暴走状態のミノリ(吸血鬼)の固有武装はかなり強かった。
やつはミノリ(吸血鬼)の翼であり武器でもある。
無限分身、無限武器創造は息をするように扱えるし戦い方はミノリ(吸血鬼)の今までの戦いから学んでいるため俺とミノリ(吸血鬼)が束《たば》になってもなかなか仕留められない。
「なあ、ミノリ」
「な、何よ」
「もう説得した方が良くないか?」
「せ、説得?」
「ああ、そうだ。『あたしにはあんたの力が必要なの! だから早く戻ってきて!』的なことを言えば、割とあっさり」
「却下するわ」
「はぁ? なんでだよ。このままじゃいつまで経っても決着つかないぞ?」
ミノリ(吸血鬼)は大きなため息を吐《つ》く。
「あいつはあたしのおまけで、あたしはあいつの所有者なのよ? 所有者に逆《さか》らうおまけにお願いしてまで戻ってきてほしくないわ」
「そんなこと言うなよ、ミノリー。あいつはお前を助けるためにお前を闇に引きずり込んだんだぞ?」
「へえ、そうなの。で? あいつがあたしを助けようとした証拠はあるの?」
「え? う、うーんと、ない……です」
ミノリ(吸血鬼)は呆れながら俺の両肩に手を置く。
「だと思ったわ。まあ、さすがに長期戦は避けたいからあんたの血を少し吸わせなさい」
「おう。ん? ちょっと待て。お前、闇から脱出する前に吸ってたよな?」
「あのねー、これから大技を使うのよ? 血が足りなくて貧血で倒れたらどうするの? それに確実に当たる保証はどこにも……」
「あー、はいはい分かりました。どうか死なない程度に吸ってください」
ミノリ(吸血鬼)はニッコリ笑いながら俺の頭を撫でる。
「よしよし、いい子ね。それじゃあ、いただきます」
「くっ!」
ミノリ(吸血鬼)は躊躇《ちゅうちょ》なく俺の首筋に噛みつく。
というか、いつもより歯を食い込ませてるような。
俺、痛みはほとんど感じないけど、痛覚がないわけじゃないんだからもっと優しくしろよ!
しかし、俺の願いが彼女に届くことはなかった。
それどころかどんどん歯を奥へ奥へと刺していった。
「ぷはぁ! よし、これならなんとかなるわね。ありがとう、ナオト」
彼女はニコッと笑うと俺の頬に優しくキスをした。
俺はフラフラになりながら返事をする。
「ど、どういたしまして」
「よし、それじゃあ行くわよ! あたしの! 全身! 全霊! 全力!!」
うーんと、○ワザかな?
俺はそんなことを考えながらミノリ(吸血鬼)の様子を薄目で見ていた。
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