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かんな
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泣いて帰ってきた日から三日、イソトマは学園を休んだ。
部屋に籠っているから、ディルクともほとんど会っていない。
オタ活も止まっているからアルエとも連絡を取っていない。
イソトマは、机を眺めた。
あの上には書きかけの原稿がそのままになっている。
(あと半分くらい、だったな)
ベッドの上で寝がえりを打つ。
目の前の天井が涙で滲んだ。
「うぅっ……ルシリリ」
理想のルシリリなど、初めからいなかった。
(僕が勝手にゲームと同じだと思っていただけなんだ)
現実は思いもよらない方向に舵を切って、イソトマが付いていけないくらい意外なことばかりが起こる。
(ゲームじゃ、ノアルもセインもイソトマの婚約者に立候補なんかしない。五歳の僕がディルクに求婚だって……)
そこまで考えて、気が付いた。
「そうだ。五歳の僕はディルクに……告白した」
兄と同級生だったディルクは、家によく遊びに来ていた。
『あのね、僕ね、ディルクが大好きだよ。大きくなったらお嫁さんになってあげるね』
無邪気に抱き付いて、そんな話をした。
(ゲームには、そんな描写なかった。あるわけない。イソトマは悪役令息なんだから)
死んだ兄イデアだって、ゲームには出てこない。
「僕がいるのはゲームじゃない。ゲームに似た、現実の世界なんだ」
そう気付いたら、急に怖くなった。
指が、小刻みに震える。
「だから、主人公が悪役令息を陥れるの? まるで立場が逆転してる」
どうして、こんなことになったのだろう。
何をどこで間違えたのだろうか。
「僕の好きなルシリリは、どこにもいないの……?」
リリーの動きは不穏だけれど、それでもルシアンが欲しいとイソトマに直談判した。
なのにルシアンは、リリーを愛していないといった。
(リリーはルシアンを愛しているのに。あんなに一緒にいるのに、好きじゃないって)
それが何より、イソトマにとってはショックだった。
(ゲームの中のルシリリは、最初から運命みたいに相思相愛で、どのルートより愛し合っているのに)
そう思うと涙止まらない。
「うぇぇ……ルシリリぃ。うっ、ぐす」
枕に突っ伏して泣き続ける。
泣きまくったら、喉が渇いた。
イソトマは、のっそりと起き上がった。
テーブルの上のレモン水を手に取る。
ふと、机の上の原稿が目に入った。
恐る恐る、原稿を手に取る。
「僕の好きな、ルシリリ」
この原稿の中になら、大好きなルシリリがいる。推しを感じられる。
「……描こう。僕の推し」
机に向かうと、ペンを取る。
イソトマは一心不乱に漫画の続きを書き始めた。
コメント
1件
うわあ〜第19話、めっちゃ重くて切なくて胸がギュッてなったよ…😭💔 イソトマが「ゲームじゃないんだ」って気づいた瞬間、読んでるこっちも一緒に震えた。五歳の頃の無邪気な告白エピソードが効きすぎてて、もう…。そして「ルシリリはどこにもいない」って泣きながら原稿を手に取るラスト、推しを描くことでしか自分を保てない感じ、オタクとしてめっちゃわかるし泣ける…😢✨ それでも最後にペンを握ったイソトマ、ちゃんと前に進もうとしてるんだね。次どうなるか気になりすぎる!