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「ごめんね、部活終わりに」
「ううん、全然」
昨日、男バドと部活時間が被るとわかったので明日の部活後に話ができるようにと、佐倉くんを呼び出した。
「これ、この前カフェ奢ってもらったから」
私は少し小さい紙袋に入った差し入れを差し出した。
「え、ほんとにいいのに、ただちょっと払っただけだよ」
「お返しはしたいから」
佐倉くんは少し眉を八の字にし、優しく笑ってそれを受け取ってくれた。
「それと」
「うん」
「長い間、待たせてごめん」
ううん、と、優しい声が返ってきた。
「分からないなりに、色々考えたんだけど 」
すっと息を吸った。
「佐倉くんはすごくいい人だし、優しいしかっこいいよ」
こういうのはきっと、はっきり言った方がいいのだろう。
「でも、好きな人ではないって、思って」
「うん」
少し間があけられた後の、柔らかい声だった。
「多分、今後もそうはならないと思う」
軽く風が吹いて、ふわっと前髪が浮いた。
「だから、ごめん」
5秒ほど、沈黙があった。
「そっか、わかった」
佐倉くんはまた優しく笑った。
「学校一の紳士女子に恋するのはこれで諦めるよ」
「…佐倉くんの方が紳士って言われてるよ」
「ええ、そんなの言われたことないよ」
また数秒の沈黙があった。
「好きでいるのは諦めるけど、憧れなのは変わんないよ。だから1ファンとして居させてください」
「、、ファン、うん」
佐倉くんは、にっと歯を見せて笑った。
「気遣わず今まで通り普通に話してね、俺もそうするから」
「うん、わかった」
爽やかに吹く風が、 起こりうる様々なものを運んできている気がした。