ナチ日帝
JaneDoeの微曲パロかオマージュか何かです。
何でも許せる人向け
…私はどうするべきか。
一人、月に照らされながら考える。
二人だった頃によく行った場所。
夜はいつでも月が見えていて、眩しい程にそこ全てを輝かせている。
淡い光が反射する水の上で、踊るようにはしゃぎ回る君を見るのが好きだった。
「私は、君の後を追えばいいのか」
何も無い場所に話しかける。
正直、追うも追わないもどっちでも良い。
ただ返事が欲しい。
嗚呼、君が生きていれば。
そうだったら今どれだけ幸せだったのか、聞きたくはない。
聞けば聞く程未練が残りそうなんだ。
なんだか足が重い気がする。
水に引っ張られているような、自分ではどうにも出来ない何かが私を引きずり下ろそうとしているような。
いっその事引きずり込まれて、この世から消えてなくなりたいとも思う。
「なんて、少し夢を見ただけだ。」
自分を宥める為か、独り言が零れる。
そんなの嘘だよ。君が居ない世界は御免だ。
身元不明の水死体にでもなれないものか。君に会いたい、会えるならどこでもいいから、
そばに居て欲しい、それだけ願う。
「…何処に居るの」
ここにいるよ。
足が止まった。
周りを満たす血腥い臭いが、駄目だ、やめろと警告を出している。
会いたい。それだけ。
「っ日帝…!」
振り返った先に居たのは、あの時と変わらない“君”。
声も出さず、意地悪そうな微笑みを浮かべてこちらを見ている君。
空から降るバックライトに照らされる、背中に白い翼を飾った、日帝。
『ナチ』
「にっ、て…」
手を引かれ、水の上を滑るように踊り出す。
先程までの重い足が嘘のように軽い。まるで水じゃない、硝子の上を歩くような感覚。
自然と涙が溢れてくる。
それは何か、君を守れなかった悔しさか、君にまた会えた喜びか。
震える手で君を抱きしめ、崩れるように座り込む。
「、ごめん…守って、やれなくて……」
透き通った水に塩が混じって行く。
少し困ったような、嬉しいような顔で、薄ら滲む涙を拭う君。
私の頬に手を添え、見た事もない笑顔で言った。
『ただいま、ナチ』
コメント
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朝から泣いたわ、ありがとう