがたいけどさぁ……。まだお互いのことをよく知らないじゃん?」
「これから知っていきましょうよ!!」
「ん~。そうじゃなくてさ、私としてはもっと時間をかけてゆっくりと仲を深めていきたいというかさ……」
「えぇ!!それだといつまでたっても結婚できませんよ!?」
「だからそういうんじゃないんだってば!」
「はいっ!好きです!」
「ねぇ聞いてる!?」
「もちろんですよ!僕と結婚してください!」
「それは無理!!!」
「はっはっは!また振られたのかお前は」
「うるさいぞジジイ。僕は今とても傷ついている」
「そりゃ残念だったな。しかしあれだろ?どうせまたいつものように『愛してる』とか言ってたんだろ?」
「ああそうだよ!悪いのか!?」
「悪くはないさ。ただお前の場合、それが本当なのか嘘なのか分からないから困るんだよ」
「嘘じゃない!俺は本当に……!」
「はいはい分かったわかった。もうその話は聞きあきたよ。だからお前もいい加減自分の気持ちくらいちゃんと言え」
「分かってないじゃないか!俺の話全然聞いてないだろう!」
「ああ聞いていないとも。だってそうしないと話が進まないからね」
「……え?」
「それにほら。そっちの方が面白いじゃん?皆もそう思うよねー?」
―――うおおぉお!!
「ちょっ、待って!違うんです!今のはその場の勢いっていうか……!!」
「あぁ~あ。これじゃあもう駄目かもねぇ~」
「諦めたらそこで試合終了ですよ先生ぇえええ!!!」
「……んぅ……」
目を開けると、そこには見慣れぬ天井があった。
ぼんやりとする頭をどうにか働かせて周囲を確認する。
自分が今寝ているのはフカフカのベッドの上で、周りに置かれている家具類は全て上等なものばかり。
ここはどこだろうと首を傾げながら上半身を起こすと、タイミングよく部屋の扉が開かれ一人の人物が姿を現した。
「あら。目が覚めたようですね」
優しく微笑む女性はとても綺麗で、思わず息を飲むほどに美しい。
艶やかな黒髪に吸い込まれそうな瞳。
スラリとした手足に豊満な胸元。白い肌に長い黒髪がよく映える。
「お姉さん、お茶しない?」
「あら、ナンパかしら?ふふ……」
「えっとねー、お茶して映画見てカラオケ行ってぇ~」
「そうねぇ……ちょっと待っててくれる?」
「うん!」
男は彼女の後ろ姿を目で追う。
彼女はバッグから財布を取り出し、紙幣を取り出すと店員に差し出した。